(2.11.12) 人類衰亡史序説 エチオピア その2 ノーベル平和賞が泣いている!!
何がなんだか分からなくなってきた。エチオピアの内乱のことだ。昨年のノーベル平和賞はエチオピアの首相アビー氏が受賞したのだが、アビー氏の最大の功績は民族融和に成功したからだといわれていた。
エチオピアは多民族国家であり、約80の部族がひしめいているが、アビー氏はエチオピアの最大の人口を誇るオロモ人出身だ。
2018年にアビー氏が政権を掌握すると、次々に前政権の暴力的圧政を中止し、民族間の融和政策を積極的に実施してきた。
前政権は弾圧政策を旨として戒厳令を引いていたが、アビー氏は戒厳令を中止させ、政治犯約1万名を釈放し、インターネットの遮断もやめたりして、民主化に突き進んでいたので、ノルゥエーのノーベル委員会が感激してアビー氏にノーベル平和賞を与えることにしたのだが、この決定は時期尚早であったことが明らかになった。
ここにきて民族融和ならぬ民族闘争が発生し、政府軍との間で激しい戦闘が始まった。事の起こりはエチオピア北部を地盤とするティグレ人が武装蜂起し、政府の関連機関を襲ったからだがティグレ人の要求は分離独立である。
エチオピアは多民族国家で各州の自治政府に強い権限を与えられており、さらに憲法に「分離独立の権利を認める」とまで記載してあり、この条文を盾にティグレ人が独立闘争に立ち上がっている。
この「分離独立を認める」という条項は、単なるリップサービスに過ぎないと歴代の政権はみなしてきたが、ティグレ人が本気になって分離独立闘争を始めると政府は大混乱になってしまった。アビー首相も分離独立運動は力で抑え込む姿勢だから、昨年受賞したノーベル平和賞がすっかり色あせてしまった。
エチオピアは中国資本を積極的に導入し、首都アジスアベバは近代的な街に生まれ変わり、新たに鉄道網や道路網が整備されたので、アジスアベバだけを見ればエチオピアは相当な発展途上国に見える。しかしこれは首都周辺の話であって、地方に行けば行くほど貧困地帯広がり、生きていくのがやっとという場所ばかりだ。
武装ほう起したティグレ民族解放戦線はこうした貧困地帯を地盤としており、取り残された人々の反逆ともいえる。
エチオピアは一度民族紛争が火を噴くと、もともと80もの民族の寄り合いだから、旧ユーゴスラビアのような内戦に突入しないとも限らない。今はその内戦か民族融和かの瀬戸際にあって今後の動向に目が離せない。
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