(2.9.17) 人類衰亡史序説 アメリカと中国の激突 その7 米国債を売ってそのあとどうするの?
ここにきて中国が再びアメリカ国債の大量売却を検討しているとの憶測記事が中国のプロパガンダメディアから流されている。
中国とアメリカとの覇権争いは貿易、ハイテク戦争から今では通貨・金融戦争に戦場が移ってきた。
中国は約1兆ドル(100兆円)の米国債を保有しており、これは日本とほぼ同額の国債保有額になっている。
中国は1990年代の改革開放以来営々と米国へ輸出を行ってきており、その黒字が米国債という形で結実している。
しかしドルをそのまま持っていても金利は産まないから何らかの形で運用するのだが、その時に大事なのはいざというときにすぐに資金化できるか否かだ。儲かったドルを不動産投資などに運用していると、現金が必要となったときにタイミングよく不動産を売却することが難しい。
したがってできるだけ流動性がありさらにある程度の利回りが確保できる投資物件となると、アメリカ国債以外に適当な物件を見つけることが難しい。
アメリカ国債の利回りはコロナ発生以前は10年物国債でほぼ1%だったが、コロナ発生後は0.6%前後に低下している(反対にアメリカ国債の価格は上昇している)
考えても見てほしい。このコロナ発生状況下でどこの経済も崩壊している中で、どこに資金を預ける先があるだろうか。アメリカ国債以外の選択肢がないから中国も日本も米国債投資をしているのだが、もし中国が米国債を売却すればその資金の運用に困惑してしまう。
市場もその所は見抜いているから習近平氏がいくら憶測記事をだしても、ドルも株式も全くと言っていいほど動じない。
そして本当に中国が大量にアメリカ国債を売却し始めたら、その購入に断固立ち向かうのはアメリカの中央銀行FRBだ。
今や米国国債の最大の購入先はFRBとなっており、中国の3倍程度の米国債を保有している。その資金はどこから出ているかというと簡単なイメージでいえば輪転機を回してドルを印刷している。
中国の売った分は輪転機でカバーするのだから、中国の意図するアメリカ国債の大暴落などはあろうはずがない。これは日本の国債についても同様でほぼ半額を日銀が保有しているが、これも輪転機を回して対応しているだけだ。
信用とは相対的なもので絶対的なものでないから、市中の資金が有り余っていれば相対的にまともな物件に資金は集まる。アメリカが輪転機経済を行っていても、キューバやベネズエラの国債より信用があるのは当然で、これに対抗できる商品を見つけることは難しい。
将来的にビットコインのような仮想通貨や金がドルに代わるというならその時点でドルの大暴落が発生するが、決済手段としてはビットコインも金も全く役立たない。量が少なすぎて世界経済のスケールに対応できないからで、どのように中国が騒いでも米国債の売却がアメリカとの金融戦争に勝利する手段にはならないだろう。
中国の元などは到底決済通貨として喜ばれておらず、元を入手した国や企業ははすぐにドルに換えてしまう。中国との貿易がすべてといったような、アフリカやカンボジアといった中国の衛星国以外は元を持っていても仕方がない。
アメリカの尻尾を踏むとどうなるかは日本がバブル崩壊以後いやというほど身につまされているが、今や中国があの日本経済の轍の後を追っており、金融戦争で中国が勝利する可能性はほとんどゼロに近い。
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