(2.8.7) 人類衰亡史序説 レバノンその1 すべての苦悩が集積している!!
レバノンのベイルート港で起きた爆発事故で137人の死者と5000人以上の負傷者が出て、地区の倉庫群と周辺の建物に甚大な被害が発生している。映像で見ると赤い炎が上がり、それからしばらくして原爆投下時のようなきのこ雲が発生していた。爆発規模は広島に投下された原爆のおよそ10分の1の規模だったと専門家は述べている。
ベイルート港の倉庫には約2750トンの硝酸アンモニウムが6年前から保管されており、税関当局が再三にわたって硝酸アンモニウムの危険性を指摘していたが、港湾当局がその警告に応じなかったとメディアは報じている。
硝酸アンモニウムは肥料の原料でどこの肥料会社も使用しており、適切に管理されていれば危険性のあるものでない。
しかし過去にも保管上の問題があり、1947年にアメリカテキサスの肥料会社で2300トンの硝酸アンモニウムが爆発し500人以上の死者が出ている。
最近の例では2001年にフランスの肥料会社での爆発(30人死亡)、2013年アメリカのテキサス肥料倉庫の爆発(15人死亡)、2015年の中国天津の港湾倉庫での爆発(165人死亡)が発生している。
特に中国天津の港湾倉庫での爆発は今回のベイルートでの爆発とそっくりであり、倉庫火災から硝酸アンモニウム800tに引火して大爆発を起こしている。
硝酸アンモニウムは単体では爆破することはなく、付近で火災が発生するとその火災を加速させる作用があり、また臨界点を越えて温度が上昇すると硝酸アンモニウム本体が爆発するという。
当該港湾倉庫では税関当局の指摘を受け老朽化していた倉庫の補修工事に約1週間前から取り掛かったそうだが、その工事の最中に倉庫内の可燃物質に引火して火災が発生し、火力が倉庫内に充満して一気に硝酸アンモニウムが爆発した可能性が高いと専門家は推測している。
当初はトランプ大統領はテロとの関連も排除できないと述べていたが、客観的に見て今ベイルートでこれほど大規模のテロを起こす政治的理由は乏しい。
レバノンは長年の政治腐敗ですっかり経済は委縮し、さらにコロナの対処でロックダウンまで実施したためレバノン経済は完全に崩壊してしまった。この3月に外貨建て国債の償還ができずデフォルトに陥っており、ただ貧しいだけのレバノンに他国の救済はほぼ絶望的だ。人口約700万人のレバノンに約150万人のシリア難民が押し寄せ、特にコロナのロックダウン以降は失業率は40%近くに跳ね上がってしまった。
最近見たNHKのドキュメンタリーで見捨てられたレバノン内のシリア難民が臓器を売ったり売春をしたりしてかろうじて生き延びていた。また少年が騙されて臓器を摘出した後に殺されたりしていたが、殺された少年の家族の少女が「私が今度は一家を支える」とけなげに奮闘していたのを思い出す。今回の大爆発でさらにシリア難民の苦悩は増すだろう。ところでなぜこれほど大量の硝酸アンモニウムがベイルート港の倉庫に保管されていたかは非常にミステリアスだ。
ロシア人実業家が船をチャーターしてモルドバからモザンビークに硝酸アンモニウムを移送していたのだが、何らかの船舶のトラブルでベイルート港に寄港し、その際入港税を支払わなかったため税関当局が荷物の差し押さえをしたのだという。
資材の価値からすれば入港税を支払ったほうがはるかに安価に済んだはずだが、なぜか支払いを拒否して現在までそのままに保管され続けたという。
何ともわかりずらい話でもしかしたらもっと奥の深い理由があるのかもしれない。
いづれにしても破産国家レバノンはさらにひどい被害に見舞われており、映像で見たシリア難民の気丈な少女もさぞ苦悩していると思うと心が痛んだ。
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