(28.2.27) 死ぬのはサウジかアメリカのシェール産業か!! サウジとの真昼の決闘
ますますひどい状況になってきた。シェールガス・オイル産業のことである。ほぼ2年ほど前までは我が世の春を謳歌していて、ほればいくらでも収益を上げられていたが14年夏を境に暗転し始めた。
中国経済がピークを打ち、原油をはじめあらゆる資源に対する需要が低迷し始め価格が急降下したからだ。
それでも14年度はアメリカの大手シェールガス・オイル7社の決算を見ると、総計で1.3兆円の収益を上げていたが、15年にはいると一気に業況が悪化し4兆円の赤字に転落した。
稼働しているアメリカ全体のリグ数はピークの約1500から約400にと4分の1に激減し不採算のリグの稼働は停止されたが、それでも生産量はピーク時の950万バーレルからわずかに50万バーレル少なくなった900万バーレルの水準を維持している。
リグ数が激減しているのに生産量がほとんど減らないのは、残ったリグは最も生産効率のいいリグで、しかも開発会社は多くの借金をしているためできる限り生産をして返済資金に充てようとしているからだ。
しかしいくら頑張っても30ドル前後の価格では50ドル前後がコストラインといわれているシェールガス・オイル産業は赤字を累積するほか手がなくなっている。
「俺たちが死ぬか、サウジが悲鳴を上げて減産に乗り出すかデスマッチだ!!!」
注)アメリカのシェール業界が減産に乗り出せない理由は前に詳細に記載してある。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat52342835/index.html
サウジは原油の価格維持のバランサーといわれていて、価格が下がればかつては減産をして価格を維持していたが、今なぜ減産に乗り出さないかは戦争経済に突入して金がいくらあっても足らないからだ。
それにこれを機会にアメリカのシェールガス・オイル産業を崩壊させようとしている。
従来サウジとアメリカは蜜月関係にあったがオバマ大統領になってからすっかり疎遠になり現在は敵対関係にある。
注)サウジアラビアが減産に乗り出せない実情は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/pppp-4.html
オバマ大統領の戦略は中東からの撤退でそのためにはシーア派の盟主イランとの関係を改善しておかなければ撤退することもできない。
アメリカがイランの核開発を実質認める内容で手打ちをしたのはそのためだが、これにはスンニ派の盟主のサウジとイランと敵対関係にあったイスラエルが切れてしまった。
「そうかい、アメリカがサウジやイスラエルを見捨てるというなら、こっちにも考えがある!!!」
そのサウジの回答がシェールガス・オイル産業つぶしのデスマッチということだ。
アメリカとしては50兆円規模の資金を投下して育て上げ、21世紀の主要産業になると期待していたシェールガス・オイル産業に急ストップがかかってしまった。アメリカ経済はこのところ順調だったが、ここに来て暗雲がたち込めているのはこの産業が崩壊するかもしれないからだ。
先にIEA(国際エネルギー機構)は16年、17年を通じて価格の上昇はないとの判断を下したが、そうなると30ドル前後で原油価格が推移することになる。
この価格で収益を上げることのできるシェールガス・オイル企業はないから、後二年もこの価格が続けば完全にアメリカのシェール産業が崩壊してしまうだろう。
だが今のところどちらも妥協しそうにない。はたしてサウジとのデスマッチはこのまま続くのだろうか。
「よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し」鴨長明の世界になろうとしている。
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