(28.1.20) 大型スキーバスの事故の背後にひどい運転手不足が存在している
1月16日の深夜に軽井沢町で発生した大型スキーバスの転落事故には本当に驚いた。
運転手を含めて15名の死者が出たが、乗客は全員が大学生だったのとその死者の多さにである。
夜間の格安スキーバスの乗客は、夜行でも平気で資金面ではあまり裕福とは言えない大学生が主体になることは分かったが、それにしても痛ましい事故だ。
もしこの被害者が私のような老人であれば「まあ、山崎さんも事故にあって気の毒だが、ほとんど神様からお呼ばれになる年だから、運命と思ってあきらめがつくだろう」などと言われそうだが、将来有為の若者の場合は慰めようがない。
事故現場の映像をテレビで何回も見たがどう見ても事故が起こるような場所には見えなかった。下りであったがそれほどの急こう配とは言えず、またカーブも緩やかなカーブだ。
「どうしてこんな場所で事故が発生したのだろうか・・・・・・・」不思議な気持ちがする。
報道によると事故を起こした運転手は大型バスの運転に不慣れで、自身も大型バスの運転は苦手だと採用面接で述べていたという。
この運転手が採用になったのはほんの1か月前の15年12月で、その後高速道路を中心に大型バスの運転を3回ほど経験し今回は4回目の経験だったという。
今回事故が発生したのはバイパスの一般道だが、この運転手が高速道路以外で運転したのは今回が初めてらしい。
大型バスの運転では独特の技術がいるらしく、友達でかつて大型トレーラーを運転していた人から聞いた話では「間違っても急ハンドルを切ると、おしりが振れて制御不能になる」のだといっていた。
専門家の話では夜間走行をしているとライトが当たる範囲しか見えないため視野が狭くなり、通常のカーブでもガードレールが急に現れるため急カーブに見えるのだという。
そのためなれていない運転手は急ハンドルをきってしまい、バスのお尻が振れだして制御不能に陥ってしまうのだそうだ。
この専門家はその可能性が一番高いといっていた。
問題はなぜそのような経験不足の運転手が大型バスを運転しているかというと、運転手が決定的に足らないからである。
最近までバス業界は構造的不況業種で、しかも平成12年の規制緩和で5台以上の大型バスを持っていればこの業界に参入できたので大挙して業者が参入していた。
一方旅行客は低迷していたので、3年ぐらい前まではほとんど開店休業といった状況だった。
それが劇的に変化し一気にバス需要が拡大したのは外国人観光客がこの2年で倍増したからである。
外国人観光客の足はもっぱら観光バスだからこの業界もその特需に沸くようになった。
しかしここにひどいアンマッチが起こったのがバスの運転手不足である。バス業界が低迷していたあいだに若い新規の運転手がほとんど育たなかったから、運転手は高齢化して人数も激減していた。
過疎地帯の農村のような状況だったのが、そこに観光特需が発生したため運転手の奪い合いになってしまった。今は免許さえ持っていればたとえ経験がなくてもバス会社は運転手として採用してくれる。
「誰でもいいい、年をとっていてもいい、免許さえあればいい!!!」
今回事故を起こした運転手は65歳で私とさほど変わらない高齢者だし、また大型バスの運転は未経験だった。
大型バス特有の運転技術を身に着けないまま一般道を走行し、判断ミスで急ハンドルを切って蛇行し事故を起こしたと思われる。
日本には15年度約2000万人の外国人観光客が押し寄せて、一種の観光ブームになっているが、この運転手不足問題は深刻な問題になっている。
もし外国人観光客を乗せたバスがこうした事故を起こすといっぺんに観光ブームが収束してしまう可能性があり、運転手の育成を含めて国の適切な対応がないと、観光立国の夢が潰えてしまうだろう。
だがそのためには大型バスの運転手の待遇改善がぜひとも必要で、重労働で低賃金の今のままではとても若者が参入するような職業とは言えない状況だ。
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