(2.4.12) 人類衰亡史序説 サウジアラビア その2 アメリカに協調減産を呼び掛けているが・・・
原油価格を安定させるための協調減産の話し合いはOPECプラスで日産1000万バーレルの減産で合意したはずなのだが、メキシコがクレームをつけて暫定合意にとどまっている。また減産期間は5月、6月だから現在の供給過剰状態をすぐに解決するものでもない。
しかもコロナウイルスによる全世界的な経済停滞により原油は2500万バーレルから3500万バーレルは余剰となっており、たった1000万バーレルの減産では焼け石に水だ。
市場はこうした減産が実質的にはほとんど効果を及ぼさないとみており、本日のWTIは23.21ドルで減産発表前とさして変わらない。
サウジアラビアとしてはOPECプラスがいくら減産しても、最大の原油生産国のアメリカが参加しなければ効果がないも同然で、サウジはアメリカに日産500万バーレルの減産要請をしている。しかしトランプ政権はこれに応ずるつもりはない。
「我が国のシェール生産会社は民間資本だからサウジやロシアのような強制減産を指示することはできない。このままいけば年末までに約200万バーレルの減産になるだろう」と実に曖昧な返事をしている。
アメリカの本音はサウジとロシアに減産させ価格を上昇させて、アメリカはあくまで商業ベースでの減産にとどめて漁夫の利を得ようということだ。これにはサウジとロシアが納得しない。
現在の原油生産の損益分岐点はバーレル当たりサウジが5ドル、ロシアが40ドル、アメリカが40~60ドルとなっており、競争をすればアメリカが真っ先に根を上げる構造になっている。
すでにアメリカのシェールオイル生産会社には倒産が出ており、このままの価格が推移すればバタバタとシェール会社は倒産する。
まさにチキンゲームになっており原価ではサウジが圧倒的に優位だが、サウジにも弱点がある。イエメンでの戦争に勝利するための戦時財政になっており、財政均衡を図るためには90ドルの販売価格が必要になる。当然不足分は過去にため込んだ資産を取り崩すことになり、いつまでも威張っているわけにはいかない。
ロシアは40ドルで予算を組んでおり、さらにコロナ対策として緊急予算を組まねばならず、現在の20ドル前半の価格ではすぐさま財政がひっ迫する。
アメリカのシェール産業の原価は最も高く、このままいくと倒産が続出する。そして最も懸念されるのはこうした会社が数百億ドルの社債を発行しており、しかもそれのほとんどがジャンク債であることからいったん倒産が始まると社債市場が大荒れになる。
特にこの社債がCLO(ローン担保債権)に組み込まれていることが問題で、リーマンショック時のサブプライムローンと同じ構造になっているので、金融恐慌を引き起こしかねない。
今はアメリカが500万バーレルの減産に応じるか否かを市場は固唾をのんで見守っており、決裂すれば20ドル前後で原油価格は低迷する。一方サウジは戦争遂行が不可能になり、プーチン政権はその基盤が危うくなり、トランプ政権で金融恐慌を引き起こすことになる。まさにチキンゲームが繰り広げられており、コロナの盤上の乱舞はどのように収束するかわからない。
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