(31.2.22) イギリスの大実験 ブレグジットは大失敗
イギリスのEUからの離脱(ブレグジット)は完全な失敗に終わりそうだ。
メイ首相はタダ何もできず右往左往するばかりだし、離脱賛成派も離脱反対派も文句を言うだけで有効な妥協点を見出すことができない。
イギリス政治は漂流して一体どこに行きつくのかわからなくなってきた。
このまま進めば合意なき離脱となって、たとえて言えば夫婦で合意なく女房が家を出て言ってしまうようなものだ。あとには親父と子供が残され食事や洗濯もどうしていいかわからず、子供が腹をすかして泣き叫んでいても、親父もふてくされて家を飛び出てやけ酒を飲んでいるようなものだ。
ここにきてとうとうギリスに工場を持つ製造業も愛想をつかしてイギリスから脱出を始めた。ホンダ、日産、フォードといった自動車メーカーはこのままでは生産ラインを維持することもできないため、日本や欧州に生産拠点を移し始めた。
またパナソニックやソニーも欧州の本社機能をオランダに移すという。
「イギリスにはあきれ返った。かってにブレグジットをしてくれ。我々もイギリスから撤退する」
難破する船からネズミが逃げ出すのとよく似ている。
イギリスではGDPの多くを金融業が稼いでいる。狭義の金融業で約10%、広義の金融関連業まで含めると約30%といわれている。
先進国の中で金融関連業のウェイトが高い順に並べるとルクセンブルグ、イスラエル、イギリスの順でアメリカより金融関連産業のウェイトが高い。
そのためイギリス人は金融業だけで食っていけるという幻想を抱いており、それがブレグジットにつながった。
確かに収益という点では金融業こそがイギリスの要だが、一方働く側から見ると金融業は主要な職場ではない。シティを闊歩しているのはオックスフォードやケンブリッジを卒業した一部エリートで多くの労働者はこうした職場からは排除され製造業や小売業といった職場で生活をしている。
なかでも製造業は自動車産業の労働者がそうであるように高卒や有名大以外の学生にとっては非常に恵まれた職場になってきた。
労働者の数でいえば金融業の従事者は非常に少ないのになぜブレグジットが支持されたかというと難民問題がイギリスの一般市民の危機感に火をつけたからだ。
「危ない、このまま国境を開けているとドイツに流入した難民が大挙してイギリスに移ってくる。メルケルはあほだから国境を開けたままだ。これじゃイギリスはシリア人やアフリカの難民によって占拠されるし、その中にはISメンバーだっているじゃないか・・・・・・」
だが現実に起こったのは難民の流入でなく製造業の脱出になってしまった。イギリスから職場が次々に消えようとしている。
ここにきてようやくブレグジットのマイナス面が明らかになってきた。
「早まって離脱に賛成したが、その結果は失業か・・・・・・・・」
はたしてイギリスは合意なき離脱をこの3月に行うのだろうか。行えばその時点で連合王国は消滅する。スコットランドと北アイルランドが連合王国から離脱しEUに残留を望むことは確実だからだ。
他の選択肢は離脱を延期することで、最終的にはもう一度国民投票を実施することだろう。そうすれば今度は残留派が勝利する公算が高い。
イギリスの離脱実験はただ大騒ぎをしただけで結局は大失敗に終わることになるのだろう。
最近のコメント