(24.3.1) なぜ日の丸半導体は撃墜されたのか? エルピーダの会社更生法申請
日の丸半導体メーカーのエルピーダメモリが倒産した。
普通の人はエルピーダと聞いてもなじみがないが、NECと日立と三菱電気と言う日本のトップ企業が連合しDRAM(ディーラムと読む)の市場奪回を狙った会社だ。しかし、韓国のサムスンの前に会社更生法を申請し、あえなく倒産してしまった。
負債総額は約4480億円、うち社債は1385億円だという。リーマンショック後のDRAMの供給過剰で急速に業績が悪化して、09年6月には政策投資銀行を通じて政府資金300億円の導入を図ったが、この程度ではすずめの涙だったようだ。
エルピーダが今回会社更生法を申請したのは、この政府資金の返済と金融機関への770億円の返済が迫ったものの、その資金手当ができなかったからである。
かつて日本の半導体のシェアは圧倒的で一時は世界の約80%を占めており、NECがいまのサムスンのように世界を席巻した時代もあった。
その地位が脅かされたのは85年のプラザ合意後の円高に加え、日本の半導体メーカーが大型汎用コンピュータの半導体の生産にこだわり、95年のウィンドウズ95の成功によるパソコン市場の急成長と言う時代の流れを読みそこなったことによる。
その頃の状況は良く覚えている。私は当時システム部門にいたが使用されていたコンピュータはNECや富士通やIBMの汎用コンピュータで、一方ユーザが導入していたパソコンを馬鹿にしていたものだ。
「あんなものはおもちゃで、まともな仕事に利用できるわけがない」
一般に半導体といっても3種類あって、DRAMとフラッシュメモリとシステムLSIに分かれる。
このうちDRAMといわれているものはパソコンのメモリーに使用されているもので、見ると黒いムカデのような格好をしておりかつては非常に高価なものだった。
しかしDRAMの構造が単純なのと集積技術が向上したためあれよあれよと言う間に価格が低下し、今は一体どこまで低下するのか分からないような状況になっている。
注)たとえば現在主流の2GbitのDRAMは昨年前半は約2ドルだったが、後半には約1ドルになり半値になってしまった。
日本の場合はこの価格低下に加えて円高が追い討ちをかけている。
このためDRAM部門はどこの企業も大赤字で特にエルピーダの様なDRAM専業企業は他の製品を持たないためほとんど生き残ることができなくなってしまった。
世界のDRAMシェアは韓国のサムスンが約5割、同じく韓国のハイニックスが約2割、そして日本のエルピーダが約1割だが、この中でDRAM専業メーカーはエルピーダだけだ。
注)サムスンは半導体以外に携帯電話等のウェイトが大きい。またハイニックスはDRAM以外にフラッシュメモリーを生産している。
会社更生法を申請し4500億の債務をチャラにしたとしてもDRAM専用メーカーとしてのエルピーダの未来は暗い。
コスト競争ではとてもサムスンに対抗できないので、安価なパソコン用DRAMから撤退してスマートフォンやタブレット型端末のDRAM生産に生産を移すことや、フラッシュメモリーの生産会社東芝と合併して、DRAM専業メーカーからの脱皮を図ることが検討されているが、その程度ではとても再生できそうにない。
一番大きな問題は日本に工場がある限り円高の影響が避けられず、ライバルの韓国企業がウォン安のメッリトを生かして世界市場を席巻することを阻止できない。
注)リーマン・ショック後ウォンは円に対して約4割程度減価しているので、その分生産性の向上で対抗しなければならないが、実際はサムスンのほうが生産性が高い。
世界シェア4位のアメリカのメーカーとの合併も検討しているが、これでは弱者連合に過ぎない。
エルピーダの坂本社長が会見で「シェアが30%程度ないと生き残ることが難しい」と述べていたが、30%確保するには韓国のハイニックスの軍門にくだり、その連合体としてサムスンに対抗するぐらいだろう。
経済産業省はエルピーダを救うことに及び腰だ。政府資金300億ではまったく効果がなかったが、それならいくらあれば救えるのか見当もつかないからだ。
「DRAMを購入するなら韓国から購入すればいいのではないか・・・・」と言うのが経済産業省の本音だろう。
もはやパソコン用DRAMはサムスンの一人勝ちでエルピーダの未来はない。
スマートフォンやタブレット型端末のDRAMの市場は急拡大するが、ここもサムスンがいくらでも設備投資を増やして増産体制を整えている。
円高が続く限り韓国製品の安値攻勢は続き、DRAMをいくら生産しても無駄ではないかと言う状況になってきている。
なお韓国経済の現状については以下にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat44234699/index.html
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