(27.11.3) どこまで続くぬかるみぞ!! 旭化成建材の不正杭打ち事件
いったいどこまで拡大するのだろうか。旭化成建材による杭打ちデータ改ざん事件のことである。
旭化成建材が実施した杭打ち件数は過去10年で3040件だそうだが、すでに判明したデータの改ざんは300件程度で、全体の約1割に相当する。
だが、問題なのはこれがすべてとは言えず調査を行えば行うほどデータの改ざん件数が増えそうなことだ。
問題が最初に発覚したのは横浜市のマンションで2005年に計473本の杭打ちをおこなったが、うち6本が強固な地盤に届いておらず、また2本が十分に差し込まれていなかったという。
このことが判明したのは、4棟の集合マンションのうち西棟のマンションが約2cm傾いていることが分かり住民が騒ぎ出したからだ。
調査をした結果上記の手抜き工事があったのだが、さらに70本のデータが他からの転用であることも分かっている。
横浜市のマンションを担当した旭化成建材の職員はこのマンションを含めて41か所の杭打ち作業を行っていたが、うち19件でデータの流用をしていた。
現在旭化成建材は他にもデータの流用がないか調査中だが、判明しただけでも300件の流用があり、流用は組織的に誰もが行っていたということが分かっている。
問題はなぜこのようなデータの流用や、地盤の支持層に届いていない杭打ちが行われたかというと構造的な問題が浮かんでくる。
マンション業界は薄利多売で売上高利益率が約5%程度だというから、スピーディーに建設してさっさと売らないと建設会社の利益が確保できない。
判明した横浜市のマンションの販売は三井不動産レジデンシャルが行い、建設の元受は三井住友建設、そして2次下請けとして杭打ち作業を旭化成建材が担当していた。
データの改ざんを行ったのは旭化成建材だが、この業界の常として期日管理は相当厳しかったと思われる。
「○○日までにすべて杭打ちを完了させろ!!」などと元受の三井住友建設から指示されていたはずだが、現場では思わぬトラブルが日常的に発生する。
たとえば杭の長さが当初予定の深さでは十分でないと気が付いたとしても、新たにさらに長い杭を調達して再度杭打ちをする時間的余裕があったかどうかだ。
「ええーい、時間がない。データをとって整理する時間などないから、いつものように適当にデータを転用しよう。まあ、少々杭の長さが足らなかったとしてもマンションが傾くことはないだろう・・・・・」
もし本当に西棟が傾かなかったらこの担当者は警察から事情を聞かれることはなかったはずだが、このマンションは2cmあまり傾いてきて、さらに傾きが増大する危険があった。
そのため調査をし直してみたら何と杭打ちがいい加減で西棟の下はスカスカだったことが判明した。
データの流用があったとしても杭が支持層に届いているならば問題はないが、横浜市のマンションのようにそれが原因でマンションが傾き始めてはもう後がない。
販売元の三井不動産レジデンシャルは全4棟の住民にすべて建て替えるのでこのマンションから出たい人には新築分譲想定価格で引き取りをすると釈明している。
4棟で705世帯の住民が住んでいるので、たとえばその想定価格が5000万円とすると,705戸全員が出ると仮定するとそれだけで約350億円の費用がかかることになる。
当社の第一4半期(4月~6月)の最終利益は350億円程度だから四半期分の利益が飛んでしまうことになる。
VWの4兆円に比較すればまだまだ金額は少ないが、三井不動産レジデンシャルにとっては痛い出費だ。
さらに今後発生する問題としてこの損失をどこの会社が実際にどの程度負担するかの問題が残っている。
三井住友建設は管理責任が問われるし、旭化成建材は実際に虚偽データを作成し、不正な杭打ちを実施した責任が問われる。
さらに旭化成建材はこの横浜のマンションだけでなく全国津々浦々に及ぶデータのねつ造が判明しているから、こちらの対応も必要になる。
今後旭化成建材に杭打ち作業を依頼する建設会社はないだろうから、旭化成建材がこのまま業務を続けることは不可能なはずだ。
親会社の旭化成としては旭化成建材に代わって今後発生するデータの改ざん問題に対処せざるを得ず、厳しい経営環境が続く。
旭化成にとっては思わぬところから経営の根幹を揺るがす問題が発生したことになる。
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