(28.6.16) 独裁国家中国の誤算 なぜ世界の鉄道投資が次々に破綻するんだ!! インドネシアの事例研究
おそらくこれ以上興味深い研究は見つけることは難しそうだ。
中国が行ってきた海外投資、その中でも鉄道投資が次々に破綻し始めたが、その破綻の研究のことだ。
ベネズエラとの間で取り交わした400kmの高速鉄道は75億ドル(約8000億円)の費用をかえて、2012年には開通するはずだったが、いまやさび付いた鉄路が残されているだけだ。
タイとの間で取り交わされたバンコックを起点とする5線の建設では中国からの借款によって費用を賄う予定だったが、ここに来てタイが断った。
「金は要りません。その代わりタイが主体的に建設を行います」
アメリカのロスとラスベガスを結ぶ高速鉄道の建設は中国とアメリカのエクスプレス・ウエスト社が合弁で行う予定だったが、ウエスト社が合弁を解消した。
「連邦政府が車両の建造はアメリカ国内の会社で行うように指示してきたが、それでは中国国内で作るような安価な車両は作れない・・・・・・」
そしてついに真打の登場だが昨年日本を蹴落として受注に成功したインドネシア・ジャワ島の高速鉄道について暗雲が漂っている。
この2月に正式契約を結ぶ予定がご破算になったのは中国が中国語以外の契約書を用意していなかったからだ。
「いくら何でも中国語だけではインドネシア人は内容を把握できません。インドネシア語と英語の契約書を用意してください」
「それにインドネシアは中国と異なり地震国でこれは日本と同様です。地震対策を日本並みの水準で実施してください」
契約書の件はともかく地震対策については中国はほとんど経験がない。中国では地震はほとんどなく、特に高速鉄道が通っている場所での地震対策など施した経験がない。
「いったいどうすればいいんだ。また日本から技術を盗まなければならないじゃないか・・・・」
注)インドネシアが日本をけって中国の新幹線を導入した経緯は以下参照http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat47319618/index.html
さらにここに来てついに中国が最も恐れていたことが発生し始めた。用地買収が遅々として進まないのだ。インドネシアでは中国や他の独裁国家と異なり選挙が実施され、大統領といえども民心を無視するわけにはいかない。
特に現在のジョコ政権は完全なポピュリズム政権だから国民の人気だけで持っている政権だ。
中国が「軍隊や警察を派遣して用地買収に抵抗する不満分子を建設予定地から追い出せ」とせっついてもそれはできない相談だ。
「中国さん、ここは中国でなくインドネシアです。住民が反対すれば話し合いで解決するしか方法はありません」
話し合いとは用地の買収価格引き上げのことだが、土地所有者と鉄道建設会社(中国との合弁だが実際は中国の会社)の間の価格の相違額は会社の提案は、㎡あたり1000円で一方住民の希望価格は10000円と約10倍程度離れていてとても収拾できない。
「10倍も土地収用に費用がかかっては当初の建設予定価格がどこまで跳ね上がるか分からないじゃないか。なぜインドネシア政府は中国で行うように反対者を蹴散らして投獄しないのだ!! それが世界の常識だろう!!」
中国は自国と独裁国家で行ってきた土地収用方式がここインドネシアでも適用できると思っていたが、とんだ誤算になってきた。
「まずい、これでは当初約束の2019年の開通など夢のまた夢になってしまうし、費用も7200億では収まりそうもない!!!」
中国はインドネシア政府に対し費用増加部分についてはインドネシア政府の保証をしてほしいと迫ったが、インドネシア政府からはけんもほろろに拒絶された。
「中国さん、当初からお宅はインドネシア政府の保証はいらないといっていたはずです。だから日本ではなく中国を選びました。ここに来て保障の話は受け入れられません。費用の増大分は中国さん、あなたが全額支出してください」
中国にとっては思わぬ誤算だ。住民の反対はインドネシア政府が強権で抑えてくれるものと期待したが、実際は中国が金を積んで住民を説得しなければならなくなった。しばらく前までだったら中国はうなるほど金があったが、今やその金は潮をが引いたように中国から逃げ出している。もはや自由に支出できるような余裕はない。
「いったいどうしたらいいんだ。インドネシア人は中国人と見ると金持ちだと思って吹っかけてくる。だがわが国には余裕資金などどこにもないのだ。なぜインドネシア政府は不満分子を銃殺しないのだ・・・・・・・」
今や中国の海外での鉄道投資は問題が山積みだ。次から次に失敗して不良債権の山を築きつつある。
ここインドネシアでも鉄道投資は失敗するだろう。その経緯を逐一追っていくと、独裁国家中国が鉄道投資という世界戦略で失敗し衰亡していく経緯が明確に分かる。
だからこの研究は興味が尽きないのだ。
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