評論 世界経済 サウジアラビア経済

(28.1.5) イスラムの30年戦争が始まった。宗教的情熱がなくなるまで戦闘はおわらない!!

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 宗教戦争
ほど厄介なものはない。これに対する適切な対処方法はほとんどない。唯一その有効性が確認されている方法は互いにへたばるまで戦わせることだ。
これには先例があり17世紀の前半の30年をかけて互いに相手を殺しまくったプロテスタントとカソリックの30年戦争がある。

 この戦争の舞台は当時の神聖ローマ帝国(現在のドイツ)で当時1800万人いたと推定される人口が戦争終結時には約700万人になっていた。
人口が4割に激減したのだが、大事なことは戦闘員になる若者や男性の人口がいなくなって、後には非戦闘員の老人や女性や子供しか残っていなかったといわれている。
ここまでくると戦争そのものができなくなり、あまりの馬鹿馬鹿しさにこれ以上宗教的情熱で戦争を行うことを止めることにした。それがウェストファリア条約で以来ヨーロッパでは大規模な宗教戦争は収束した。

 現在中東ではサウジアラビアイランが真っ向から対立する宗教戦争が勃発している。サウジはスンニ派の盟主で一方イランはシーア派の盟主だ。
イスラム教の世界ではスンニ派とシーア派は水と油の世界でありともに相手の存在を認められないと憎しみ合っているが、日本人から見ると何がそんなに問題なのかさっぱりわからない。
宗教的対立は対立している本人しか理解できないのだが、それは心の問題だからであり心は他人にはうかがい知ることのできないものだ。

 この1月2日にサウジアラビアがシーア派の宗教指導者を含む47人の死刑執行を行った。なぜサウジがこの時にシーア派の大量死刑を実施したかというとサウジ自身がシーア派に追い詰められつつあり、国内に約15%いるシーア派教徒の反乱を抑えるためだ。
シーア派による策動は絶対に許さない」とのメッセージである。

注)サウジアラビアの実情については以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/pppp-4.html

 これに対しシーア派のイランが激しく反発し群衆がサウジのイラン大使館を焼き討ちした。かつて1979年のイラン革命時にイランは同様にアメリカ大使館を襲撃して多数の人質をとったがその再現を図ったものだ。
これに対しサウジは国交断絶を宣言し、実質的に戦闘準備段階に入っている。
やるならやるぞ、かかってこい!!!」

 サウジとイランは今までは直接に戦闘は交えていないが代理戦争はいたるところで行っており、シリア、イラク、イエメン、レバノンで互いに支持する勢力に資金と武器の援助をしているし、イエメンではサウジがシーア派に対し直接空爆を行っているがその報復攻撃はシーア派によるイランから供与された地対地ミサイルによる反撃だ。
サウジはIS(イスラム国)に対しても資金と武器の援助を行っているが、これはISがスンニ派武闘組織だからで、サウジにとってみればシーア派の打倒を叫ぶ組織はすべて味方になる。

 従来中東で戦闘状態になるとアメリカが出張って行って「まあ、悪いようにしないからここはあっしに任せなせい」なんて言って仲裁していたが、現在のオバマ政権はそうした仲裁を本気で行う気持ちはない。
理由はオバマ氏が優柔不断な性格なのと、もう一つは中東で何が起こってもアメリカ経済に及ぼす影響がほとんどないからだ。
アメリカはシェールガスとオイルがいくらでも出るから中東から輸入する必要はない。まあ戦争したければやってなさい」という態度だ。

注)アメリカとサウジアラビアの隙間風については以下参照http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/ppp-5.html

  サウジとイランのイスラム社会の戦争は17世紀のヨーロッパの30年戦争に匹敵する宗教戦争になるだろう。
この戦争で両陣営はあらゆる資源を動員して相手を打ち負かそうとするだろうが、30年戦争がそうであったように容易に決着はつくことがない。
その間宗教的情熱にかられた若者がジハードに参戦し、両国から若者や戦闘員がいなくなるまで戦争が続けられ、最後には馬鹿馬鹿しくなって止めるというのが宗教戦争の結末だ。

 宗教戦争を外部から止めようとしても無駄で相手を殺したいという情熱にかられている戦闘員がいる限り戦争は終わらない。だからこうした場合は十分に殺し合いをさせて戦闘員が互いに死滅するまでほっておくのがいい。
他国はこうした宗教戦争に巻き込まれず傍観しているのが一番でなまじ手を突っ込むとひどいやけどをしてしまうから注意がいる。

 

 

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(27.11.17) サウジアラビアの反逆 「原油価格がどうなろうと知ったこっちゃない!!」

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 サウジアラビア
といってもほとんどの日本人はその動向を気にしたことはないのではなかろうか。イランのようにやれホメイニ革命だ、イラン・イラク戦争だ、核開発だといったお騒がせもなく、イラクのようにアメリカにたてついて戦争を仕掛けられることもなく、シリアのように内戦が起こっているわけでない。
いわばとても安定した王国で、アメリカの良きパートナーであり、石油危機が発生すると石油を増産して価格を下げたりするので、なにか中東のビッグ・ブラザーのような存在と私などは思っていた。

 しかしここに来てそうしたサウジアラビアのイメージは大きく変容しつつある。
世界中が驚いたのは石油価格が1バーレル50ドルを割り込み40ドル近くになってもサウジアラビアが減産に応じず、かえって増産したりしていることだ。
かつてのサウジアラビアは減産を一手に引き受けて価格を安定させOPECの盟主としての役割を演じてきたので信じられないような変容だ。
なぜ減産に応じないかの理由を「アメリカのシェールオイルやシェールガスをつぶすため」と言ったのにはさらに驚いた。

 もともとアメリカとサウジには石油と安全保障の密約があり、原油代金はすべてドルで決済することを条件にアメリカはサウジアラビアの安全保障を請け負ってきた。
サウジはスンニ派の盟主だが、ペルシャ湾を挟んでシーア派の盟主イランが存在し、すきあらばサウジアラビアに戦争を仕掛けるとサウジは本気で思っていたし、その場合はサウジ一国ではイランに対抗できないのでどうしてもアメリカの後ろ盾が必要と判断してきた。
イランの人口は約8000万人で一方サウジアラビアの人口は約3000万で、圧倒的に人口が少ないがそれ以上にイランは過去イラクとの戦争で戦争経験は十分だし、一方サウジアラビアの若者はふやけていて国家収入での生活保障が十分なためとても戦士としての資質がない。

注)アメリカとサウジの隙間風については前に詳述してある。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/ppp-5.html

 長い間サウジとアメリカの密約は守られてきたが、オバマ政権になってからほころびが生じた。最大の理由はアメリカが原油の輸出国に変わってきたことで、シェールガスとシェールオイル革命でアメリカの中東依存度は劇的に下がった。
もうサウジの石油は必要ないのだからサウジを軍事的に支援するのもほどほどにしよう
アメリカのサウジ離れが始まった。

 それが誰の目にも明確になったのはイランと安全保障理事国5か国+ドイツとの核協議で、歴史的和解がなされたと7月にアナウンスメントされたが、実際はかなりの妥協の産物だった。
歴史的和解の内容ではどう読んでもイランが将来核開発をすることを停止できそうになく、これにはサウジが完全に切れてしまった。
アメリカはイランが実質的に核保有国になることを認めた。我が国は独自でこのイランの核に対抗しなければならない。わが国はアメリカを頼らない!!

注)核協議の内容は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-9868.html

 サウジはそれまでのアメリカとの協調路線を放棄してロシアや中国に接近し、特にロシアからは最新鋭のミサイルや航空機の購入を図ろうとしている。
アメリカが防衛を放棄する以上、わが国は独自の防衛システムを構築する
いまやサウジの年間の軍事費は9兆円規模でロシアを抜いている。

 サウジアラビアの軍事費がうなぎのぼりに増加したのは隣国イエメンにシーア派政権ができたためで、スンニ派の大統領が追い出されてしまった。
サウジにとってはイエメンはアメリカのキューバのような状況になり、5月以降シーア派のフーシ派に対して空爆を行っている。
しかし戦況は一進一退で、泥沼の様相であり軍事費を削減する余裕はない。

 サウジが減産に応じられない理由の一つがこのイエメン戦争で、軍事費が嵩んでそれどころではないというのが実態だ。
国家予算の9割は原油収入だが原油価格は40ドル近くに低迷しており、国家予算は約半分が歳入欠陥になっている。
IMFの試算ではこのままの状況が続くとサウジの蓄えは5年で枯渇するといわれている。
それでもサウジは減産に応じず、かえって増産することでOPECの足並みを乱している。
うるせい、今はほかの国のことなど考えていられねい。イエメンからシーア派を追い出さないといずれサウジが革命に巻き込まれる。軍事費の増大がなんだ、石油は目いっぱい輸出するぞ!! 原油価格が下がっても俺の知ったこっちゃねい!!」

 
サウジはアメリカの同盟者としての立場を放棄してしゃにむにイエメンに介入しており、そのために減産など夢のまた夢になってしまった。
かくして原油価格はサウジがイエメンに軍事介入している限り低迷しそうになっている。

 

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