(28.3.17) 世界経済が低迷し、日本も海運不況・造船不況に突入した。
先日ブラジル経済の分析をしたところ、読者の絶望人さんから非常の興味あるコメントを頂いた。私の書いた記事はブラジルの国営石油会社が原油価格の低下に伴い設備投資を控えており、この国営企業に群がったブラジルの建設会社が苦境に陥っているという内容だったが、これに対し、
「日本の造船業界もこの影響で大変な事態です。造船各社はシナ韓国との競争でブラジル造船企業に出資していましたが、ペテロブラスの代金未納で大変な事態になりました。
IHI 三菱重工(商事)、川重、名村造、今造、大島造 。 読みが狂って大赤字、撤退も勿論ですがこの造船各社経営が心配です」というコメントだった。
注)ブラジル経済の分析は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/ppppp-4.html
私など世界経済がどう動こうが実際の生活に はほとんど関係がないので、海運や造船が不況になっても「だから何なの」というような反応しかできないが、実際は今海運不況、造船不況の嵐が世界中を吹きまくっている。
不況の最大の要因は中国経済の凋落で、中国だのみの鉄鉱石輸出や、原油輸出がこのところぱったりと動かなくなってしまった。
この結果問題になっているのは海運業界で、鉄鉱石や石炭といった資源を運ぶバラ積み船の運賃は過去最低を更新している。
運賃の推移はバルチック海運指標で見るのだが、14年の始めに1500だった指標は最近時点では300に低下しており、5分の1の水準になってしまった。
注)他の指標では欧州アジア航路のコンテナ船で20フィートコンテナ一個の運賃が現在200ドルだが、採算ラインは1000ドルとなっている。
この300で収益を上げることのできるような海運会社はどこにもなく、荷を運べば運ぶほどほど赤字が積みあがっていく。
商船三井は今後採算が見込まれない古くなった中小貨物船のリストラに着手することにしたので、16年3期は特別損失1800億円を含めて最終利益が1750億円の赤字になる。
日本郵船も川崎汽船も収支見込みを下方修正しているが、本当はどこまで市況が悪化するか予測ができないほどだ。
すでに中小以下では倒産が始まっており、中堅の第一中央汽船が昨年倒産し民事再生法の適応を受けている。
今後中堅以下の船会社の倒産が続出しそうだ。
船会社が経営が悪化すると当然のことに新規の造船の契約はなくなってくる。16年に入り契約件数は激減しており、実際はゼロに限りなく近くなっている。
船会社としては運ぶものがなく、たとえ運んだとしても大赤字なのだから新規の船舶の発注などできようはずはない。
それより商船三井が行っているように採算の悪い商船のリストラの方が必要になっている。
世界の貿易量が拡大しそれもいつまでも拡大していくように見えたのは14年夏までで、このころを境に中国経済が急停車して原油も鉄鉱石も銅鉱石も石炭も余ってしまうようになった。
以来海運業界も造船業界もそれまでの拡大路線から縮小路線に切り替えないと経営が成り立たなくなってしまい、いまや海運不況、造船不況の真っただ中に突入した。
隣の韓国などでは大手造船3社が赤字経営に陥りゾンビ企業になっているが、日本も1年遅れでその状況に入ってきた。
注)韓国の造船不況の現状は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat44234699/index.html
今後とも世界経済の拡大は見込めず、したがって海運市況は低迷したままで商船会社も造船会社も懸命なリストラによってしか生き延びることはできそうにない。
生き残るのはいくつかの大手だけというような状況になってきた。
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