(28.12.4) 21世紀は右派の時代 オーストリアで右派旋風が吹きすさぶ
20世紀後半は左派の時代だったが、21世紀に入り右派の時代に突入したようだ。
アメリカではトランプ氏がアメリカ第一主義を唱え、国外からの移民にNOを唱えて大統領に就任したが、今度はオーストリアで右派政党が勝利しそうになっている。
オーストリアはEUの一員で人口は約900万人だから日本でいえば神奈川県程度の小国だが、第一次世界大戦前まではオーストリア・ハンガリー帝国としてヨーロッパに君臨していた由緒ある国だ。
今そこで大統領選挙をめぐって右派と左派が鋭く対立し世論調査ではほぼ拮抗しているが、アメリカの大統領選挙のように右派に追い風が吹いている。
右派の大統領候補は自由党のホーファー氏でシリアからの移民の受け入れに反対し、EUからの離脱も辞さないという態度だ。
オーストリアはドイツなどと違い国内に有力な企業を要していないため、EU拡大のメリットがほとんどなくGDP成長率は1%以下が続き国内経済は低迷し失業者が増大していた。
そこにシリア難民が押し寄せたためにオーストリアのブルーカラーが切れてしまった。
「なんだい、政府はシリア難民ばかりに手厚い援助をしてオーストリアの俺たちは失業して路上生活か。あれもこれもEU なんかに入ってドイツのメルケルの指示に従うからこうなるんだ。EUを離脱してオーストリア人だけの国家を再生しよう」
ホーファー氏のアジ演説は失業者の心をとらえ、シリア人に対する敵意がむき出しになっている。
「くそったれのシリア人やイスラム教徒は出ていけ。ここはキリスト教徒の土地だ」
高等教育を受けホワイトカラーとなって裕福な生活をしているオーストリア人はいまだに緑の党のベレン氏を支持しているが、中等教育だけでブルーカラーにしかなれず、その職場を外国人に奪われている労働者はホーファー支持一色になっている。
まさに欧州版トランプ現象で、これは隣国のイタリアでも同時共鳴し、こちらは憲法改正の国民投票を行うのだが、国民投票そのものよりもレンツィ左派政権への信任投票になっている。
「なんで我が国にアフリカのアラブ人が海を渡って押し寄せてくるんだ。あんな奴らはほっておけば海の藻屑になるんだから救助などするな。死にたい奴らは勝手に死なせろ。人道主義などぶっ潰せ」
左派政権の一枚看板は人道主義で弱いものの味方だが、最も弱いものが自国民ではなく押し寄せる中東やアフリカからの難民になってその思想的基礎が揺らいでいる。
「助けるのは移民かそれとも自国民の最貧層か」
人道主義の立場からは移民の救済が優先されるが、それでは自国の最貧層がおさまらない。
「俺たちは失業し路頭で迷っているのにあいつらはホテル暮らしで何もしないでも給付金で暮らしていける。俺たちにもシリア難民と同じ待遇を保障しろ」
オーストリアでイタリアで右派勢力が台頭し、そしてその影響が欧州全土に及ぼそうとしている。
「EUなど何の役にも立たない。俺たちは俺たちだけの生活を守って外国人を追い出そう」
アメリカでトランプ氏が勝利し、その余波でヨーロッパでも右派政権の誕生が目の前に迫っている。
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