(28.12.19) GDP統計は全くあてにならん どうしたらいいんだ思案橋
安倍総理大臣が「わが心にかなわぬもの、GDP統計と小池東京都知事と韓国」と嘆いていた。
日本における経済政策を決定する意味で最も重要視されている統計指標はGDP統計だが、これが全くと言っていいほど実態とかけ離れている。
日本の現在のGDP成長率は1%前後だが、統計の誤差率は1~2%と言われており、伸びたパンツのひもで身長を図っているようなものだ。
原因はGDP作成のさらに基礎統計の一つに総務省が発表する「家計調査」があり、これがGDPの約6割を占める消費支出の基礎統計なのだがさっぱりなのだ。
調査は約8000所帯の家計で家計簿をつけてもらいこれで消費動向を把握しているはずなのだが、常に低く出てしまう。
あまりのひどさに財務省や日銀がクレームをつけても総務省は「なら、もっと有効な統計手法を教えてくれ」といって居直っているだけだ。
どこに問題があるかというと、この家計調査は毎日のすべての家計費を家計簿に詳細に記載しなければならないのだが、そうした暇のある社会人はほとんどいない。
統計依頼対象者は確かに層別になっていて統計学的に有意なのだが、実際に記載してくれる人はもっぱら専業主婦や老人になってしまう。
「どれどれ、総務省の偉いお役人様が家計簿をつけてくれとこのババに依頼してきたが、このババの家計費を調べてどうするつもりじゃろかね。もう足腰も弱っているからスーパーにもいけないし、食事などはするのもおっくうになっているし、衣類などここ数年買ったこともないが、このババの家計動向が日本の標準になるのじゃろうかね」
総務省も家計簿を手書きではなくパソコンのオンライン入力に変えたり、レシートはスマートフォンで直接読み取れるようにしているが、年寄りにはパソコンもスマートフォンも苦手だ。
「パソコンなど今まで一度もいじったことはないし、電話など黒電話しか使ったことがないのじゃけれど、どうしたらいいもんじゃろか。お役人様がソフトをインストールすればいいと言ってくださるが何のことじゃろうかね」
簡単に言えば現在の家計調査は老人所帯の家計調査だから実態より常に下回って出てくる。
加えて問題なのは調査項目の見直しは5年に1回だから最近時点のナウな動向は全く反映されないことだ。現在私などは必要なもののほとんどをアマゾンで購入ししているが、こうしたネット販売の爆発がとらえられない。
統計の基礎資料は業者の資料を原則使用しないからアマゾンの販売内容をアマゾンから入手することもない。
もっぱら家計調査だからババの手書きの調査が日本のGDPの消費支出の基礎になっている。
また統計官の配置にも問題があり、古い産業については統計官が多く正確なデータが取れているのだが、新産業を把握する統計担当官が極度に少ない。
私の経験した事例では農水省の管轄の農林情報統計事務所には実に多くの職員が配置されていて、ダイコンや玉ねぎや米といった農畜産物の統計は実によくわかるのだが、これは日本がまだ農業国であった戦後しばらくまでの統計手法を反映している。
一方ネットやシェアビジネスやソフトといった新産業にはそもそも統計担当者がいないか極度に少ない。
統計は所幹部ごとに作られていて農林水産物は農水省といった具合だが、新産業の管轄部署では統計より育成のほうが重視されるから統計官といった地味な仕事は配属された新人が片手間にやるしかない。
そして最後の問題は日本の統計手法は完全に積み上げ方式で統計表をまとめるだけだから、異常値のチェックを誰もしていないことだ。
アメリカでは統計専門官がいて集計されたデータの異常値をチェックして整合性のある数値に置き換えて発表しているが、日本は新人が取りまとめた数字をそのまま発表している。
かくして日本のGDP統計は政策決定に全く役立たなくなってしまった。もっともアメリカでも政策金利の上げ下げは雇用統計とインフレ率で行っており、GDPは後追いの確認資料になっている。
日本のように伸びたパンツのひもでいくらGDPを図っても役立たないのは当然で、政府はビックデータを使った補正措置を考えていて今よりましになることは確かだが、だからと言ってGDPが1%を超えて数%になるわけではない。
もっとも本質的な問題はGDPの成長がストップしGDPの統計をいくら見ても意味のない時代に入ったのに相変わらずGDPを金科玉条にしていることだろう。
注)GDP時代の終わりについては以下の記事を参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/pppppp.html
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