(2.5.28) 人類衰亡史序説 砂漠とびバッタ その1 もう一つのパンデミック
世界はコロナウイルス一色だが、ここにきて新たなパンデミックが発生している。砂漠とびバッタの襲来である。日本人には全くなじみがないが、アフリカ、中近東、パキスタン、インド、蒙古高原、新疆ウイグル自治区などは定期的にこのバッタの襲来に襲われてきた。
砂漠とびバッタは普段はおとなしく細々と草を食べて生き延びているのだが、サイクロン等で一度に大雨が降ると草原一帯に草が生い茂り、それを食べて砂漠とびバッタが大発生する。
2018年から中東や東アフリカはたびたびサイクロンに襲われ、今まで枯れ果てていた草原が緑一色になってしまった。そうなると砂漠とびバッタは大変身し集団をなして草を求めて移動するようになる。幅40㎞長さ60km程度の大集団になって一日100kmから200kmも移動するというからすさまじい。空一面が真っ暗になるほどの大群で、これに襲われた草原や農地はたちまちのうちに食い尽くされてしまう。
すでにケニアやエチオピアやソマリアでは穀物の約半分がこのバッタによって食い尽くされてしまった。
現在このバッタ軍団はパキスタンからインドの西部地帯を襲っていて、パキスタンとインドはコロナ対策とこのバッタ対策に追われててんてこ舞いだ。基本は殺虫剤を散布して駆除するのだが、殺虫剤の種類によっては残留農薬となり人にも被害が及ぶ。しかし今はそのようなことも言っていられず何はともあれ駆除が優先事項になっている。
この砂漠とびバッタの軍団はインド経路とは別にもう一つの経路をとっており、ステップ地帯を通ってモンゴルや新疆ウイグル自治区に近づいており、中国政府が警戒態勢に入った。かつて中国ではバッタの被害を「こうがい」と称して恐れてきたが、これに襲われると穀物が食べつくされて飢餓が発生する。今の中国にはバッタを駆除する農薬は十分にあるだろうから、かつてのような惨劇にはならないだろうが問題もある。現在中国の農地は温暖化の影響で砂漠化が急速に進んでおり、農地が荒れ果ててしまい、もはや穀物の大輸入国になっている。アメリカとの間で年間300億ドルの穀物追加購入を約束したのがその例だ。(ただし中国の農業統計ではコメも小麦もトウモロコシも十分自給できていることになっている)。そこに砂漠とびバッタがおそってきたら、本当に飢餓が発生するかもしれない。
砂漠とびバッタの被害は現在はインドまでだが、コロナとバッタの両面作戦はどの国でもつらい。特にバッタの被害については各国ともコロナで人の往来を禁止しているため実情が把握ができず、専門家の派遣もできない。結局その国の政府の力量にかかっているがパキスタンなどは悲鳴を上げている。
人類が繁栄してきた時代はこのコロナとバッタの襲来でとどめを刺されそうで、山崎経済研究所の山崎所長がいつも言っているように、GDPを拡大するなどというばかげた目標を捨てて、たるを知る生き方を模索する時代に入っている。
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