(30.11.7) 地方銀行淘汰の時代 金融庁の必死の地方銀行援護索 独禁法改正
とうとう政府が独占禁止法の適用除外を検討し始めた。銀行業とバス事業である。
この二つは地方にあっては基幹産業の一つと思われてきたが、その疲弊がはなはだしい。
私がサラリーマンになったのは今から50年も昔のことだが、当時は特に金融業はどこでも花型産業だった。
私の初めての任地は長野市だったが、そこには八十二銀行という長野県を代表する金融機関があって、長野市内に他を圧倒するような立派で瀟洒な本社があった。
「これならだれでも八十二銀行に入社したがるだろう・・・・・・」その建物を仰ぎ見ながらそう思ったものだ。
最大の理由は貸し出しをすればするほど赤字になり金融業が成り立たないからだ。
日銀のゼロ金利政策によって貸出金利は低く抑えられ、せいぜい1から2%程度の金利設定になっている。
地方銀行の経費率は平均して1.5%程度だから、地方銀行約100行の半分が赤字にあえいでいる。
金融庁は地方銀行の倒産は避けたいから統合をすすめようとするが、一方で公正取引委員会の独占禁止法の壁が立ちはだかる。
たとえば長崎県の十八銀行と福岡県のふくおかフィナンシャル・グループの統合は、統合を決めてから公取委がしぶしぶ審査を終わらすまで2年以上かかった。
「この時代に2年以上も審査をされていてはつぶれてしまう」両行から悲鳴が聞こえた。
日本の地方では金融業が成り立たない理由がある。金融業は基本的に利ザヤで収益を上げるのだが、地方の企業が利ザヤ以上の収益を稼げなくなっているからだ。簡単に言えば金があっても投資先がないから借りる必要はないということになる。
経済学的に言えば金利はGDPの伸び率の範囲内に抑えられる。たとえば日本のGDPの伸び率が1%だとすると、それを事業者が0.5%、貸し出しをした金融業者が0.5%ずつ分け合うというような形だ。
現在の日本のGDPの伸び率は1%前後だから、金融機関の営業利益は0.5%程度で、一方経費率は1.5%だから、貸し出しをすれば1%の赤字になるという計算になる。
だから最後の手段は統合をして最低限の利幅を確保することになる。
経済成長がストップした世界では金融業は成り立たない。ヨーロッパの中世がそうした世界で毎年のように経済が縮小していった。ここでは利息そのものが存在しないから(ただし現在と同じマイナスの利息は存在する)人々はただ神のかごを祈って自給自足の生活をしているだけだった。
日本やヨーロッパのような成熟した資本主義国ではもはや経済成長はないから資金需要もなく、したがって金融機関は存在できない。
21世紀は歴史的に金融業が衰退する世紀と思っていい。
金融庁は何とかして地方に金融機関を残そうとしているが、日本経済の衰亡に合わせて金融機関の淘汰が進むのはやむ負えない。
注)こうした状況下で金融機関を成立させるには実需ではなく仮需を発生させる以外に方法がない。日銀黒田が行った金融緩和とはそうしたもので、資金は株式やビットコインや都市部の不動産や希少資源に向かったが、そうした仮需(本来は不必要なもの)以外に金の使い道はない。
最近のコメント