(2.11.22) 人類衰亡史序説 中国その25 中国国営企業の倒産が始まった。
私が毎日見ている宮崎正弘氏のニュースマガジンに中国の大手自動車メーカーの倒産記事が掲載されていた。カシン汽車集団という中国の中堅どころの自動車メーカーで中国での順位は9位だという。このカシン集団が発行した米ドル社債10億元とその利息(約164億円)を期日に償還できなくてデフォルトに陥ったという。
さらにカシン汽車は今後1兆5千億円の社債の償還があり、これらがほぼ全額焦げ付く可能性が高い。
中国国営企業の社債は利息にプレミアムがつけられるが、それでも国営企業は中国政府が必ず救済すると思われていて、社債の購入を喜んでする投資ファンド等が多かった。それが中国政府が救済を放棄したのでおお騒ぎになってしまった。
「従業員4万5千人、傘下の下請けが160社もあるのに政府は助けないのか」市場は驚きの目で見ている。
中国政府が救済に乗り出さなかったか理由についてはいくつか言われているが、一つにはガソリン自動車からEVへの移行を図ろうとしている政府としてはガソリン車生産企業はいづれ淘汰しなければならない企業だからという。
増えすぎたガソリン車生産企業の縮小だが、このカシン汽車集団が生産している車種はどれもこれも魅力の乏しい燃費の悪い自動車ばかりで、中国人といえども購入をためらう車種のオンパレードだった。
しかし一方で国営企業の救済を放棄した中国政府の方針についてはもう少し深いわけがありそうだ。簡単に言えば救済資金がないということで、中国政府は現在海外と国内で不良債権の山を築いており、それをいちいち救済していたら国家の屋台骨が危うくなる状況だ。
どうしても選択と集中が必要で、売れもしない車を作っているカシン汽車集団を助ける気持ちが失せたのだろう。
しかし一方で国営企業は売れない車を生産してはGDPに計上し、「我が国はコロナからいち早く経済を立て直した世界の指導国家だ」との宣伝用にひたすら生産をさせてきた相手だから、倒産させてはGDPが張り子の虎だったことが明らかになってしまう。
売れても売れなくても生産してGDPの底上げを図るのが中国式経済の神髄なのに、倒産させては国家統計局が声を上げて泣いてしまう。
それでも国営企業の倒産を認めざる得なかったのは政府に救済資金がないからだ。
こうして統計での華やかな経済復活の陰で、実体経済はむしばまれ不良在庫を抱え売れない自動車をGDPのかさ上げのためだけに存続させるが、それはあまりに高い授業料になってしまうのだろう。
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