(30.2.1) 相も変わらぬ日銀の金融緩和策 消費者物価2%は絶対に達成できない。
日本銀行の黒田総裁が「消費者物価が年率2%まで上昇しない限り、金融緩和はやめない」と明言しているが、これは半永久的に金融緩和を継続するといっていることに等しい。
日本の消費者物価はバブル崩壊の1990年ごろからほとんど上昇をせず、黒田氏が日銀総裁になってからの5年間でも1%前後の推移で来ている。
卸売物価はもう少しドラスティックで天然資源価格の上昇下降で推移するが、こちらも平均すればほぼ0%前後だ。
黒田日銀が毎年80兆円規模で資金を市場にばらまき、ゼロ金利政策を継続してもさっぱり消費者物価も卸売物価も上昇しない。
原因はいくら金融緩和をしてもこうした資金は消費財市場にも生産財市場にも向かわず、もっぱら株式や都市のマンションや仮想通貨の市場に流れているからで、実際こうした投機市場での物価の値上がりは著しい。
黒田日銀総裁が就任した5年前は株価は9000円前後だったが、今では24000円前後になり、年率換算で約50%ずつ上昇したことになる。
東京都心部マンション価格の5年前は平均で3500万円程度だったものがいまは6000万円前後だから、こちらも年率で35%程度の値上がりだ。
仮想通貨についてはほぼ天文学的数字になっている。
消費者物価が上昇しないのは日本の人口が減少に転じなおかつ老人ばかりになっているからで、これでは消費財が売れるはずがない。
また卸売物価については日本の多くの輸出産業が海外に進出してしまっているため、生産財の需要が低迷しているからで、こちらも工場減(人口減と同様)の影響といえる。
投機財物価(この概念は山崎経済研究所の山崎所長が提唱しているもの)は黒田日銀総裁の金融緩和の恩恵を受けて、とどまるところを知らないくらい上昇しているのだから、黒田総裁の金融政策は(実際は)大成功といっていい。
最もこうした投機財市場で恩恵を受けている人は、証券会社や投資家といった一部の人に限られるから、富める人と貧乏人のひどい富の偏在が発生している。
日本よりこの傾向が強いアメリカでは1%の人が99%富を独占しているといわれているが、投機経済の下では必ずそうした傾向が現れる。
簡単に言えば先進国の経済成長とは投機部門の経済成長で、それ以外の分野の成長は日本ではバブル崩壊以降完全に止まってしまった。
この投機経済についての評価は「それでも成長しているのだからいいではないか」という意見と「そんなばかばかしいことで成長を演出するのはもうやめるべきだ」との意見に分かれている。
私は安倍総理を応援しているので、このばかばかしいほどの投機経済政策に目をつぶってきたが、しかしこれは麻薬と同じで切れると禁断症状がだんだんと激しくなる。
アメリカもEUもこの政策のマイナス面に気が付き、金融緩和策を止めようとしているが、一人黒田日銀だけは止めようとしない。
もはや「政策目標を消費者物価の2%上昇に置く」こと自体、金融緩和策の政策目標としては不適切で、山崎所長の言う投機財物価に置けば、すでに効果は十分に表れているのだから、この程度で金融緩和策を停止しないといけない。
そうしないと富の偏在問題が表面化して国内世論が分裂することは間違いないからだ。
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