(2.7.4) 人類衰亡史序説 石油業界 その2 苦境はいつまで続くか?
ひところ飛ぶ鳥を落とす勢いだったシェールオイル産業が苦境に陥っている。直接の原因はコロナの全世界的蔓延で原油需要が落ち込んでしまったためで、それまで日産1億バーレルもあった需要が現在は7000万バーレル程度になり、OPECプラスが合意した970万バーレルの減産では全く追いつかない。
航空機も飛ばず、クルーズ船も運航できず、観光客がいないからタクシーの需要もない。各国とも製造業の稼働率はひどい落ち込みで、中国だけが習近平氏の号令のもと再稼働にこぎつけたが、だからと言って作った製品の販売先はほとんどない。
ひところマイナスだった原油価格はWTIが40ドル前後まで戻ってきたが、それでもこの価格で利益を発生できるアメリカのシェールオイル産業はほとんどない。トランプ政権は何とか倒産を防ごうと資金手当てに躍起となっているがすでに20社ほどの倒産が発生している。
6月に入ってチェサピークという大手シェールオイル会社が倒産したが、負債額は70億ドルだそうだ。
アメリカのシェールオイル産業が何社倒産しても遠い海の向こうの話と言えればいいが、実はそう言い切れない事情がある。
シェールオイル産業は資金手当てのために大量の社債を発行しているが、これをアメリカの投資会社がCLOと称する仕組み債にして大量に世界中に販売している。
シェールオイル企業は資金欲しさのために高金利で社債を発行しているため、それを組み込んだ仕組み債も当然高金利になり、投資家にとっては一見するとすこぶるおいしい投資先に見える。
リーマンショックの時に組み込まれたのはサブプライムローンという信用度の低い債券だったが、今度はシェールオイル会社が発行するジャンク債が仕組まれている。
原油価格が50ドル程度で推移すれば、それでもそうした社債は償還されるが、突然と言っていいほどの衝撃で原油価格が低下してしまった。
シェールオイル会社の倒産ラッシュが始まりCLOが無価値になる可能性があるが、そのCLOを大量に購入しているのが日本企業で、日本を代表する機関投資家がCLOを大量に保有している。
リーマンショックから10年、このまま進めばリーマンショックと同様の金融危機が発生する可能性もあり、コロナによる経済恐慌だけでなく金融恐慌も誘発する可能性まで発生し、世界の投資家は枕を高くして寝られないことになっている。
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