(28.9.22) 高速増殖炉もんじゅの臨終 「だって核燃料なんて余っているよ!!」
やはりと言おうか、当然と言おうか、福井県にある高速増殖炉もんじゅを管理する主体がいなくなってしまった。
この増殖炉は日本原子力機構が管理していたのだが、ナトリウム漏れを隠したり1万件に上る点検不備があったりして、原子力規制委員会が切れてしまった。
「あんたまともに管理するつもりがあるのですか。このままいけば事故が起こるのは必然です」
文部科学省に管理主体を変えるかそれができないなら廃炉にするように申し入れをしたのが昨年の11月だ。
注)この間の経緯は以下に詳細に記述した。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/ppppp-3.html
だが実際は日本原子力機構の技術者以外に高速増殖炉を扱った人などどこにもいない。
文部科学省は電力会社や原子炉をつくっているメーカーに声をかけたがすべて断られた。
「この技術は特殊でとても我々の手に負えません。まともな管理など我々には不可能です」
高速増殖炉とは原子炉でウラン等を燃やした残りかすから再びプルトニウム等の原子燃料を作る技術だが、特にこの高速増殖炉は冷却水として水の代わりにプルトニウムを使用している関係から管理が極端に難しく、すぐにナトリウムが外部に漏れて大騒ぎになる。ナトリウムは金属をすぐに腐食するからだ。
95年の8月に発電を開始したら、その4か月後にはナトリウム漏れで操業を停止している。4か月程度がどうやら限界のようだ。
注)なぜ高速増殖炉でナトリウムを使用するかの技術的問題は私は知らない。
それから約15年たって、2010年に運転再開をしたら、これも4か月後に燃料交換装置の一部が原子炉内に落下して操業が停止になった。
このシステムが稼働した95年から実際に動いたのは約8か月間だけで、後の約20年間にただ遊んでいるだけだった。
「いやー、点検項目が多くてとても稼働というわけにはいきません。まず点検です」
しかし約4万件の点検項目があり、実際はとても対応ができず約1万件は未了のまま10年の稼働をしたのだが、さっそく事故が起こってしまい原子力規制委員会の逆鱗に触れた。
「あんたらではだめだ、もう少し優秀な人はいないかい」
しかしこの技術が最先端のものであるだけに、日本原子力機構の技術者以外に高速増殖炉を知悉している人はいない。
「なら、あんたやってみな」原子力機構が居直った。
ここにきてとうとう政府も問題の根深さを認めざる得なくなった。
すでに1兆円余りの費用をかけて開発してきたが、さらに地震対策等で5800億円の費用がかかるという。
それでうまくいくかというと全く保証はなく「まあ、実験炉だから何が起こってもおかしくないですな」などというのが実態だ。
文部科学省も万策尽きて「誰も面倒を見れないなら廃炉しかないではないか」と決心した。
もともとウランやプルトニウムといった核燃料は高価だから再利用が必要との判断だったが、最近は原子炉がほとんど止まっているため核燃料は余ってしまった。
「全く使われない核燃料を再処理して生産しなければならない理由はあるのだろうか」誰もが疑問を感ずるような状況になっている。
注)ウラン価格は2008年のピーク時から約3分の1に低下しておりほぼ原油価格の低下と同じトレンドを示している。
何しろ世界経済は低迷しこれ以上の原子炉などあってもその電力を使用する企業などほとんどなくなりつつある。
特に日本では無理して原子炉を稼働させるより、LNGや石炭の発電で十分でそれも余裕含みになってしまった。
こうなると高速増殖炉に対する社会的需要はなくなって、今では科学者と技術者の単なるはおもちゃとなっている。
しかしこの遊び道具は年間で200億円の経費が掛かるので、まことにバカ高い遊び道具といえる。
政府はいまだに高速増殖炉の技術には未練を持っているが、それは「また石油危機がいつ起こるかわからないから・・・・・・」ということだが、この心配は杞憂に終わるだろう。
原油価格が一時1バーレル100ドルを超えていたのは、中国という資源をただバカ食いするだけの愚かな国家があったからだがそれも限界がある。
中国経済が14年の夏に崩壊し、それ以降資源価格は低下の一途をたどっている。
そして将来的にも中国のような経済を政治のしもべと考える愚かな国家が出ない限り資源価格の高騰はない。
高速増殖炉もんじゅの時代は終わったのだ。
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