(29.3.9) 三越伊勢丹HDの苦悩 だが社長をいくら変えてもどうしようもない
三越伊勢丹HDの大西社長が辞任に追い込まれた。
私が就職を決めた1970年代のころは三越も伊勢丹も流通業界の雄で、私の妹も三越に入社して人から羨まれていた。
しかしバブル崩壊後富裕層を対象にしたデパートは冬の時代に突入し、売上高は毎年のように減少し収益は低迷してきた。
専門店やスーパーやコンビニに集客を奪われ、品質も接待も最高だが高価すぎるデパートからは顧客が遠のいたからだ。
三越と伊勢丹が合併したのは2008年だがあれから10年、合併効果も出ず三越千葉店や多摩センター店の閉鎖等リストラだけが目立っている。
デパート業界はここ数年中国人のインバウンド消費と称する爆買いで一時息を吹き返していたが、中国政府が爆買い禁止のため16年に入るとクレジットカードの使用上限を設定したり、爆買い製品に高額の輸入関税をかけるようになって瞬くまに爆買いは終息した。
中国人の爆買いは転売目的で高額の輸入関税をくぐりにけることが目的であり、転売専門の業者に売却するシステムが出来上がっていたが輸入関税をかけられたらおしまいだ。
「運び屋家業は儲からないからもうだめね。おしまいよ!!」
中国人観光客は増えているがもっぱら観光に特化した通常の外国人観光客になってしまった。
15年ごろまでデパートや家電の流通業界は中国人の爆買いに対処するため売り場面積を拡大したり、中国語ができるスタッフを雇用したり、成田や羽田まで配送するシステムを整えたりしたが、すべてうたかたの夢に終わってしまった。
三越伊勢丹HDも16年度の利益は爆買い終了によって半減している。
売り上げも収益も上がっている間は大西社長の手腕も評価されたが、中国人の爆買いが終ってしまえばお家騒動が始まる。
デパート業界は基本的にマイナスのトレンドにあるから、いかにうまく撤退するかが基本的戦略になるが、大西社長がとった旅行業界やブライダル部門への進出はこのトレンドに反する拡大路線だった。
「全くもうからないのに旅行やブライダルを拡大してどうするの。本業だってますます苦境でお店には閑古鳥が鳴いてるわ」
労組が反発して石塚会長に泣きこみ、石塚会長が大西社長に引導を渡したのだが、デパートという業界の在り方がすでに日本では存在理由がなくなりつつあるので、だれが社長になっても苦境から脱出することは不可能だろう。
かつてといっても15年ほど前だがシンガポールで高島屋の素晴らしい店舗と顧客の多さに目を見張ったが、人口と所得が増加する地域でないとデパートは存続できない。
日本のように毎年のように人口が減って老人ばかりが増える国で、かつ所得が伸び悩む地域ではモノを購入する意欲がわかない。
三越伊勢丹HDはいくら社長を変えても業界の在り方がすでに日本ではマッチしていないのでこの苦境を脱することは不可能だろう。
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