評論 世界 文明論

(29.1.22) 資本主義文明の黄昏 トランプ氏がアダム・スミスを死に追いやった。

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 アダム・スミス
が富国論を書いて自由な市場が富を増大させると説いたのはイギリス資本主義が産声を上げていた1776年だが、それから250年の時が経ってその資本主義が黄昏を迎えようとしている。
資本主義文明の命モノとカネが自由に取引されることだが、トランプ政権の誕生でモノの自由取引が終ろうとしているからだ。
トランプ氏は就任早々TPPからは離脱、NAFTAは見直しをすると表明したが、どちらもアメリカが戦後70年かけてようやくたどり着いた自由貿易の成果だった。

 トランプ氏にとってカネの自由化ウォール街という世界屈指の金融市場を持っているのでアメリカの利益になるが、一方モノの自由化は全く反対で、当初は日本、韓国、そして現在は中国に蹴散らされもはや見る影もなくなった。
アメリカ製造業の代表は自動車産業だが、GMもクライスラーも一旦は倒産し政府の資金援助でかろうじて生存しているし、かつては世界最大の鉄鋼会社だったUSスチールは中国の鉄鋼製品のダンピングで青息吐息になっている。

 アメリカからは工場が消えメキシコや中国に工場が移転して、中産階級だった白人層は一様にプア・ホワイトになり、家を捨てトレーラーハウスでハンバーガーを食べて生きている。
これ以上モノの自由化を推進すればアメリカからは中産階級が消え去る直前になり、アメリカ国民はトランプ氏を大統領に選択し、国境を関税障壁で守ることにした。
世界は豊かになったがアメリカの中産階級は貧困に突き落とされた。誰がこんな世界にした

 それでもアメリカが世界最高の経済力を持っているのは金融産業が世界を睥睨しているからで、現在のアメリカはウォール街が支えているといっていい。
然しここで働くのはアメリカの有名大学の大学院を出た一部エリートだけで、富はこうしたエリートだけに集中し、工場労働者だった中産階級は年を追って貧困化している。

 アメリカの資本主義が金融業だけの片肺飛行になり、そして今トランプ氏は製造業の復活の宣言をしたがこれは保護主義による国内産業保護以外に守るべき方策はない。
国境を強化し外国製品には35%の高関税をかける。アメリカに商品を売りたければすべてアメリカで生産しろ
アダム・スミスが目指した自由市場は消え去り、国内市場保護の雷鳴がツイッターで轟いている。

 18世紀、イギリスで産声を上げた資本主義文明は当初はイギリスが主導し、そして20世紀はアメリカが主導してきたが、今アメリカが資本主義のリーダであることをやめると宣言し、そして自由貿易から降りてしまった
世界の貿易量は減少し始め、中国や韓国といった輸出立国は毎月のように輸出も輸入も縮小している。

 オバマ政権までは「自由貿易こそ世界の人々を幸福にする」としてTPPを推進してきたが、今やTPPは海の藻屑だ。
21世紀に入り製造業については自由貿易の時代は終わったといっていい。
まだ金融業についてはウォール街を中心に自由な市場を求めているが、モノとカネが一体となって市場を形成している以上この金融業における自由市場の波もいづれ止まる。

 世界中で国境が高くなりモノもカネもそして人の往来も少なくなり、アダム・スミスがあれほど高らかに歌った資本主義文明に黄昏が訪れた。

 

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(28.12.5) 資本主義文明が衰退期に入り「不機嫌な時代」となった。

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  世界の政治家の態度
がだんだんと品のないものになってきた。トランプ氏はメキシコ人や回教徒や中国に対する敵意を隠さないし、フィリピンのドゥテルテ大統領は麻薬撲滅戦争に勝利するためには麻薬密売人を殺しまくれと騒いでいる。
ヨーロッパでは極右勢力が台頭してシリア人やアラブ人を一人残らず追い返せと騒いでいるし、隣の韓国ではパク大統領が日本は世界最大の悪徳国家だと騒いでいた。
何か世界中の政治家が急に憎悪をむき出しにし始め、まだ品性を保っているのは安倍総理ぐらいになってしまった。

 この急激な変化は驚くべき程だが最大の理由は世界が貧しくなってきたからである。
世界の先進国ではいまだに数%GDPは増大しているが、この恩恵を受けている人は一部の人々で多くの人々は実際は貧しくなっている。
簡単に言えば正規労働者が減りパートが増え、そして学生は就職先が見つからない。

 こ
の現象を文明論的に言えば資本主義文明が衰退期に入ったからといえる。資本主義社会ではモノとサービスを常に増大させるのが善と考えられ、口を開けばGDPを拡大させると政治家は約束していた。    
成長なくして財政再建はない」は安倍総理の口癖だが、どこの政府もGDPの拡大こそが最大の政治目標になっている。

 だが実際には21世紀に入ってモノとサービスの生産は飽和状態になり、もうこれ以上生産力を拡大してどうするのという状況になってしまった。
日本では不要な高速道路や橋を作りまくってその後の維持費用でてんてこ舞いだが、隣の中国では鉄鋼製品が実需の4倍程度も生産されるので思い余って海外にダンピングするので世界中の鉄鋼会社が倒産直前まで追い込まれた。
あんた、いらない鉄鋼製品をそんなに作りまくってどうするの」世界の顰蹙を買っている。

 仕方なしにアメリカやEUや日本や中国は金融緩和と称する紙幣の印刷を行って不動産や株式の価格を上げそれによって得た一種の不労所得でGDPの拡大を図っている。
確かにこれでもGDPは増大するがその富は金融取引にたけた1%の金融や証券や不動産関係者にかたよっているため、たとえGDPが拡大しても残りの99%は所得は増大しないかかえって減少するありさまだった。

 資本主義が健全な工場労働者に支えられた時代が終わりウォール街の金融ブローカーが支えるようになると、あまりの富の偏在に99%の国民が不寛容になってしまった。
他人のことはどうでもいいから俺たちの生活を改善してくれ。外国人のことなど知っちゃことはない
これを世間ではトランプ現象というが、資本主義文明が活力を失いバブルだけに頼った運営になったからである。

 20世紀の後半は世界中で寛容の精神が蔓延し、他国を助けるのが善だと思われていた。アメリカが敗戦国の日本に対しあれほど寛容だった理由は自国の資本主義経済が大発展を遂げていたからだ。
「まあ、敗戦国だが何も食べ物がないのはかわいそうだから、粉ミルクぐらいは援助してやろう」ガリオア・エロア基金等で敗戦国を援助したのは驚異だったが、経済が大発展して余裕があったからだ。

 その資本主義経済が限界に達しもはやGDPは伸びず、唯一伸ばす方法が紙幣の印刷になり、しかもその恩恵は一部の金融不動産関係者にとどまってしまえば、だれもが不寛容になる。
明日は今より貧しくなるのになんで他人のことなどかまっていられるの
誰もが不機嫌になり、政治家は敵意をあおり、人々は財布と心を閉ざしていく。
これを「不機嫌な時代」というが、本当の理由は資本主義文明が衰退期に入ったことだ。


 

 

 

 

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