(2.5.17) 人類衰亡史序説 ドイツその2 蜜月時代の終わり
長い間相思相愛の関係といわれていたドイツと中国との間に隙間風が吹くようになった。かつてメルケル首相が日本など目もくれず、2005年の就任以来10回以上も中国を訪問し固い友情を確かめ合ったのは、就任当初のドイツ経済がどん底だったからだ。
GDPはマイナスかせいぜい1%増程度で日本とさして変わりなく、ドイツの統合以来すでに失われた15年が経過していた。
「このドイツ経済再生の切り札は中国しかない」当時改革開放で急成長の波に乗っていた中国経済を利用するのがドイツ再生のカギになるとメルケル氏は確信し、その後の中国投資へと邁進させた。ドイツの誇る自動車産業が大挙して中国に進出し、シーメンスなどは新幹線技術をほぼ無償で提供し、その結果ドイツのGDPは2009年のリーマンショックを除くと2%から3%の成長路線に突き進むことができた。日本がほぼ1%程度の成長しかできなかったときにドイツの中国効果は絶大だったといえる。
しかし中国の大躍進も2018年を境に急停車をし始めた。2018年まで互いに投資をしあって成長軌道を走っていたのだが、中国の成長がストップしあとは国家統計局だけが奮闘している状況になった。そして中国の対外投資も塩が引くように減少し始めた。
中国によるドイツの投資額は2016年126億ドル、17年139億ドル、18年107億ドル、そして19年になると上半期だけだが6億ドルに減少してしまった。
当初はドイツ企業の中国投資が主だったが、中国が実力をつけるにしたがって反対に中国の対ドイツ投資が増大し始めた。特に16年以降中国はドイツの先端企業をターゲットにM&Aを仕掛けてきたため、ドイツ側に疑念が生じるようになった。
「ドイツが中国に投資をする時代は終わって、中国がドイツ企業の技術を安価に盗む時代になったのではなかろうか・・・・・」
とくに吉利汽車がダイムラーの筆頭株主になったりしたため、ドイツではそれまで株式の25%以上のM&Aは一件審査だったが、10%以上に変更し、ドイツ先端産業のノウハウが中国に流れない措置をとるようになった。
「このままではドイツは中国に食い物にされてしまう。何とか防がねば・・・・・」
ここ数年、中国がドイツの技術でドイツ産業を脅かすようになっていたため、メルケル首相としても友好一辺倒で対処するわけにいかなくなった。そこにコロナウイルスのパンデミックがおそってきた。
現在ドイツの先端工業地帯といわれているノルトライン州には中国の誇るファーウェイ、ZTE,XCMG,三一重工等の欧州本部が置かれている。中国企業はノルトライン州を含む先端工場地帯に約1100の企業が進出しているが、このことがドイツのコロナウイルスの蔓延に影響を与えた。イタリアも中国との関係を強化し、その結果ウイルスの蔓延を許したが、ドイツも同様に中国との関連の深さが災いした。
ドイツと中国との関係は蜜月状態と言っていいほど友好的だったが、中国経済が2018年に急停車したため、19年度のドイツのGDP伸び率は0.6%と日本並みの低成長に陥り、それも月を追って悪化し、20年度はコロナ騒ぎで計測するのも嫌になるくらいの落ち込みになっている。
中国には先端技術を盗まれ今やライバルになってしまい、もはやかつての友好関係も吹っ飛んでしまった。しかもコロナのおまけまでついた。
今回のコロナでの損失は約18兆円と見積もまれ、メディアの一部は中国に18兆円を請求しろと騒いでいる。
ドイツと中国が互いに必要とする時代は終わってしまったといえる。
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