(24.9.8) 野村HDの中途半端な経営戦略 これでは再びのリストラは免れない
(ネパールのりんご。日本のりんごより小ぶりで味は素朴)
経営危機に陥っている野村HDの永井CEO(最高経営責任者)が、9月6日に経営戦略説明会を開催して向こう2年間で、10億ドル(約800億円)の経費削減策を実施し、アジアに経営資源を集中する選択をとることで16年3期までに税引き前で2500億円の収益を上げる計画を発表した。
注)12年3期の野村HDの税引き前利益は850億円だからその3倍の収益構造にすると言う計画。
野村HDが現在のような経営危機に陥った最大の原因はリーマン・ブラザーズの西欧・アジア部門の買収が大失敗に終ったからである。
野村HDの海外部門の収支は散々で、欧州、米州、アジアとも赤字だが、特に欧州部門が12年3期の税引き前利益で約900億円の赤字で、これでは国内でインサイダー取引を繰り返してアコギに稼いでも追いつかない。
注)野村證券のアコギな商法は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/24610-87f1.html
格付け会社からは完全に見放されてしまい、野村HDの長期格付はイタリアやスペイン並みで、社債やCPで資金調達しようにも誰も購入者は現れそうにない(ムーディーズの格付けはBaa2 でほとんど投機的)。
本来は西欧勢がアジアから撤退しているのでアジア進出の好機なのだが、野村には反転攻勢に転ずる資金力がまったくないためただただリストラにまい進するしか手がなくなっている。
思えば08年秋に倒産したリーマン・ブラザーズの西欧・アジア部門を買収したときが野村が最も輝いていたときだったが、皮肉にもこのときを境に野村の経営は奈落の底に落ち始めた。
今回の説明会で永井CEOは報道陣の質問に答えて「リーマンの事業買収は成功だったとはいえないが、当時の経営判断は間違っていなかった」と回答している。
「経営判断が正しかったために野村HDの経営は追い詰められた」と言うなんとも訳の分からない回答だが、後半は当時の渡辺CEOに対するリップサービスであり、野村の経営者が正式にリーマンの買収の失敗を認めた発言だった。
だが私からするとこの野村のCEOの発言はあまりに遅い現状認識で、私はすでに09年1月30日の買収後半年の段階で西欧部門の買収が失敗だったことを明確に分析している。
それは少しでも経済が分かり先が読めれば誰にでも分かる理屈で、同じような経済構造を持つ日本、アメリカのバブルが崩壊すれば次は西欧なのは決まっている。
注)09.1.30付けの「野村HDのリーマン・ブラザーズの買収は失敗だった」の記事を参照。当時の野村CEOがこのブログを読まなかったことが現在の経営危機の最大の原因だと冗談を言っておこう。
野村グループには野村総研という日本で屈指のシンクタンクがついているにもかかわらず、なぜ私でも分かったこうした西洋の崩壊を予想できなかったのだろうかと不思議でならない。
おそらく野村本体と総研間の情報交流はないか、あっても表面的なものだったのだろう。
注)私の勤めていた金融機関でも総研の分析は刺身のツマだった。総研の主任研究員が「どうせ役員はまともに分析結果を読まない」と嘆いていたものだ。
さらに今回のリストラ策について言及すると、2年間で800億の経費節減ではとても追いつかないだろう。
リーマンショック前約6000億~7000億だった経費が現在1兆円規模に膨らんでいるが、増加分の3000億~4000億はリーマンの元社員に対する人件費やリーマン関連のシステム経費に相当する。
注)リーマンの職員の給与水準は投資銀行の中でも特に高く、リーマン日本法人の職員の平均給与は約4000万円だった。これを野村HDは全額保障することで買収した。
これだけの経費をかけて毎年1000億規模の赤字を垂れ流す西欧部門を置いておく理由が分からない。
今回の節減金額800億の45%が西欧部門だから、たかだか360億円で焼け石に水だ。
はっきりしていることは資源をアジアに集中してまだライセンスを持っていないインドや中国に進出し、一方で西欧から撤退するようなドラスティックな経営資源の選択と集中策をとらない限り野村HDの復活は無理だろう。
かつて日本を代表していた証券会社がこれほどの苦難に陥ったのはすべて西欧経済のその後を見誤った経営判断によると言えそうだ。
なお、野村HDの現状の経営状況については以下の記事に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-ac4d.html
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