(2.6.4) 人類衰亡史序説 スウェーデン その2 コロナ対策の評価が分かれる
コロナ対策において異なる両極端の2つのアプローチがある。一つは多くの国が採用したロックダウン方式でありもう一つはスウェーデンやブラジルが採用している集団免疫方式である。日本はこの両極端のちょうど真ん中のような緩い閉鎖方式だ。
最近までイタリア、スペイン、フランスといったヨーロッパの主要国で爆発的感染が発生し死者数もうなぎのぼりだったので、「せっかくロックダウンを行って国や都市を閉鎖したのにかかわらず、全く何もしないに等しいスウェーデンより効果がないのはなぜか」と多くの感染症学者を悩ましていた。
ところが夏場になりどこの国も感染者数も死者数も減少し、特にスペインなどはここ数日死亡者がゼロになってくるとロックダウン派がすっかり自信を取り戻した。「新たな感染者は数百人で、死亡者は数十人だ。それに引き換えスウェーデンの感染者数は2000人台で死亡者はイタリアを上回る。集団免疫は失敗したのではないか・・・・」
注)6月4日の感染者数、死亡者数は順に以下の通り。
スペイン 394人 0人、イタリア 321人 71人、ドイツ 242人 39人、イギリス 1878人 359人、 スウェーデン 2214人 74人。
さらにここにきてスウェーデンの公衆衛生局で感染症対策を指導してきたデグネル氏が「今よりもっとうまくできたはずだ。正解はスウェーデン方式とロックダウン方式の中間にあるだろう」とメディアにコメントを述べたために大騒ぎになってしまった。
「ほれ見ろ、デグネルはスウェーデン方式の失敗を認めた」ロックダウン派が溜飲を下げている。それまで「こんなきついロックダウンをしても何もしないスウェーデンと同じじゃないか」と非難され続けてきたからだ。
実際はデグネル氏は「スウェーデン方式で免疫を獲得すれば第二波が来たときは患者数は少なくなる」とも言っており、別段敗北を認めたわけではないが、スウェーデン方式反対派からは明らかな敗北宣言に聞こえるらしい。
現在ストックフォルムの集団免疫獲得率は7%程度でとても集団免疫の目標の60%からははるかに低い水準だから、第二波が来たときどの程度効果があるかわからない。またロックダウン派にはきのどくだが、ロックダウンが有効だったのか単に夏場になってウイルスの活動が鈍ったの判別もむずかしい。ただ言えることはロックダウンを実施した国では夏場になって感染者数が大幅に減少したが、集団免疫派のスウェーデンの感染者数の減少は緩慢で、さらにイギリスのように当初は集団免疫を目指し途中でロックダウンに切り替えて方針がぐらついた国は、いまだに感染者数も死亡者も多いといえそうだ。
最近の100万人当たりの死者の数はスウェーデンが世界最高になっていて、それを根拠に「スウェーデンは失敗した」と声高に述べるメディアや研究者がいるが、この判定はいささかこじつけがましい。
当初から現在までの死者数の100万人当たりの死者数はスウェーデンが約50人、イタリアやスペインやイギリスが約60人だから特別スウェーデンが多いわけではない。
それよりも興味深いのはデグネル氏が「正解はスウェーデン方式とロックダウン方式の中間あたりにありそうだ」と述べていることで、これはまさに日本が実施した緩やかな感染対策に相当する。
現在どの方式が最も効果的だったかと世界の研究者が懸命に比較対象をしていているものの、現在はまだコロナの収束途中のため結論は出せない。しかし意外に日本方式の有効性について世界の研究者は注目している。
山崎医学研究所の山崎所長は「コロナで死亡するのは70歳以上の老人であり、その比率は70%から90%に達している。老人は基礎疾患を持っていることが多く、また特に西欧とアメリカの老人は肥満体だらけだから簡単に死亡してしまう。日本の死亡率が低いのは老人でも肥満体の人が少ないからだ」と言っている。またシンガポールや中東諸国の致死率は比較にならないくらい低いが患者のほとんどが出稼ぎ労働者で、若くて免疫力がたかくまた肥満体は全くいないことも知られている。
コロナ対策はその国の置かれている実情に合わせて行うのがよいが、特に若者については感染しても症状は軽いか全くでないのが普通で、コロナを老人病と認識してそれにふさわしい対応をするのが最も妥当だろうというのが山崎所長の見解だ。
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