(23.7.24) NHK 遺伝子組み換えサケは認可されるか?
NHKのワールド・ウェーブで遺伝子組み換えサケがアメリカの食品医薬品局で認可されるかどうかの特集を放映していた。
遺伝子組み換えサケとは成長が普通のサケの2倍の速度で、大きさが3倍にもなるあのサケのことである。
このサケは太平洋産のサケにキングサーモンと他の魚の遺伝子を組み込んで遺伝子操作したもので、肉質は天然産のサケとまったく変わらないという。
実に巨大なサケで自然のサケと比較すると小錦と舞の海程度の差がある。
この情報は昨年クローズアップ現代で放映されていたので知っていたが、それがついに食料として認可されるかどうかの最終局面に来ていた。
アメリカではすでに大豆の90%、トウモロコシの80%が遺伝子組み換え食品になっており、収穫量が飛躍的に増大し病気に強い品種になっている。
注)クローズアップ現代の記事は以下参照
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/221127-nhk.html
今までは植物の領域だったがついに動物の領域にこの技術が応用されるようになった。
バイオ産業はこの遺伝子組み換えサケの認可を求めて強力なロビー活動をしており、一方アラスカの漁業者がアラスカ選出の議員を巻き込んで反対運動をしていた。
当初は食品薬品局は認可に前向きだったが、アラスカ漁民の反対がとても強いので、条件付きで認可を降ろしそうだ。
アメリカでは遺伝子組み換えか否かの表示義務は現状ないのだが、このサケを認可するに当たっては「天然産との識別表示」をさせられることになりそうだ。
いわば顧客に選択を任せようとの態度で、「天然産のサケか、それとも安いが将来どのような影響が出るか分からない遺伝子組み換えサケ」を自由に選ばせようとしている。
この遺伝子組み換えの議論は実は「人間が神の領域に入り込んでいいのか」という宗教的な問題をはらんでいる。
自然界では有る一定の確率で突然変異(自然界の遺伝子組み換え)が起こりそれが環境に適応できればその後地球上に存続し続けることができる。ダーウィンの言う適者生存だ。
バイオの研究はその数十億年をかけて行われた自然の営みを、研究室の中で短時間で行って意図的に適者生存をさせようとする試みといえる。
数十億年を数年に短縮する試みといえるし、また自然と人工の闘いともいえる。
また研究者の目から言えば、たとえば犬などを見ると非常に多くの種類がいるがこれは人工交配を繰り返したからだが、これと同じことを遺伝子レベルで行っているに過ぎないと言うことにもなる。
アメリカではバイオ産業が次世代のリーディング産業になるとの認識から、遺伝子組み換え動物も積極的に受け入れようとしている。
今はサケだが、次は牛や豚や馬あたりがターゲットになって、現在の牛や豚の3倍程度大きな牛や豚が現れたり、サラブレッドの3倍程度の速さの競走馬が出てくる可能性がある。
人間に応用すれば女性はマリリン・モンローやオードリー・ヘップパーンになってしまい、男はトム・クルーズばかりになってしまうかもしれない。
もちろん頭はアインシュタイン並にすることも可能になるから、そうしたことを試みる科学者も現れるだろう。
この問題は「人間はどこまで神の領域に手を突っ込んでいいのか」と言う問題だから、今後は一層宗教問題に発展していく可能性が高い。
日本人は遺伝子組み換えに消極的だが、アメリカがこの分野の研究を加速化させることは確かなようだ。
結局はアメリカにリードされて、おっかなびっくりだが遺伝子組み換え動物を少しずつ許容していく方向ではなかろうか。
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