(27.7.20) インフラ輸出元年 日本の鉄道輸出に弾みが付いた タイ都市鉄道の受注
実に喜ばしいことに日本のインフラ輸出、特に鉄道の輸出にようやく弾みがついてきた。
日本の鉄道技術は世界でも屈指のレベルだが、その輸出となるとさっぱりでドイツのシーメンスやフランスのアルストムに大きく遅れをとってきた。
シンガポールでもマレーシアでもタイでもヨーロッパ勢にかなわなかった。
理由は二つあって一つは円高が進んでいたため価格面で全く競争力がなかったからだ。
「日本の鉄道技術は十分評価しますが、わが国に導入するには高すぎます」と断られることがしばしばだった。
もう一つの理由はこうしたインフラは個々の商品でなく運用のノウハウを含めたトータルで販売しないと相手が当惑してしまうということがあった。
「わが国ではこうした高度な鉄道システムを運用するのは初めてで、どのようにして運用したらよいのか分からないのです」といわれてしまう。
だから日本の車両メーカーが車両だけ売ろうとしたり、信号機メーカーが信号システムを売りこもうとしても、ヨーロッパ勢のようなトータルな売り込みができないため、個々の車両だけの販売は不可能だったような事例が多い(特に新幹線のような高速鉄道の場合は運用方法が最も大事になる)。
だがここに来て情勢が激変した。安倍首相のアベノミクスによってかつては80円前後だった為替が120円前後に約5割も円安に振れたため、日本の輸出価格が急激に下がって価格競争力が抜群になってきた。
さらにかつては車両メーカーや信号機メーカーが個別に売り込みをしていたが、特に新幹線の売り込みではJR東やJR東海が日本連合として参加するようになり、鉄道インフラをトータルとして売りこめる体制がとれるようになった。
「ご心配ありません。世界最高の車両と信号システム、それに無事故のJRの運行システムを貴国に提供できます」と胸を張って言える体制をとるようになった。
タイのバンコクは日本と比較すると全く鉄道網が未発達で、ようやく最近になって地下鉄等の建設が始まったようなものだが、その都市鉄道の新路線レッドラインに住友商事、三菱重工、日立の日本連合が1200億円で受注することが決まった。過去最大規模の商談だ。
すでにタイではパープルラインに車両と信号システムの導入が決まっていたが、今回のように運用を含めて全面的に日本連合が受注するのは初めてといえる。
今世界では鉄道建設が見直されており、インドのムンバイとアーメダバード500km、アメリカのワシントン、ボルチモア区間、同じくサンフランシスコとロス区間、マレーシアとシンガポールの区間、ブラジルのリオとサンパウロの区間等、日本連合が食い込みを図るチャンスが激増している。
「品質も価格も一番です」というのが売り込みトークになっているのだから、シーメンスやアルストムにとっては脅威といえる。。
また中国も盛んに低価格での鉄道建設を持ち掛けており、アフリカやトルコでの高速鉄道建設の実績がある。
ただし中国の場合は安からろう悪かろうで、トルコの新幹線開通式では一時車両が動かなくなって開通式に臨んだエルドアン首相は肝を冷やしていた。
「やはり中国製は問題が多い」そう思っただろう。
今までは高品質ならヨーロッパ、ただ安いだけなら中国と相場が決まっていたが、これからは低価格でしかも高品質の日本の鉄道技術が世界各国に導入される日が迫ってきた。
インフラ輸出こそがこれからの世界経済を引っ張るけん引役で中国はAIIBという世界的金融機関を立ち上げてインフラ輸出を加速化させる計画だが、日本はADB(アジア開発銀行)による融資や円安で一気に競争力を増した力で中国と対抗することになるだろう。
すでにインドのムンバイとアーメダバード500kmについては安倍首相の首脳外交が効果を発揮してほぼ日本の新幹線が受注することが確定している。
過去日本の新幹線は台湾への輸出の実績しかないが、日本全国に新幹線網を敷設してしまったのであとは海外に輸出することだけが、関連メーカーやJRを含めて生き残る道だ。
日本の輸出競争力が付いた今こそその最大のチャンスで、日本は今インフラ輸出元年を迎えているといっていい。
注)インドへの新幹線の輸出については以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/post-fa3c.html
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