(24.10.31) なぜ日本人はいつも悲観ばかりしているのか? 円高とM&Aの隆盛
(ブログ 「ちば公園のベンチから」に掲載された銚子の海。)
私は日本人の最大の欠点はすべてを悲観的に見ることだと思っている。
バブル崩壊以前日本企業の業績は世界を席巻していたが、私が所属していた金融機関の職員に対する決算報告のトーンは「厳しい経済情勢の中、なんとか○○億円の経常利益を計上できた。しかし来期の決算は予断を許さない」と言うようなものであった。
しかし客観的に見てその頃の収益はわが世の春を謳歌しており、毎期増収増益で、その後のバブル崩壊後は決算報告の説明すらしなくなった(最高の状況下では悲観的な話をして、本当にピンチになると説明する言葉を失った)。
円高や円安に対する評価も同じで、円高になっても円安になっても悲観的な言辞が幅を利かす。
たとえば円高になるとトヨタなどは「1円の円高で400億円の営業利益が吹っ飛ぶ」なんて記事が新聞やテレビで盛んに吹聴される。
私などは「ならばトヨタ車をアメリカで生産して日本に逆輸入すればドル安の恩恵400億円と、日本で生産したと仮定した損失の400億円、合わせて800億円の営業利益が出るのじゃないか。こんな絶好の機会はまたとないのではないか」と思ってしまう。
実際にニッサンのゴーン社長などは最も輸出環境のよい場所で生産を行うと公言しており、日本が駄目なら中国、中国で不買運動が発生すれば今度はタイやインドに生産拠点を移そうとしている。
日本の大企業はグローバル化されており、グローバルの最大の利点はどこでも生産できるのだから、日本に留まって円高を嘆くのは愚の骨頂だ。
注)ニッサンのゴーン社長の日本に対する決別の辞は以下参照。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/2468-179a.html
また円安になれば今度は火力発電所用のLNGや石炭の価格が上がって貿易収支の赤字幅が増大し、今にも日本が崩壊しそうな話になる。
実際は円高であれば輸入品価格は抑えられて燃料代や穀物を安く入手でき、円安になれば輸出産業が一息つけることになる。
物事には常に両面があり、一方的に悪い面だけを強調するのは日本人の悪い癖だ。
注)穀物価格はリーマンショック前とほぼ同じ価格になっており、化石燃料も高止まりしている。もし円高でなければリーマンショック前の狂乱物価が再発していた。
今回の円高で実は海外企業のM&A(海外企業の合併・買収)は過去最高の件数になっており、特に商社のM&Aが活発だ。
三菱商事はカナダの資源会社、丸紅はアメリカの穀物会社、住友商事は石油ガス開発会社、伊藤忠商事はアメリカの食品会社を買収しており実に活発に動き回っている。
商社は輸出入を手がけており為替相場に対して弾力的に対応できるので、円高であればM&Aに積極的に乗り出すことができる。
また最近ソフトバンクの孫社長が米携帯電話大手のスプリント・ネクステルを1兆6千億円で買収して話題をまいたばかりだ。
注)孫社長の買収劇については以下の記事を書いておいた。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-d81f.html
良く日本人は中国資本が席巻して日本のハイテク産業を支配下に置こうとしていると警戒しているが、日本のM&Aも相手国から見たら同様の危惧を持つはずで、「日本が円高を利用して世界の優良企業を買い捲っている」と言うことになっている。
中国のM&Aが悪く、日本のM&Aが良いなどと言うことは経済的には言えない。
あらゆる事象には必ず両面があり、円高が悪で円安が良いなどというのは輸出産業の言い分で輸入産業は円高が良く、円安は悪になる。
M&Aを仕掛ける立場からは円高が最良で、反対に企業を売ろうとしている立場からは円安でないと売ることもできない。
こうした悲観世論を操作している一番の責任者は報道関係者だから、報道関係者もいい加減悲観的なトーンでばかり話すのは止めて、バランスの取れた報道をしてもらいたいものだと思っている。
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