(2.5.19) 人類衰亡史序説 鉄鋼業界 その1 さらに過剰生産になっている
「鉄は国家なり」といったのは19世紀後半のドイツ帝国の首相ビスマルクだが、日本では鉄鋼産業が次々に高炉の休止に追い込まれている。
新日鉄が3基、JFEが2基の高炉を休止にした。一般的に高炉を止めると再開するのに多大な労力を必要とするから、休止の決断はほぼ廃炉の決断と変わりがないだろう。
従来日本の鉄鋼業界は中国の鉄鋼業界の安値攻勢にさらされて四苦八苦していたのだが、そこにコロナウイルスの蔓延に伴う自動車業界と建設業界の急停止が加わった。
日本の鉄鋼メーカーは通常の鋼管を生産していたのではとても中国との競争に勝てないため、自動車用鋼板に特化して生き残りを図ろうとしていたが、その自動車が各国のロックダウンで自動車に対する需要がほぼなくなってしまった。
家にいるだけなら自動車を持つ必要はない。さらに自宅でのテレワークが推奨され、通勤も西欧では自転車通勤に代わりつつあり、日本など隣の県に行くとナンバープレートを見て追い返されそうな雰囲気になっている。
コロナ騒ぎで人々の生活態度が大幅に変更されている。「どこにも行くな。ただ家にとどまれ!!」
これで自動車に対する需要が増大するはずはないから、主に自動車用鋼板を生産してきた鉄鋼メーカーの業績が悪化の一途をたどるのは仕方ない。
日本では需要が減少すれば高炉を止めて供給を抑えるが、中国ではこの需給調整の考えがない。
中国鉄鋼会社の大手はすべて国有企業であり、習近平氏の生産再開の掛け声に合わせて再び大増産に乗り出した。
中国の国有企業の幹部のメンタリティーは「ただ作ればよい。それをどのように販売するかは鉄鋼会社は関知しない。習主席に増産結果が報告されれば幹部は共産党の序列で上位に立て、将来はバラ色だ」
上記のように中国では需給ではなく、習主席へのごますりが先行し、もし大量在庫になって資金繰りに支障が出ても国有銀行から赤字見合い資金を融資してもらえるから、経営幹部としては何の支障もない。
問題はこの大量に生産された鉄鋼製品が世界市場にあふれ出て他国の鉄鋼業界を直撃し高炉の休止や廃炉や倒産に及ぶのだが、親方五星紅旗の中国鉄鋼業界はすべての赤字を国に付け替えて隆々と生き延びられる。日本の旧国鉄と全く同じ体質だ。
このままいくと、アルセロール・ミタルも新日鉄もJFEもコロナ騒ぎでとどめを刺されてしまうのではないかと思うほど経営はひっ迫しつつある。「鉄は国家なり」だから鉄鋼産業が消えるのは国家が消えるのと同じだ。
中国はコロナを蔓延させ、次はダンピングで鉄鋼製品を蔓延させる。何ともひどい状況だがこれが共産党支配下の中国の行動様式だから、中国共産党に引導を渡さない限り、世界は中国に蹂躙されるがままになってしまう。
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