(30.5.24) 日大藩 平成のお家騒動
日大アメフット部の宮川選手には心から同情してしまった。汚れ仕事を監督とコーチから押し付けられ、絶対権力の監督のもと、それを断れない状況下で反則行為に及んだことがよくわかった。
「藩命である。関学藩QBの首をとってこい」
「ご家老様、なぜ私がQBの首をとらなければいけないのでしょうか」
「無礼者、下侍の分際でわしになぜというような生意気な言葉を言える立場か。井上、この宮川に礼儀を教えてやれ」
「宮川、ご家老様はお前がこの度の使命を全うしたらご加増を検討してくださっているのだぞ。今はお前はアメフト部で冷や飯を食べているが、関学藩のQBさえ仕留めれば我藩が末永く安泰であるだけでなくお前のためにもなる。宮川、喜んで引き受けるといいなさい」
「しかし意図的にQBをつぶすのは反則行為になるのではありませんか」
「馬鹿者、宮川、お前のそうした武士としての心の弱さが問題なのだ。相手がつぶれればそれこそこっちのものではないか。武士道とは相手をあらゆる手段でこすからく追い詰めることだと日大葉隠れに書いてある。よいな、それを忘れず最初の1クオータで相手を叩き潰せ」
「よいか、宮川、これは藩命である」(家老が大声で恫喝する)
(しばらく沈黙)「致し方ありません。仰せに従います」
「最初からそう言えばいいのだ。井上、くだくだ言わせるな」
御前試合当日
上士の井上が整列している宮川に近づきささやく。
「よいな、必ずやるのだぞ。できなかったでは済まされんぞ。ご家老様も見ておられる。日大藩が今後関学藩に絶対に負けないようにするには相手のQBを骨折させる以外に方法はない。宮川、わかったな」
「はい、絶対につぶしてまいります」
「よし、それでこそ日大藩の武士の鑑といえる。こすからさは日大葉隠れの精神だ」
(数日後)試合当日の反則行為が瓦版に大々的に掲載されている。また関学藩から厳重な抗議があり、幕府若年寄鈴木大地の耳にも知れるところとなった。瓦版には日大藩に対する非難の大合唱になっており、それを苦々しい表情で見ている家老の内田正人と上士井上。
「ご家老様、どうも町人や百姓共がわが藩の反則行為にいきどおり、幕府からは目付の派遣さえうわさされております。いかがいたしたらよろしいでしょうか」
「うろたえるな井上、この件はすべて宮川の一存でやったことにすればいい。藩の大事だぞ。決してわれらが指示したなどということを認めてはならぬ。よいな、」
「しかしご家老、私は宮川に関学藩のQBをけがさせろと明確に言ってしまいました。宮川もその旨を瓦版記者に明言しております」
「馬鹿者、あくまでも白を切るのじゃ。決してわれらが指示などと認めてはならぬ。日大藩がおとりつぶしになったらなんとする。ここは宮川だけを悪者にするのじゃ」
「しかし」
「しかしではない。決して認めるな。これは藩命である」
こうして日大藩平成の大乱が始まった。
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