(27.6.1) ミャンマーの難民ロヒンギャは将来の北朝鮮の難民と同じ
ロヒンギャ族などと聞いても最初は何のことかさっぱり分からなかった。
今ミャンマーから密航船で大量にマレーシアやインドネシアに向かって漂流している少数民族である。
イスラム教徒のため仏教徒の国ミャンマーから追い出されている。行く先は同じイスラム教徒のマレーシアとインドネシアだが、両政府とも従来受け入れを拒否してきた。
「同じイスラム教徒といっても飢餓難民を受け入れるわけにはいかない!!」
密航船は直接マレーシアやインドネシアにたどり着くこともあるが、たいていの場合は途中のタイに上陸する。ここから徒歩で山越えをしてマレーシアに密入国するのが最も多いのだが、そこにタイの暗黒社会が結びついた。
「マレーシアに行きたかったら10万バーツ(約37万円)支払え!!」
支払うとタイの闇組織がマレーシアに密入国させてくれるが、金がないといつまでもタイの密林の秘密のアジトに隔離されたままになる。
ロヒンギャはほとんどが貧困だから支払う金もなく、そのうちに食料が尽きて次々に死んでしまい、埋葬された墓がタイのジャングルに累々と出来上がる。
最近になりこうしたロヒンギャ族が集団埋葬された場所がタイの密林で見つかり大問題になった。
「タイにはロヒンギャ族を人身売買している組織があり、タイ政府はこれを黙認している」と国際社会からタイが非難されだした。
慌てたタイ政府はこの暗黒組織の摘発に乗り出したが、多くの場合地元の警察がかかわっている。
「とらえてみれば人身売買業者とは警察官や公務員か!!!」タイの闇も深い(本当はタイ政府はこのことを知っていたので黙認してきた)。
ようやくタイ政府は東南アジアの15か国を集めてこのロヒンギャ問題を解決するための国際会議を主催した。29日のことである。
「そもそもミャンマーがロヒンギャ族を弾圧するからボートピュープルになるんだ。おかげでタイが国際的な人身売買を行っていると非難されてしまったではないか・・」
「何を言うか、ロヒンギャ族はミャンマーの国民ではない。あれはベンガル人でバングラディシュから不法に入国した不法滞在者だ。ミャンマーがこれを追い出すのは当然だ」
議論は平行線のままだ。
ロヒンギャ族が住んでいる場所はミャンマーとバングラディシュの国境付近で約100万人と言われるが、もともとこの地域は国境などあってないようなものだから集団でまとまって住んでいた。丁度イラク北部からトルコにかけて住んでいるクルド人みたいなもので国を持たない民族といえる。
イスラム教徒だがバングラディシュでは異端で、一方ミャンマーは仏教徒の国だからこちらもロヒンギャを認めない。
簡単に言えばどこにも行き場がない。
それでも従来はミャンマー政府が仕方なしに一時的身分証を発行してミャンマーでの居住を認めていたが、これ幸いとバングラディシュからの不法移民がミャンマーに殺到してこの地域がイスラム教徒ばかりになってきた。
そこにイスラム教徒によるミャンマー人の婦女暴行事件が2012年に発生し、暴動になってしまった。ロヒンギャ族を中心に約200名が殺害され、14万人が家を焼かれたという。
以来ミャンマー政府とロヒンギャ族の緊張が続いていたが、今年に入ってミャンマー政府が一時的身分証を停止したため、ロヒンギャ族に激震が走った。
「危ない、ミャンマー政府による大弾圧が始まる前触れだ!!!」
多くのロヒンギャ族がおんぼろ船に乗ってマレーシアやインドネシアに逃げ出した。
総数は分かっていないが数万人規模だという。
従来はタイの海岸にたどり着きここからタイの闇組織が金をもらった人間だけをマレーシアに密入国させていたが、タイ政府が取り締まりを強化したためこの陸路が使えなくなった。
難民船は海上をさまよいその数は数千人に上ったので、マレーシアとインドネシアがなんかしなければならなくなった。
「仕方ない一時的な上陸を許可しよう。ただし一時的なものですぐにミャンマーに帰ってもらう」
だがミャンマーは帰国を許さない。
「もともとわが国の国民でないのになぜ帰国を認める必要があるか」
私はミャンマーにクルド人問題と同じ問題があるのを知らなかったが、今や東南アジアにとって最も複雑な国際問題になっている。
この問題は日本人にとってはほとんど他人事だが、帰趨はよく見定めておいた方が良い。
というのは北朝鮮が崩壊した時のシミュレーションに使えるからだ。
北朝鮮が崩壊すれば最初は陸続きの中国や韓国に殺到するが両国があまりの数の多さに閉口して国境を閉ざすとあとはおんぼろ船に乗って日本海に漕ぎ出す。
潮流にのればおんぼろ船が日本にたどりつくのは太古の昔から変わりがない。
さてその時日本政府はどのように対処したらいいのだろうか。
国際世論は人道主義が基本だから、簡単に追い返せないのは今回のマレーシアやインドネシアの政府対応を見ても分かる。
だから東南アジアで起こっているロヒンギャ族のボートピュープルは将来の北朝鮮のボートピュープルと同じなのだ。
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