(28.11.27) さらに混迷を深めた豊洲移転問題。 誰を処分しても問題は解決しない
前にも記載したが築地市場の豊洲への移転問題は半永久的に不可能になりつつある。
小池知事はこの問題で議会に対してうその証言を繰り返してきた都の幹部(市場長、部長クラス)18名に、最大減給5分の1、期間6か月の厳しい処分を言い渡した。
現役の職員12名はこの処分を受け入れるとのことだが、退職者6名のうちには不満を口にする者がいるという。
豊洲問題の本質はこの場所が東京ガスの跡地でいわば工場跡地だったことにある。
調査をすると有害物質が基準を上回る水準ででてきて、特にベンゼンは局地的に国の基準の43000倍という高濃度だった。
この段階で本来は跡地の使用をあきらめ、夢の島がそうであったように公園にするのが最も最適な案だった。
しかしそうはしないで強引に豊洲に移転しようとしたことからボタンの掛け違いが始まっている。
専門家会議に諮問して4.5mの盛土をするなら施設を建設して良いということになった。
専門家会議はすべての土地に4.5mの盛土をするように諮問したのだが、実際の建設設計の段階になるとこれはとても不可能な提案であることが判明した。
現在の大規模建設で地下が使用できないような建物はない。どの建物でも地下は最も重要なインフラ部分で、電源設備、空調設備、ディスクやコンピュータの設置場所、倉庫等に使用されており、地上より地下のほうが利用空間として大きい建設物はいくらでもある。
だから設計段階で地下空間の利用を東京都は専門家会議に再諮問しなければならなかったが、実際はそうはせず事務方の秘密事項として建設を進めた。
なぜ再諮問しなかったのかの理由は明確で、そうすれば再び地下を利用してよいかの環境アセスメントが必要になりほぼ1年間は工事に取り掛かれないからだ。
さらに新たな案が出されればそれへの対応が必要になり、いつまでたっても豊洲への移転ができなくなる。
「ここは黙ってやってしまおう。地下が利用できない建物なんてエンジンのないジェット機のようなものだ。専門家会議は盛土で凝り固まっているからこれ以外に手はない」
石原都知事や猪瀬都知事の時代は豊洲への移転に積極的だったから、たとえばれても「ここは地下から再び有害物質が出た場合の処理施設です」といえば信じたふりをしてくれると踏んでいた。
「大丈夫だ。石原さんも猪瀬さんも分かってくれるはずだ。東京オリンピックもあるし築地市場の下に高速道路の整備もしなければならないから黙認するだろう」
しかし思わぬことで知事が次々に代わり小池知事になって様相が一変した。
小池氏は自身の権力を見せつけるために豊洲問題に待ったをかけたのだが、そのために過去のすべての魑魅魍魎の妖怪が出現してしまった。
工場跡地に市場を移設することの無謀さと、それを回避すべく議会にも都民にも無断で実施してきた地下空間の利用が白日の下にさらされてしまったからだ。
今回の18人の処分により問題はさらに深刻化する。今回の処分決定でもだれが地下空間を設置する決定をしたのかあいまいなままだったからだ。それは当然で黙って実施する案件に正式な決定記録などあるはずがない。
CIAのミッション・インポッシブルの世界だから証拠はすべて破棄される。
「例によって、君、もしくは君のメンバーが捕えられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しない。成功を祈る。なお、このメッセージは5秒後に自動的に消滅する」世界なのだ。
この問題は当初からボタンの掛け違いがあり、地下空間のない巨大建設などありえないのでそれを黙認という形で建設したのだが、ばれてしまえばこのミッションは終わりだ。
いつまでたっても誰が決定したかという問題が再提起され、もともと工場跡地だから有害物質問題は解決できず、半永久的に議論が空回りしてしまう。
この建設に5900億円の巨費を投じたが一瞬のうちに海の藻屑になってしまった。
小池知事は自身でほじくりだしたこの魔物の処理をすることは不可能だろうから、だれも利用しない21世紀の市場という施設が豊洲に幽霊のごとく存在し続けることになる。
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