(27.10.2)「 腐れ外道」インドネシア ジョコ大統領に鉄槌を!! インドネシアの新幹線計画の舞台裏
「この腐れ外道が!!」と菅官房長官は思っただろう。「腐れ外道」とはやくざの風上にもおけないという意味で、ヤクザ以下という意味だ。
東映映画「仁義なき戦い」で菅原文太がよくはいていたセリフである。
今回の「腐れ外道」はインドネシアのジョコ大統領である。
ジョコ氏は昨年の末に大統領に就任したのだが、それまでの日本とインドネシアの友好関係を全く無視して中国になびいている。
ジョコ政権に資金提供してくれる国が最大の友好国で過去のいきさつは問わない。
日本はインドネシアに対して最大のODA提供国だし、また今回問題になった新幹線計画はインドネシア政府と日本政府が共同で押しすすめていたプロジェクトで、実際の作業はJICA(国際協力機構)が行っていた。
ジョコ氏は大統領に就任すると今までのいきさつは全く無視して中国シフトを引き、それまでJICAが検討してきた新幹線計画内容を中国政府に無断で提供して、日本より有利な条件で応札するように示唆した。
「日本は融資に政府保証を要求している。もし中国が融資を民間ベースで扱ってくれるなら新幹線は中国式にしてもいい」
中国は今まで新幹線を売った実績がないから、この提案に飛びついた。事前調査は日本のJICAがしているので、あとは融資条件だけを詰めればいい。
「ようがす、わが中国は融資を民間ベースで行い、インドネシア政府には一切迷惑をかけません」
この段階でジョコ大統領は中国の新幹線導入を決めていたが、今までの日本との経緯もあるので9月初旬の段階ではとりあえず中国式も日本式も採用せず、中速鉄道を導入するので両国の提案はご破算にするとアナウンスメントした。
しかしこれはジェスチャーでその舌の根もかわかないうちに、中国はさらに新幹線車両に使用するアルミニウム工場の建設に応じてくれたので、中国式新幹線に決めると発表した。
両者を採用しないといってからわずか1か月だ。
注)9月初旬でのアナウンスメントの詳細は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/pppp-3.html
日本はインドネシアは中高速鉄道の建設を望んで日本と中国の新幹線案を退けて一応両国の顔を立てたのだろうと思っていたが、これはとんだ食わせ物だった。
当初から中国案にすることを決めていてそのタイミングを図っていただけだ。
だから菅官房長官が「この腐れ外道」と思ったのは無理はない。
もっとも菅氏は政治家だから「大変遺憾である」という政治的発言にとどめた。
日本はできる限りの資金提供と低利融資を提案したが、あくまで政府保証を求めて民間による新幹線建設にはOKを出さなかった。
それは当たり前でジャカルタ、バンドン間の140km位は高速道路も走っているし、いまさらこの程度の新幹線を通しても赤字が見込まれる。
新興国のインフラ投資で黒字が見込めるようなものはほとんどなく、当初は特に膨大な赤字になる。隣の台湾でさえ新幹線の赤字に悩んでいるくらいだから、インドネシアのこのプロジェクトが黒字になるには数十年の年月がかかりそうだ。
だからこうしたインフラ投資についてそのリスクを日本とインドネシアで分担しようというのが日本政府の案だった。
ジョコ大統領はそうしたインフラプロジェクトをすべてただで外国資本に作らせようとし、日本と中国を競わせて最後は中国案を採用した。
「いやいや、中国はありがたい国だ。すべてを民間資本として導入することに同意してくれた。これでインドネシアは一銭も資金を使わずに新幹線を作れる」
ジョコ大統領としたらしてやったりというところだろうが、これが実際に稼働するかはかなり懐疑的だ。
理由は中国とインドネシア双方にある。中国は今経済が急速に下降線をたどっていて外貨準備が激減し、本当の意味の余裕資金が枯渇している。
中国がAIIB(アジアインフラ投資銀行)なる組織を作ることを急いだのも、こうした機関が債券を発行し市場から資金集めをできるためで、中国そのものは日に日に資金枯渇に見舞われている。
だからインドネシアへの融資金約7200億円も本当に出せるかどうか分からないし、ましてや計画が延び延びになれば追加の資金提供をしなければならない。しかしそんな金はどこにもないのだ。
倒産間際のダイエーが業況不振の企業を救済していたのに似ている。
注)中国の資金事情については以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/pppp-7.html
一方インドネシア側の事情は新幹線建設予定地の住民の移転作業がほとんどまともにできそうもないことがある。かつての強権政治を打破するのがジョコ大統領のキャッチフレーズだから、居座る住民を強制的に排除できない。最後は金との相談だが、それはすべて中国にださせるつもりだが、中国にはほとんど余裕資金はない。
これはポピュリストのジョコ大統領の最大のアキレス腱だ。民衆の支持を得るためには土地の強制収用は避けたいし、強制収用をしなければ新幹線は開通しない。
結局新幹線計画は中国がいうような3年後開通などはとても無理で何年たつか分からないのだ。
だからこの新幹線計画は当初からリスク含みの計画で、そうした計画のリスク分担が最大の課題になっていた。
中国はそのリスクをすべてかぶるという。中国はこうした方法でアフリカや南米諸国に食い込んでいったが、そのために外貨準備は枯渇してしまった。不良債権の山だからだ。
今回の新幹線プロジェクトも同様に不良債権の山の一つになるだろう。
だから中国が全資金を提供して苦吟することになるのは一向に構わないのだが、従来日本はそうしたことを含めてインドネシア経済の振興を助けてきた。
ジョコ大統領に安倍総理が新たに1400億円のODAを表明したのもそのうちの一つだ。
ジョコ氏は日本の誠実な対応をけってただ目先の利益だけで中国になびいている。だから「腐れ外道」なのだ。
こうした腐れ外道は一度地獄を見ないと目が覚めない。中国による新幹線計画が失敗し、インドネシア経済が中国と共倒れになることを知って初めて目が覚めるだろう。
それまで日本は静観しておくのが一番だ。
注)インドネシア経済の現状は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/pp-1.html
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