(28.5.31) 総合商社はなぜ資源戦略を間違えたのか!! 中国経済の読み間違い
資源商社といわれた三菱商事と三井物産が16年3月期の連結決算で赤字に転落した。
三菱商事は1500億円の赤字、三井物産は700億円の赤字だそうだ。
銅や鉄鉱石の資源価格が急落し、投資した案件から収益確保が不可能になったため減損処理を実施した結果である。
三菱商事の減損額は4260億円、一方三井物産は3500億円の減損処理を実施するという。
三菱商事や三井物産ほどではないものの丸紅や住友商事も減損を余儀なくされて、商社全体では約1兆円になるという。昨年度もほぼ同額の減損処理を行っていたので、毎年1兆円をどぶに捨てているようなものだ。
資源価格は総崩れでピーク時から比較すると半値から4分の1程度まで価格は低下しているので、どのような鉱山への投資であっても収益を上げることなど全く不可能になっている。
資源価格が14年度から明らかに低下局面に入った のは、中国経済がピークアウトし、それ以降中国経済は坂道を転がるサッカーボールのような状況になってしまったからだ。
中国が購入しなければあとは追加的購入者はなくなり、現状維持か購入額の縮小を図る国ばかりだから資源価格は急低下するのは致し方ない。
もはや先進国経済はこれ以上成長が不可能な段階になっており、さらに資源については資源の効率的利用を心がけており、たとえGDP がほぼ一定でも資源の必要量は低下する。
節約や効率など全く無視してただ生産高のみ競っていたのは中国だが、その中国の経済成長も終わってしまったのでこの馬鹿馬鹿しいほどの爆買いをする需要者が市場から消えてしまった。
三菱商事や三井物産には気の毒だが、中国経済のピークアウトを読み間違った以上、多額の減損処理に追い込まれるのはやむおえない。
今や中国では製造業はすべてといっていいほど赤字経営に追い込まれており、これを国有銀行が懸命に支えている。
しかし国有銀行はこの赤字企業を支えるという仕事以外にも信じられないような多額の不動産関連融資を実施しており、この様は1990年初頭の日本の金融機関を彷彿とさせる。
中国という予想外の行動をするプレーヤーの出現で経済の状況を読み間違ったわけだが、それもすべて自己責任だから無駄な投資をした以上減損処理をするのは当然だ。
日本や先進諸国の企業はこのような減損処理をして経営実態を正確に把握しようとするが、一方中国企業は絶対といっていいほど減損処理などしない。そのようなことをすれば責任問題になって、自身は共産党の序列を下げられてしまう。
だから中国ではすべての国有企業が健全な経営を行っていることになっているのだが、それを信じる方が阿保なので、「まだいける。中国が資源をまだまだ爆買いする」などと予想して経営したとすればそちらの方が問題なのだ。
今だに中国は7%前後の成長をしていることになっていて、IMFなどは愚かにも中国の成長率を6.3%程度と予想しているが、中国の公表数字を基に予測するすべての予測は間違う。
総合商社には相応の調査機関があるのだから、中国経済の正しい分析をして間違っても無駄な資源投資などしないようにすればいいので、そうした意味では中国の経済実態を最もよく知っている伊藤忠が資源投資を止めていたのは賢明だといえるだろう(ただし中国の総合商社に6000億円の投資をしたのは明らかに間違いだ)。
今や中国という統計数字がすべてでたらめな国の経済をいかに正確に把握できるか否かが総合商社の命運を決するといっていい。
せめて山崎経済研究所の山崎所長のブログを読んでいたらこうまで無様な結果にはならなかったと思うが、すべてはあとの祭りだ。
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