(23.12.8) オリンパスの不思議で拙い損失隠し 第三者委員会の報告
12月6日、オリンパスの損失隠しを調査していた第三者委員会が調査報告書を発表した。
それによると98年度決算において含み損を抱えていた有価証券(株式や投資信託)を簿外に移したのだが、その時点の含み損は約1177億円だった。
この有価証券はオリンパスが自ら設立した国内の投資ファンドやケイマン諸島の投資ファンドに移したもので、このファンドに対し簿価で販売して、オリンパス本体のバランスシートからは消すことができた。
こうした方法を飛ばしと言うのだが、なぜこの時期にオリンパスが飛ばしを行ったかの理由は2001年3月から時価会計が導入されることになっていたからである。
この状況下に当時の岸本社長が部下の森副社長と山田監査役に相談した。
「まずいな時価会計になれば、わが社の有価証券投資の失敗が世間にばれてしまう。そうなれば社長の俺も役員の君達も責任をとってすべて退任だ。何とかならないかね・・・・」
「社長、提案があります。これは山一證券が採用した方法と同じで投資ファンドを設立してそこに含み損の株式を移してしまいましょう。その管理は私、森と山田が行います」
「移すといっても投資ファンドがわが社から株式を購入する資金はどうするんだ」
「それはわが社の資金繰り資金を当面当てましょう。幸いなことに銀行は気づいていないのでいくらでも融資に応じてくれますし、わが社の業績も好調なのでそのうちに含み損の穴埋めはできるでしょう。
それに時間稼ぎをしている間に株価が急上昇して売り抜けることもできるかもしれません」
オリンパスが行った損失隠しの基本スキームは分かっている。
① オリンパスが金融機関から資金を調達する。
② その資金を担保に外銀から投資ファンドに融資をおこなわせる。
③ この資金を利用して投資ファンドは時価で含み損のある有価証券を買い取る。
しかし予想はまったく外れてしまった。株価はその後もさらに悪化して98年の時は1177億円だった含み損が1348億円規模に膨らんでしまった。
06年から08年ごろのことである。
この状況下で岸本社長から後任を託された菊川社長が動いた。
「持てば持つほど株価は下がるじゃないか。このあたりで損切りをして片付けよう」
「しかし社長、すでに簿外にしていますのでオリンパス本体での損金処理はできません。今売却すると1300億円相当の損失が出ますので、子会社は金融機関からの借入金の返済ができなくなります」
「それならわが社から何とか資金を融通して子会社の借入金の返済を済ませてしまえ」
結局オリンパスは飛ばしを行った時の反対取引をせざる得なくなった。
① 子会社の投資ファンドは株式を売却したが簿価より1348億円相当赤字となる。
② その分外銀に返済する資金が不足するため、1348億円を何らかの形で投資ファンドに送金しなければならない。
③ 国内3社の買収資金の一部560億円相当、英ジャイラス買収資金の一部600億円相当とその他資金をオリンパスから密かに投資ファンドに送金して外銀からの借入金返済に充てる。
④ これで預金担保になっていたオリンパス本体の資金の回収が図れる。
注)資金繰りとしては上記の方法で片がつくが決算書に対する記載が残ってしまう。これをオリンパスは買収失敗による損金として処理することにした。
しかし有価証券投資の失敗を買収の失敗として処理するとは間の抜けた方法だ。
元はといえば時価会計導入時に含み損の解消をせず、責任逃れをしたことがすべての始まりだ。
うまくだましたつもりがやり手のウッドフォード氏を社長に迎えたことで、それまでの損失隠しが暴かれてしまった。
どうやらオリンパス上層部は内部告発があるとはまったく想定していなかったようだ。
「なんということだ、ウッドフォードのやつは日本国憲法に{ミンナでわたれば怖くない}と書いてあることを知らないのか・・・・」
今回の事件を見てみると社長以下自己保身で動いたことは分かるが、それ以外の積極的な悪意(ホリエモンが行った株価を操作して増資をおこなう等)は見られない。
なんともつたない方法で含み損の解消をしたものだが、危機になると頭だけ地中に埋めてかくれたつもりになるダチョウと同じだ。
オリンパスは関係者全員が退職して新しい体制で再出発する以外に手はなさそうだが、もたもたしていると資金繰りが詰まって他の会社から買収されてしまうかも知れない。
なおオリンパス関連の記事は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat46348466/index.html
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