(30.11.12) 原油価格の乱高下 長期的には価格下落のはずだが・・・・
私のように投機のセンスが皆無なものにとって最近の原油価格の推移は不思議そのものだ。
今年に入ってWTIの原油価格が70ドル(バーレル)をはるかに越して76ドルあたりまで行ったときは不思議でならなかった。
常識ではこうした高価格になると損益分岐点が60ドルと言われているアメリカのシェールオイル産業が増産を開始し、瞬く間に60ドル程度まで下落するはずだったが、いつまでたっても下落しなかった。
「これはアメリカのイラン制裁の影響で原油価格は高止まりなのかな・・・・・・」と思っていたが、ここにきて原油価格は急激に低下し始め60ドルを切った。
アメリカがイラン原油の追加制裁を発動した後だけに、何とも不思議な感じがしたものだ。
「今こそ上昇しておかしくないのに・・・・・・・」
経済的に見る限りは原油価格が上昇する要因は長期的にはない。先進国では石油がぶ飲みのアメリカ(シェールオイルで自国の需要はまかなえる)を除けば原油需要は傾向的に減少している。日本など原油は21世紀に入り毎年のように需要量は減少し、天然ガスも最近になって減少し始めた。
中国などは政治的思惑で不要な原油の輸入を続けていたが、経済が停滞している以上、もはや無駄な輸入を継続するわけにいかない。
だから需要面からは上昇要因がないのだ。
一方供給側からするとロシアとサウジの財政が火の車になっており、とても供給制限などする余裕はない。
ロシアの財政は原油価格が100ドルを超えることを前提に国民に年金等の福祉政策を実施してきた。それがプーチン大統領の人気の秘密だったが、とうとうため込んでいた余裕金もなくなり、ここにきて年金改革に乗り出した。
「もうこれ以上の年金は支払えない。国民も苦しみを分かち合ってほしい」プーチン大統領が懸命な説得をしているが、年金を削られる人民からはブーイングの嵐だ。
一方でサウジは国民に世界最高の福祉を供給していたが、サウジも財源が枯渇してしまった。隣国イエメンのスンニ派支援のために毎月60から70億ドル(6兆円から7兆円)の軍事費が砂漠に消えてなくなっている。
サウジはスンニ派の盟主だからエジプトやヨルダンのスンニ派が悲鳴を上げればこれも助けないわけにいかない。
あまりの支出の増大にムハンマド皇太子は正常な判断力を失い、「俺に反対するものは許さん。カシュギの首をとれ!!」と他国にあるサウジ大使館で暗殺を命令した。
かつてOPECといえば泣く子も黙ったが、スンニ派とシーア派の死闘の前にはアラブの正義は吹っ飛び、今ではイスラエルとサウジが手を組むまでに泥沼化している。
「ニックキはシーア派のイランで、イスラエルはおれの味方だ」
こんな状態だから供給側として結束など夢のまた夢なのだ。
今原油価格が60ドルを割り出したが、これこそが正常であり今までの価格のほうが異常で、原油価格は長期的には低下していくと思っている。
しかし短期的な予測は全く不可能だ。
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