(29.6.20) フランスで20世紀の枠組みが崩壊した。左派の大凋落
またひとつ20世紀の枠組みが崩壊した。フランスの総選挙でマクロン大統領が率いるマクロン新党が過半数を大幅に越え、一方それまでの政権政党だった社会党が惨敗したからだ。
フランスでは長い間中道右派の共和党と中道左派の社会党が交互に政権を取っていたがオランド前大統領の社会党が283議席から45議席に激減し、共和党は137議席とかろうじて命脈を保ったが社会党は事実上崩壊した。
日本でいえば20世紀の政党だった日本社会党の大凋落に匹敵する。
前政権のオランド大統領は、あいもかわらない労働者保護政策をとっていたので現有の労働者にとってはまことにありがたい政権だったが、新規に労働市場に参入する若者にとってはこれほどつらい政権はなかった。
まず職場がなく若者だけに限って言えば失業率は25%を超えてしまい、さらに不況になると馘首の順番は新たに労働市場に参入したものからだからまず若者が馘首される。
最も失業手当は手厚いので働くより失業している方が楽なので、「なら楽しく失業して居よう」ということになり全く活力のない社会になってしまった。
簡単に言えば年寄りの労働者だけが保護され若者は仕方なく遊んでいるといった社会になってしまった。
一方でドイツが労働改革に成功して活力ある社会になっていたのに対し、フランスは病める病人でありはっきり言えばドイツに食わしてもらっている誇りだけは高い貴婦人といった風情だった。
原子力や航空機産業や宇宙産業やTGV(フランス新幹線)ような突出した産業構造を持ってはいるが、全体としては工業は低迷し、一方イギリスのような金融業もなくさかんなのは観光業だけといったスペイン並みの国家に凋落しつつあった。
マクロン氏はこうした状況下で、社会党政権が推進してきた労働者保護政策を取りやめてドイツ並みの産業構造の転換を図るとしたものだから、若者を中心に支持を得て地滑り的な勝利を得たものだ。もっとも投票率は42%だったからほとんどの人は態度を保留したことになる。
「よくわからんがマクロンのすることに今は反対するのはよそう」というところだろう。
21世紀に入り先進資本主義国で次々と大乱が起こっている。もっとも大きな大乱はアメリカのトランプ政権で20世紀を通じて基本思想だったグローバリズムから撤退しアメリカ一国主義を唱え、TPPや地球温暖化対策や核廃絶等の世界のあらゆる枠組みから離脱している。
イギリスもEU に見切りをつけてEUと離脱交渉を始めるが、国内は離脱派と残留派の勢力が拮抗しているため選挙や国民投票を行うたびに揺れ動き結局どっちつかずの宙ぶらりんの状況に陥っている。
先進資本主義国の中でなお20世紀的な枠組みを堅持できているのはドイツのメルケル政権と日本の安倍政権だけであり、グローバリズムを推進しようとしているのはこの2国になってしまった。
フランスの20世紀からの離脱によってフランス経済がよみがえるとは思われないが、少なくとも左派と右派の対立はなくなり、特に左派が大凋落したことだけは確かだ。
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