評論 日本の経済 金融機関

(28.1.6) カントリーリスクの時代 中国やインドネシアから融資を引き上げろ!!

Dscf5280 

 ここにきて邦銀の中国向け融資にストップがかかってきた。邦銀はリーマンショック後欧米系の銀行が中国や東南アジア諸国の融資を引き上げた間隙をぬって融資を拡大してきた。
邦銀の一人勝ちといっていいような状況で収益も拡大していたが、ここにきて中国企業に対する融資にストップがかかり残高が急減している。

 BIS(国際決済銀行)がまとめた集計でみると、15年9月の融資残は約7兆円で、前年同月に比較すると▲14%減少している。
中国企業への融資の約半分は日本の中国進出企業に対する融資だが、日本企業が設備投資を手控えているため融資残は今後とも加速度的に減少しそうだ。

 BISの統計数字は邦銀の対外投融資残3兆ドル(360兆円)からみて数字が小さすぎるように見えるが、問題の本質はBISの統計でも日本の金融機関の対中国融資が減少をはじめたということで、中国が主要の取引相手だった時代が終わっている。
今中国の製造業に融資すれば、不良債権を積み上げるだけだから邦銀の残高が急激に減少していることは当然の措置だといえる。

注)邦銀の対外戦略の実態については以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-e1ef.html

 邦銀の収支構造は最近は国外での融資国内での国債のディーリングに負うていて、海外戦略は最も重要な邦銀の戦略になっていたが、ここに来て息切れが見えだした。
一番大きな理由は新興国といわれる中国や東南アジアで資金需要がなくなってきたことだ。
中国あっての経済成長を遂げていた資源国のインドネシアなどは最もひどい影響を受けており、三井住友BKは提携先の年金貯蓄バンクの株価急落を受けて550億の減損処理に追い込まれた。
いけいけドンドンの時代が終わり、国ごとにリスクを管理しなければならない時代に入っている。

 金融機関の用語でカントリーリスクというのだが、製造業でひどいリスクが存在するのが中国で、間違っても製造業の設備資金を融資したら返済はおぼつかない。
また資源関連の融資ではインドネシアとマレーシアが中国経済の急減速に伴ってここもひどい不況産業になっている。この2国の資源融資はアウトだ。
またタイは軍事政権になってから経済運営がさっぱりで、ここは経済成長の時代が終わってしまったといっていい。

 メガバンクの収支もここ数年は破竹の勢いで急伸していたが、16年3期は現状維持か減収が見込まれる。減収要因は提携先の金融機関の株価急落等が理由で、かつては増収要因だったのが嘘のようだ。
日本の金融機関の中で三菱UFJが最も高収益企業で年間営業収益で1兆円を稼いできており、これはトヨタに次いで2番目の高収益企業になっていた。
その三菱UFJも今年はその水準を維持できるか否かのぎりぎりの段階になっている。

注)三菱UFJの最近までの躍進については以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/post-3b5b.html

 世界経済が急速に変化しており国ごとにリスク管理をして融資金をシフトしていかなければいつ不良債権になるか分からない。
中国やインドネシアの融資はさっさと引き上げてインドやミャンマーにシフトさせなければ邦銀の収支が急激に悪化してしまう。
カントリーリスク管理が最も重要な時代になってきて日本のメガバンクにとって正念場になっている。



 

| | コメント (2)

(27.5.2) 日本のメガバンクも利益1兆円企業になってきた。 三菱UFJの躍進

22419_044_2 

 日本の金融機関、わけても三菱UFJの躍進が素晴らしい。
15年3期の連結純利益が1兆円を越えるとのアナウンスメントがあったが、これはトヨタに次いで日本で二番目の高収益企業ということになる。
三井住友も過去最高益になりそうで、メガバンクの中ではみずほだけがトラブル続きでもたついているが日本の金融機関の収益も順調に拡大している。

 もっとも世界的規模から見ると1兆円という数字は必ずしも高くない。アップルなどは四半期でゆうに1兆円を越しており、韓国のサムスンも年間で3兆円規模の純利益を上げている。
日本の企業は長い間売上高至上主義で利益を度外視する傾向があったが、しかしそれでは世界企業としては二流だ。
売上も利益もというのが世界企業の条件といえる。日本経済復活の条件は連結純利益で1兆円を超す企業がどの程度現れるかによると言っていい。

 そうした意味で日本のメガバンクが1兆円レベルに達し始めたことは誠に喜ばしい。
メガバンクの中で特に三菱UFJが先頭を切っているのは海外戦略がここに来て効を奏し始めたからだ。
リーマンショック時にモルガンスタンレー持ち分適用会社(22.5%の持ち株で収益は投資有価証券として計上にしたし、アメリカのユニオンバンクを買収し、そしてアジアではタイのアユタヤ銀行を買収し連結子会社にしている。アメリカとアジアに拠点を築いたのが効を奏して国外での収益が順調に伸びている

注)メガバンクが復活してきたありさまについては前に記載した。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-e1ef.html

 一方で日本での国内融資は全く振るわない。大企業は十分すぎるほどの自己資金を持っており、また中小企業はここ数年設備投資を手控えてきた。国内の需要が頭打ちで国内投資をしても全く利益を上げることができないからだ。
その結果貸出金利は極端なまでに低下し融資の利ザヤはほとんどなくなってしまったので、融資をするなら利ザヤの稼げる海外で行うというのが一般的だ。
日本国内の収益事業は国債保有とそのディーリングくらいになっており、利回りが低下するたびに債券価格が上昇するのでそれで食っていた。
金融機関の収益構造は海外での融資と国債のディーリングという構造になっていたといえる。

 ところが先日バーゼル委員会が金融機関の国債保有に自己資本の縛りを設けるべきだと提言を始めた。
国債の利回りが上昇すれば手持ちの国債価格が低下する。日本の金融機関は平均で25%相当の国債を保有しているが、もし金利が上昇局面に入り国際価格が暴落したら日本の金融機関の収支は持たないではないか」というのが提言の理由だ。

注)提言そのものは日本の金融機関を対象にしたものでなく国債保有が多い金融機関を対象にしたものだが、実際は日本の金融機関は際立って日本国債の保有が多い。
なお、バーゼル委員会の提言の詳細は以下参照。

http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-e0e3.html

 この規制が実際に導入されると日本国債の販売に関して従来の金融機関引き受けができなくなる可能性が高い。金融機関が自己資本不足で特に危険な国債と認定されている日本国債を保有することができなくなるからだ。
今まで財務省も日銀もS&P等のレーティングを無視して国債発行ができたのは、日本の金融機関に押し付け販売ができたからだ。
国民の預金のほとんどを国が国債として吸い上げているといったら正確だろう。

注)国民の個人金融資産は約1600兆円だが、一方国債残高は1000兆円になっている。約6割の資産が国債に化けている。

 金融機関引き受けという構造が崩れるといったいどのような対応がされるのだろうか。
金融機関がもてなければ日銀が持つことになり、日銀はほぼ無制限に国債を保有するだろうから日銀のバランスシートは悪化の一途をたどることになる。日銀のバランスシートの悪化とは日銀券の価値の低下だからひどいインフレが起こる可能性が高い。
現在の金融機関引き受けの方が預金の範囲内という縛りがあるからまだ健全なのだが、バーゼルの勧告の如何によってはハイパーインフレに火が付く可能性がある。

 なお先日バーゼル委員会の勧告について記事を書いたところkantokuさんから以下の質問を頂いた。
いつも拝読しております。世界経済の勉強になり大変感謝しております。先生に教えて頂きたくコメント欄に書きました。BIS 規制の際には融資規制が起こり不動産業やゴルフ場、中小企業が倒産しました。国債引き受け規制となれば今回も同じ事が起きるのでしょうか?」
kantokuさんは1990年代のいわゆる貸し渋りのことを懸念しているのだが、今回はそうしたことは起こらない。
当時は不動産投資資金を中心に旺盛な資金需要があったのだが、現在は上記に記載した通り大企業も中小企業もほとんど資金需要がないし、あっても大企業の場合は債券を発行して自己調達できる。

 今回の規制では金融機関は国債を購入することができなくなった分、どこかでその資金を使用しなくてはならず、反対に運用先で困るぐらいだ。
ことの本質は日本政府が国債を日本の金融機関に押し付けることができなくなることで国債消化のあり方が変わるということだろう。
また金融機関だけに限って言えば国債のディーリングでようやく国内での収益を上げていたのにそれに大幅な縛りがかかるということになる。


 

 

| | コメント (2)

(27.4.27) 再びバーゼル委員会が動きだした。「日本の金融機関の活動を制限しろ!!」

Dscf5420 

 再びバーゼル委員会が動き出した。今回は国債保有に網をかけるという。
従来バーゼル委員会が動くと日本の金融機関の活動が大幅に制限されてきた。バーゼル委員会の規制とは即日本に対する規制と思われるほどだ。
少なくとも1988年に制定されたバーゼル委員会の規制BIS規制という)は日本の金融機関の活動を世界的規模で網をかけるための規制だったと言っていい。

 当時日本の金融機関は破竹の勢いで世界市場を席巻していたし、融資額や預金量では日本のトップテンが即世界のトップテンのようなありさまだった。
あまりの日本の金融機関の巨大化に恐れを持ったアメリカとヨーロッパ(特にイギリス)が手を携えて日本の金融機関つぶしの手段としたのがBIS規制で、具体的には海外で営業活動を展開する金融機関の自己資本比率を8%にする規定だった。

注)当時日本の金融機関はニューヨーク、ロンドン、チューリッヒに支店を開設して世界の融資をリードしていた。収益額を無視した薄利多売で欧米の金融機関から白眼視されていた。

 なぜこれが日本の金融機関つぶしだったかというと当時の都銀地銀も含めて)はオーバーローンばかりで自己資本は1%から2%程度しかなかったからである。
日本の銀行経営は危険すぎる。最低でも自己資本が8%なければニューヨークやロンドンでの取引は止めていただく
その後日本の金融機関は自己資本比率を高めるために融資を大幅に引き上げ海外での活動を自粛する行動に出ざる得なかった(自己資本を高められなかったためその分融資を止めた)。
やれやれ、ようやくこれで日本の金融機関の怒涛のような動きを止めることができた。金融業務はアングロサクソンのもので黄色いサルなどに出しゃばらせてなるものか!!
もう少しのところで日本の金融機関が世界の金融機関になるチャンスをアメリカとヨーロッパにつぶされた。世界を金融支配しようとしたジャパン・アズ・NO1が潰えた瞬間だった。

 あれから30年、今度はリーマンショックでアメリカやイギリスの金融機関が深い痛手を負ったが、日本の金融機関はバブル崩壊後の金融危機対応で非常に慎重な融資やディリバティブ対応をしていたため(一部金融機関を除き)、大きく傷つくことはなかった。
このため現在日本の金融機関は再び世界の金融機関として飛躍するチャンスが巡ってきて、特にアジアではヨーロッパ系の金融機関が撤退した後の融資を日本の銀行が引き受けている。
よっしゃチャンスだ、ヨーロッパが抜けた穴を日本がすべて奪えるぞ!!」
だが日本の金融復権をアメリカもイギリスものぞまない。
日本は製造業だけ復活すればいい。金融業はアメリカとイギリスのものにしておかなければならない

 再び日本の金融機関の弱点を狙った日本つぶしが始まっている。
日本の金融機関の最大の弱点は国債保有が多いことで、従来日本国債の約8割を民間銀行・保険、年金・その他金融機関が保有してきた。金融機関だけに限っても約6割だ。
最も現在は日銀が金融機関等から未曾有の国債買い上げ(金融緩和)を実施しており、日銀の保有比率が25%になって,その分民間の金融機関の比率は下がっている。

 現在バーゼル委員会で議論されている新たな枠組みの趣旨は金融機関の国債保有に規制を設けるというもので、国債の急激な金利上昇価格は低下)に堪えられるだけの自己資本の更なる充実を求めようというものだ。
もしこれが実施されるとメガバンク農林中金などは国債保有を減らすか自己資本の充実を図るかどちらかにしなければならない。

注)日本国債の格付は先進国では最低のランクで、最も危険な国債の一つということになっており金融機関の日本国債保有は大幅に制限される。
なお日本のメガバンクの復調については以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-e1ef.html


 実際は国債保有を減らす方に傾くだろうから、従来の日本政府の国債依存体質の変革を迫るものだ。
黒田日銀が大幅な金融緩和をすることができたのは民間金融機関が多量の国債を持っていたからで、それを日銀が買い取る形で市場に資金供給を行ってきた。
そのシステムが崩れるとなると、残された手段は日銀が直接国債を引き受けることしかない。しかしそれはかつての戦時国債とおなじで猛烈なインフレーションの可能性が高い。

アメリカやイギリスの意図は特にメガバンクがアジアで席巻するのを抑えることだが、アングロサクソンの戦略は常に崇高な建前金融秩序の維持)を前面に押し出してくるので本当に手ごわい。

注)地球温暖化対策もヨーロッパの復権の手段であることはよく知られている日本が温暖化対策で鴨葱になった経緯は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-dcb6.html


 



 

 

| | コメント (2)

(27.3.26) みずほ銀行をめぐる魔訶不可思議な詐欺事件 果たしてみずほは逃げ切れるか?

Dscf6127

 とても魔訶不可思議な金融詐欺事件みずほ銀行で発生している。
みずほ銀行の元幹部職員審査役)が24日、高配当と元本保証を約束して医師から1億1千万円を詐取したとの件で警視庁に逮捕された。
余罪があり詐取した金額の総額は数十億円になるという。

 詐取の手口は金融ブローカーがターゲット医師等)をみずほ銀行の審査役だった及川幹雄氏に紹介し、及川氏が本店応接室で面会して「大口顧客にだけ紹介する金融商品で元本保証で月利3%で解約は自由」と途方もない好条件で勧誘するという手口だった。
月利3%なら単純計算で年利36%になるから「いったいどこにそんな商品があるの?」と不思議なくらいの高利回りだ。しかも元本保証で解約自由などという条件まで付いている。

 通常の常識を働かせれば、日本のような低金利の環境でそのような高利回りを確保できる商品などないのは分かるし、もし本当にあったならばみずほ銀行自己ディールで取り扱うから顧客に紹介するはずがない。
医師は本店応接室でみずほ銀行の審査役から説明を受けたので信用したと述べているが、審査役とは融資の審査を行う役職だから、金融商品販売の担当ではない。
少しでも金融常識を持っていれば「あやしい?」と思ったはずだが、この医師はそう思わなかったようだし、他に多くの被害者がいるところを見るとみんなこの及川氏を信用したのだろう。

 だがこの事件の本質はそうした手口にあるのではない。この事件が起こったのは2011年5月から12年6月までの間だというから、今から4年から3年前の話だ。
及川氏自身はこうした架空取引がばれて(投書があったようだ)、すでに12年9月にはみずほ銀行を解雇されている。
それがなぜ今頃になって逮捕されたのだろうか。あまりに期間が立ちすぎている。

 私は知らなかったが及川幹雄氏についてはアングラ情報が駆け巡っていて裏の世界では知らない人はいなかったようだ。
及川氏と今回同時に逮捕された金融ブローカー2名が結託して詐欺事件を働いたのだが、これを暴力団関係者にかぎつけられ、及川氏は常にそうした筋から脅迫を受けていたという。
そのため詐欺の手口をエスカレートせざるを得ず、詐取した金額のかなりの部分が暴力団に流れていたようだ。

 真相はこれから警視庁の取り調べで明らかになるだろうが、及川氏は最初は詐欺を働いたのだが、その後はそれをゆすりのネタにされ、詐欺をエスカレートして暴力団に金をむしり取られていた構図が見て取れる。加害者であるとともに被害者なのだ
金融機関の実情に詳しくない人はなぜ幹部職員がそうした詐欺を働くようになったのか不思議だろうが、審査役という地位は低くはないが幹部ではない
通常幹部とは部門の部長や副部長以上を言うが、審査役とはそれになれなかった人が付くことが多い役職で、いいところまでは行ったが最後に落ちこぼれてしまった人が付く役職だ。
くそ、本来なら俺はもっと出世してもいいはずなのに会社は人を見る目がない・・・・

 こうした人は過信をしているから会社を見返すために個人で金融取引を始め大金を得ようとするが、ほとんどの場合は予測が外れ反対に多額の借金を抱えてしまうことが多い。こうした時会社に対して敵意を持っているとしばしば詐欺を行う誘惑にかられる。そしてたまたま運悪く金融ブローカーなどに知り合いがいると誘われて悪の道に落ち込んでいく。及川氏も金融取引を盛んに行っていたそうだからそうした人の一人だろう。

 今問題になっているのは及川氏がみずほ銀行本店の看板を目いっぱい使って詐欺を働いていたことで、応接間に通して接待係の女性が上質のお茶まで出していた。
接待係の女性はそれが仕事だからルーチンワークとしてしただけだが顧客の医師はそうとらず「みずほ銀行から最上の顧客として厚遇されている」ととらえたのだろう。

注)応接室の使用は予約制だから審査役であれば理由を適当につけていくらでも利用できる。

 現在及川氏に対する民事裁判がいくつも行われているが、及川氏はすでに暴力団に金をむしりとられていて一文無しの状況だから、当然損害賠償はみずほ銀行に向けられる。
しかしみずほ銀行はこれまで「知らぬ存ぜぬ」で逃げてきた。すべて及川氏と及川氏の顧客の問題としてきたわけだ。
みずほ銀行としては元行員が勝手にやったことで銀行は関知していないと逃げたいだろうが及川氏が刑事事件で逮捕されたとなると逃げきれるか怪しくなってきた。

 それにしてもみずほ銀行は行員の不祥事が多い。私はこれには構造的な問題もあるのではないかと疑がっている。前に記載した以下のブログ記事を参照してもらいたい。

http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-df09.html









 

| | コメント (0)

(27.3.24) 金融庁の金融検査が変わる。 資産査定時代の終わり!!

Dscf6100

 一般に金融庁の金融検査といえば受ける銀行が恐れおののいていることになっているが、誤解を恐れずに言えば実際の金融検査はそれほど恐ろしいものではない。
それは金融検査の手法が常に時代から遅れてしまって、対象となっている検査が金融機関にとって主要な業務でなくなっている場合が多いからだ。

 現在の金融庁の検査は1990年代の後半にアメリカから導入されたチェックポイント方式とかつて大蔵検査と言われていた時代から継続されてきた資産査定方式の併用である。
アメリカのチェックポイント方式を導入したのは、当時日本の金融機関は魑魅魍魎の世界と言われ、これはアメリカ式の厳しいチェックがなされておらず大蔵省と銀行がなれ合っているからだとアメリカから非難されていたからだ。
長銀日債銀拓銀が不動産融資にのめりこみ、土地バブル崩壊によって非常な痛でを被っていたころのことである。

 当時大蔵省はアメリカにひれ伏し、金融検査を新たな金融庁という組織に移管し、手法もアメリカ式に変えたのだが、かつての大蔵検査の方式の資産査定も残した。いわば折衷案をとったわけだ。
その後の金融庁の検査はこのチェックポイント方式は適当に流しながら(アメリカに一応の顔をたてながら)、相も変わらず資産査定方式にのめりこんでいった。

注)チェックポイントはあまりに項目が多すぎて「だから何なの」という感じで日本人にはなじめなかった。個別企業に対する貸し出しの査定である資産査定方式の方がやはり日本にはあっていた。

 通常査定は4段階に分かれており、貸出債権を正常先、要管理先、破綻懸念先、破綻先に分ける。
金融庁と金融機関との攻防は金融機関が要管理先に分類したものを金融検査官がなんとかして破綻懸念先に分類するかの攻防だった。
そしてここがポイントだったのだが金融庁の検査官の評価はどれだけ破綻懸念先を増やせたかであったためやたらと破たん懸念先が増えてしまった。
あんたこの取引先が要注意先のはずがないだろう
検査官、そうは言いますがここは業績が回復しつつありますのでこれでいいかと・・・
うるさい、俺が破綻懸念先といったら破綻懸念先だ」こわもてだったのだ。

注)リーマンショックまでは金融庁はアメリカから常に査定を厳しくするように圧力を受けていて金融庁の検査官はアメリカの手先のような状況だった。
その後リーマンショックでアメリカの金融機関にぼろが出たためアメリカ方式の金融検査の方式は崩壊した。
「なんだ、アメリカの検査も日本と同じレベルだったのか」ということだ。同時に金融庁の権威も失墜した。


 要管理先と破綻懸念先の相違は破綻懸念先になると倒産に備えて引当金を計上しなければならず、それだけ金融機関の収益を圧迫するからである。
赤字にでもなってしまえば金融庁から業務改善命令を出されるし、収益性が低ければアメリカの格付会社から低い評価を受けてニューヨーク外為市場での取引に参加できない。
したがってその攻防は非常に激しいものだった。

注)大手金融機関がアメリカの外為市場に参加できないということはグローバル金融機関になれないということになる。

 しかし日本の失われた20年の間に日本から企業はどんどん消えて海外に進出するし、業績のいい企業は資金を自己調達するので金融機関の貸し出しは年を追って少なくなっていった。査定の対象の企業融資のシェアが毎年毎年低下していったのである。
それに反比例するように金融機関は国債や社債の投資やディリバティブに傾斜していったので、いくら企業融資の資産査定を行っても銀行経営の一部を見ているだけになってしまった。

注)大手金融機関の資産に占める貸し出しの割合は約50%、有価証券が約30%。それ以外に簿外のディリバティブが多額を占めていてどの程度経営に影響が出るか評価ができないほどだ。

 今年の7月からの金融検査では資産査定は基本的に銀行に任せて金融庁は金利変動に伴う銀行への影響を見ることにした
国債や社債は金利リスクにさらされる割合が高く、またディリバティブも金利スワップなどはもろに影響が出る。
企業の貸出債権の査定はもういい。それは金融機関に任せて金融庁は金利リスクに注目しよう」との変革だ。
金融庁の検査官はもっぱら貸出債権の査定に傾斜していたので大改革だ。だが本当は金利リスクを正確に評価するのは並大抵のことではない。
時代に合わせて金融検査を変えようということは評価できるが、実際の現場はてんてこ舞いになるだろう。

注)特に国債の場合は金利上昇に伴って手持ちの国債の評価が大幅に下がってしまう。日本国債の金利が上昇局面になれば日本国も金融機関も同時に倒産しかねないとの危機意識がある。




 

| | コメント (1)

(25.10.10) トラブル続きのみずほ銀行 経営者不在体質が続いている!!

21_1046_2 
(パリ ベルサイユ宮殿)

 ふたたびみずほ銀行が火を噴き始めた。2002年3行第一勧銀、富士、興銀)のシステムのつなぎシステムを稼働させようとして大規模システム障害を発生させ、こっぴどく金融庁からお叱りを被ったが、東日本大震災時に再びシステムトラブルを発生させた。
そして今度は暴力団員への融資を放置し金融庁には「そうした融資はない」と報告していたのだから、経営トップの責任は逃れられない。
事実と異なる報告を行っていたことは極めて遺憾」と金融庁に言われてしまえばあとはない。
再び業務改善命令が出され、これで合併後7件目だから業務改善命令のオンパレードだ。

注)過去のシステムトラブルがなぜ発生したのかの分析は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/23522fg-17e1.html

 今回の暴力団員への融資の内容は、信販会社オリエント・コーポレーションで行っていた自動車関連の提携融資で、審査と保障をオリコが行いみずほBKが融資をするという仕組みである。
みずほBKはオリコが保証してくれているので安全確実な融資という位置づけであり、一方オリコは顧客から保証料を徴収できる。
信販会社は業績向上が第一だから審査はあまく、はっきり言えば返済さえ可能ならば誰にでも融資審査をパスさせてしまう。

 オリコがみずほBKと全く資本関係がなければ問題はなかったが、オリコが10年7月にみずほグループの傘下に入った為、シラを着ることができなくなってしまった。
少なくともみずほFGファイナンシャルグループ)の社長が知らないということは言えず、現在の佐藤社長は同時にみずほBKの頭取でもあるから、みずほ銀行も知らないと逃げることができない。

注)正確に言うと当時はまだみずほ銀行とみずほコーポレート銀行に分かれていて、オリコの検討をしたのはみずほコーポレート銀行。現在は合併してみずほ銀行になっている。

 当初はコンプライアンス担当役員までのミスとして逃げようとしたが、10年7月のオリコの子会社化の時点で、問題融資があることが分かり、みずほ銀行はこれを引き継ぐかどうかを役員会で検討している(議事録がある)。
君、暴力団関連の融資はやはりまずいよ、何とか解消できないかね・・・
頭取、そうしたいのはやまやまですが○○組の説得はかなり危険で難しいです。関西の地銀では担当役員が刺殺された例もありますので、へたに行うと死傷者がでます

 結局総額2億、230件余りの案件を長期的に減額させるということで(新規貸し出しをしないということ)で何とか収めることにしたようだ。
君、これは金融庁には厳秘ということにしよう。担当者にかん口令を引いておくように
しかし、こうした超内密な案件は内密なほど情報価値が高い。
出世や処遇に不満を持った担当者や役員は、「俺は頭にきた」時は情報をリークする。

 今回の案件は金融庁の検査で発覚したことになっているが、通常はそんなことはあり得ない。金融機関は隠すときは徹底的に隠すので検査で漏れるようなへまはしない。
事前にリークされた情報があり、かつ証拠書類のコピー(役員会の議事録等)などが入手できた場合にのみ、こうした問題案件が発覚するのだ。

 みずほ銀行がとくに問題含みなのは、第一勧銀、富士、興銀と言った日本が高度成長期には日本をリードしていた金融機関同士の合併だったからだ。
これが強者が弱者を飲み込む吸収合併だったら、システムも人事制度も経営方針もすべて押し付けることができる。
しかしみずほのように三行がイーブンな場合は3行の立場をそれぞれ立てなければならない。
2002年のシステム障害は各行の勘定系をそのまま残してつなぎシステムを作るという、何とも合併らしからぬ措置のために発生したトラブルであり、2011年の東日本大震災時のトラブルは取扱量の最大値の見込みを誤ったためだ。

注)つなぎシステム失敗後、一勧の勘定系システムをみずほのシステムにしたが、一勧のもつシステムの脆弱性を一勧のシステム担当者以外は把握していなかった。

 そして今回の暴力団への融資をしていたのが旧第一勧銀でオリコも旧第一勧銀の傘下にあったためみずほ全体での問題でなく、旧第一勧銀の問題に矮小化されてしまった。
この案件は一勧さん、あんたの所でなんとか裁いてほしいね。これはあんたの所で発生した問題だよ
2000年の大合併から早13年たったが、相も変わらない3行による確執がみずほ銀行全体の問題としてとらえる姿勢を弱めている。
経営者はいてもその威令は自分の出身母体の金融機関にしか及ばない。みずほ銀行と言っても内部は3行体制なのだ。

 力が拮抗している同士の合併は、なかなか合併効果が出ず、かえってトラブル続きなのは互いに人事で足の引っ張り合いをしているからだ。
このままではみずほ銀行は業務改善命令ばかりだされて、メガバンクの地位から滑り落ちそうだ。

注)東日本大震災時のシステムトラブルについては以下に詳細に記載しておいた。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/23321.html

| | コメント (0)

(24.10.17) 日本のメガバンクの大復活 金融機関の時代が始まった


(ブログ「バイオマスおやじの日々」に掲載されている「恐怖の猫写真」)

 日本の大銀行の復活が続いている。バブル崩壊から20年、「不良債権の隠蔽体質」と揶揄されて世界中の嘲笑の的だった日本の銀行がここに来て不死鳥のような復活を始めた。

 この10月日本でIMF・世界銀行の総会が開催されたが、こちらは中国の財務相や中央銀行総裁が欠席して散々の会議になった。
しかし同時に開催されたメガバンクとアジアの各国銀行との会議は、相互の提携(債券市場をアジアに作ろう等)を強めるなど日本の金融機関の積極姿勢がひどく目立った。

 リーマンショック後特にヨーロッパの金融機関が域内問題に忙殺されアジアから撤退しているのに対し、その穴を日本の金融機関が埋めるケースが目立ている。
ヨーロッパの金融機関はリーマンショック前に約25兆ドル2000兆円)規模の海外債権を保有してきたが、12年には約18兆ドル1440兆円)規模まで激減している。
一方で日本のメガバンクは、海外投資を08年の2兆ドル160兆円)から3兆ドル240兆円)に拡大している。
最も拡大しているといっても1兆ドル程度だからこれでは到底ヨーロッパの金融機関の穴を十分埋めているとまではいえないが、今後ともこの傾向は続きそうだ。

注)IMFの推定ではヨーロッパの金融機関は13年末までにさらに4.5兆ドル(360兆円)規模の資産圧縮を計ることになり、その穴を日本のメガバンクが埋めることに期待している

 いままで日本の金融機関は国内では大企業からまったく相手にされず、一方海外進出しようにもヨーロッパ勢が強敵だったので(旧植民地の場合はその頃からのつながりがあってなかなか食い込めなかった)、仕方なしに日本国債の購入でお茶を濁していた。
政府にとってはいくらでも国債を購入してくれるのでいくら放漫財政をしても平気と言うありがたい状況だったが、さすがにIMFが苦言を呈した。

現在の金融機関の国債の資産に占める割合が24%、これが今後とも拡大し17年には30%になる可能性がある。(これでは金融機関は政府の財布と変わりないから)共倒れの危険性が高い

注)日本の大企業は社債やCPでの資金調達が可能だったので金融機関からの借り入れを減らしていた。

 しかしここに来てIMFの懸念は杞憂になりつつある。
海外では日本の金融機関の融資を待ち望む声が続出し、一方国内では輸出産業が業績悪化に伴う格付け低下で社債やCPでの資金調達が不可能になってきたからだ。
シャープなどは格付けが投機的になって社債もCPも発行できなくなってしまい、パナソニックも赤字経営が続いて手許資金が急速になくなってピーク時の3分の1程度のかつかつの状況になってきた。

 こうなると今まで無視してきた金融機関だけが最後の頼りになる
まったくご無沙汰して申し訳ありませんでした。これからは二人三脚で融資をお願いいたします
お宅はいくらでも資金は集められるのではなかったですか。いや私どもでは海外から融資の申し込みが引っ切り無しでお宅に回す分はなかなか・・・・」なんて金融機関はいやみの一つも言えるようになり、ようやっと国債依存から脱却できる目処が立つようになった。

注)パナソニックは約5000億、シャープは約1800億のコミットメントライン(この金額を上限にいつでも金を借りられる契約)を設定した。

 こうなると今度は財務省があわてだす番だ。今までは他に運用機会がなかったので黙っていても国債の購入をしてくれたが、これからはそうはいかなくなって押し付け販売が始まるだろう。
メガバンクの資金を海外と国内の輸出産業それに政府が奪い合いになる構図になりそうだ。

注)かつて国債販売はシンジケート団が結成されて、自動的に購入させる体制があった。それを復活させるかも知れない。

 こうして今メガバンクの大復活が図られようとしている。円高の世界では(商品を売るのではなく)円こそが最大の輸出商品になる。
金融が思わぬ形で今日本の成長産業になろうとしている


なお、日本の金融機関の世界進出については以下に纏めてあります
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat45467292/index.html

またNHKスペシャルの「灼熱アジア」にも「みずほ」の奮闘振りが出ていた。
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/221119-nhk.html

 

| | コメント (1)

(24.7.25) ユーロが売られ再び円高が始まった。日本の金融政策は世界でもっとも健全だ。

20120713_155920

 ヨーロッパ経済はもぐらたたきだ。ようやくギリシャで緊縮財政派が勝利し、やれやれと思っていたら次はスペインになっている。
スペインでは金融機関が不動産融資に特化して資金が回収できなくなり、見かねたEUは10兆円の資金援助をすることにしたのに、今度は地方政府が倒産しそうになった。

 近々ムルシア州が中央政府に支援要請を行うとの観測が出されて、スペイン国債の利回りが7.5%まで上昇した。
すでにバレンシア州は支援要請を出しており次々に地方政府が中央政府になきついている。
しかしスペイン政府は財政が枯渇しているので地方政府の支援は国債発行になるとの読みで、一気に国債利回りが上昇した。

 
 さらに市場ではユーロが一気に売られて94円台のユーロ安に突入した。
日本ではトヨタが1円のユーロ安で年間50億円ソニー60億円キャノン48億円の営業利益が減少すると悲鳴を上げているが、一方で海外生産を強化したニッサンなどは平然としている。
日本に生産基盤を残している企業の12年度のユーロの想定レートは105円程度で、このまま推移すればトヨタ500億円の営業利益を失うことになる。

 想定レートが105円とは驚いた。ヨーロッパ情勢がどのように転んでも改善する兆しはないのだから、私だったら想定レートを100円以下に設定するがトヨタやソニーやキャノンの財務担当者はよほど金融センスがないのだろう。

注)上記は皮肉だが、日本の経営者は日本での生産継続を行うために想定レートを意図的に円安に設定し利益が出せる計画を立てさせる(財務担当者の責任ではない)。
しかし実際は大幅な円高に振れて結局は海外生産の拡大に追い込まれる。

 現在の円高が「経済実態を反映していない」とさかんに安住財務相は口先介入をしているが、円高と経済実態とは無関係で、関係するのは中央銀行の金融政策である。
現状はちょうど大恐慌後の世界の為替切下戦争と同じで、各国の中央銀行が紙幣を印刷して資金を市場にばら撒き通貨安競争をしている。

 今回のユーロ安はECBヨーロッパ中央銀行)がスペインの支援のために大量のスペイン国債を購入することになるとの読み(その分紙幣が印刷される)からユーロ安に向かっているので日本の経済実態などはまったく関係ない。

注)日本でも日銀が日本国債を直接購入すれば円安が進む。
一方で物価が急騰するので低所得者の生活を脅かし社会が不安定化する。


 従来から円高が進むと輸出産業を中心に為替介入の要請があったが、最近はそうした声も大きくなくなってきた。
一番の理由は輸出産業が日本の生産拠点を海外に移してしまったことと、昨年来貿易収支が赤字で日本全体としたら円高になればなるほど利益が増大するからである。
もし円高にならなければ原発停止に伴う火力発電所の燃料代が8%程度東京電力の消費者に対する値上げ分)で収まるはずがなかった。

注)11年度の貿易収支は2.6兆円の赤字で12年度上期は2,9兆円の赤字。完全に赤字体質が定着している。

 (輸入)商社などはこの円高で輸出産業が悲鳴を上げている分をはるかに凌駕する利益を上げており、ホクホクの状態だ。
また金融機関は再び世界の金融機関として再生しており、最近はイタリアの首相が「なんとかイタリア国債の購入をしてほしい」と懇願している。

 ヨーロッパの再生が覚束かず、アメリカは相変わらずサブプライムローンの足かせを引きずっているのだから、円高は日本再生のチャンスだ。
企業はM&Aを仕掛け、金融機関は世界の金融機関として地盤を固めるべきで、いつまでも「円高だから大変だ」なんて泣き言を言っている場合ではないだろう。
円高とは日本の金融政策が世界でもっとも健全だと言うことなのだから、こんなすばらしいことはないのだ。

なお、為替相場の推移に関する記事は以下のカテゴリーに纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat45690596/index.html


 

 

| | コメント (0)

(24.6.29) 日本の証券市場はインサーダー取引の温床 日興証券お前もか!!

 23624_025

 日本の証券市場
インサイダー取引の巣窟だと海外から指摘されてきたが、その都度証券会社は「ファイアーオールが厳格に適用され、インサイダー取引などあるはずがない」と反論してきた。
しかし今度ばかりは反論する気力がなくなっただろう。

 野村証券に続いてこんどはSMBC日興証券執行役員取締役となんら変わらない)がTOB(株式の公開買い付け)の情報を会社社長ら3名に漏らし、実際に数百万円の利益を得ていたとして逮捕された。
この執行役員は親会社の三井住友銀行からの出向者だが、銀行時代から会社社長と懇意で、企業情報を常時社長等に流していたことも判明しておりインサイダー取引の常習者のようだ。
野村証券の場合は一部の不心得者のしわざと言い逃れることもできるが、SMBC日興証券の場合は執行役員だから言い逃れは不可能だ。

注)なお野村証券のインサイダー取引については以下参照。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/24610-87f1.html


 もっとも現在の金融商品取引法では情報を単に流すだけでは罰則の対象にならず、見返りに利益を得ていたことが立証できないと訴追できない。
警察ではその見返りの利益があったことを立証しようと懸命にがんばっている(そうでなければ執行役員は無罪になる)。

 
 野村証券SMBC日興証券と次々にインサイダー取引が暴かれており、ようやく証券取引等監視委員会もまじめにインサイダー取引を止めさせる決心をしたようだ。
それまではたとえ垂れ込みがあったとしても監視委員会はそれによる東京市場に対する影響を考えて握りつぶしていたのが実態だ。
だめだ、一つをあげれば芋ずる式にインサイダー取引がばれてしまう。そうすると海外の投資家が日本市場を見放すので、知らないことにしておこう

 なぜこのようにインサイダー取引が横行するかと言うと、金商法は本質的にザル法で、インサイダー情報をどんなに流しても問題になるのはそれを利用して利益を得たものだけだから情報提供者は痛くも痒ゆくもないからだ。
君と俺の関係だ。秘密情報だけど教えちゃおう」なんてノリで教えている。

 そしてこうしたインサイダー情報の提供は日本では昔から常に行ってきたので、担当者はそれがインサイダー取引であることすら認識できなくなっている。
実際野村証券から情報を得て空売りを仕掛けた旧中央三井アセット信託銀行の担当者は、内部の調査に対し「あれ、それがインサイダー情報になるの? 本当!!」なんて回答をしている。

 やはり日本の証券市場は魑魅魍魎の世界なのだ。情報を知っているものはいたって簡単にその情報を知り合いに教えて不当な利益を上げさせ、そのキックバック現金か否かに関係なく)を得ることで私腹を肥やしている。
そしてこうした内部情報から遮断された投資家は常に鴨にされて資産をすり減らしている。

 思い出せば日本の高度成長期はどの株式も値上がりしたから、誰もが株を持ってさえいれば利益を上げられた。
しかしバブル崩壊後日本の株式は傾向的に値下がりし、日経平均はピーク時の4万円から8500円前後に落ちて、これからも値下がり傾向が続く。
こうした中で利益を得る唯一の方法はインサイダー情報を持つことで、一般の投資家の出る幕はなくなった。

 東京市場の活性化が歌われて久しいが、これでは一般投資家が日本株の購入を諦めて新興国の投資信託等に投資するのは当然だ。
そして年を追って保有額を増加してきた外国人もここ数年は26%前後のシェアに留まり、東証全体の売買代金は年を追って減少している
このままインサイダー取引を放置すれば東京市場そのものが存亡の危機に立たされそうになり、ようやく監視委員会が本腰をいれだした。

なお、日本株を素人が投資しても鴨のなるだけの事例は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/24610-87f1.html

(別件)「「おゆみの四季の道」のカウンター10000を加えました。
 

 

| | コメント (1)

(24.6,25) 日本の金融機関がふたたび世界のトップに躍り出た ムーディーズの格付け

Dsc01884

 再び日本の金融機関が世界のトップに躍り出た。
ムーディーズが21日に発表した世界の主要金融機関15社の格付の引下げの結果である。
今回引き下げられたのは米欧の主要金融機関で日本の金融機関は対象外だから、結果的に三菱東京UFJ三井住友世界のNO1の格付Aa3 上から4番目)になった。

注)かつてはほとんどの欧米の金融機関のランクは最上位にあったが、順位を落とし続け結果的に日本の金融機関が最上位になった。
なお、Aa3の格付けは他にHSBC、カナダ・ロイヤル銀行がある。

 日本の失われた10年の間、日本の金融機関の不良債権処理は「あまりに遅くあまりに少ない」と西欧から揶揄されてきたが、今や西欧こそがその非難にさらされている。
小泉内閣の頃竹中平蔵氏が、欧米の厳しい指弾を受けて日本の金融機関の徹底的な査察を行い不良債権を一掃させたのがここに来て効いてきた。
日本の金融機関の資産内容がもっとも健全だ」今はそう世界の格付会社が判断している。

 思えばバブルが崩壊する20年前までは、日本の金融機関は当たるところ敵なしだった。世界の金融機関の資金量の番付トップ10に日本の金融機関がずらっと並び、私が所属していた金融機関の順位は6位だった。
そうか、俺は世界で6番目の金融機関で働いているのか」誇らしく思ったものだ。

 しかしバブル崩壊後日本の金融機関の大凋落が始まり、世界での存在意義はないのかと思うほどまでに打ちのめされていたが、リーマンショック後今度は米欧の金融機関が勝手にひっくり返った。
その結果財政再建がなった日本の金融機関が再び世界のトップに躍り出ている。

 一般の人は格付が低下することが何を意味するか知らない。たとえば三菱東京UFJの格付が何であっても日本人であれば三菱の口座を解約しようとはしないし、預金の引き出しはしない。
国内においては何も変わりがないが、国外特にニューヨーク市場やロンドン市場での取引には格付けが絶対の威力を発揮する。

 一番問題なのは金融機関相互で資金のやり取りをする短期市場(インターバンク市場で、格付が低位の銀行は相手にしてもらえない。金がなくても誰も貸してくれないのだ。
また外為市場も同じでいくら円を持っていてもドルにもユーロにも代えてもらえなくなるか、非常に高い手数料を要求される。
いわば足元を見られるのだ。
こうなると海外に支店を出していても適正な金融機能を発揮できなくなるので顧客が離れていってしまい結果的にニューヨークやロンドンの支店を閉鎖することになる。

注)格付が低かった頃日本の大手金融機関はドルの調達で苦労した。私が所属していた金融機関はその当時最高位の格付けを維持していたので、日本の金融機関のためにドルを調達しては利ざやを稼いでいた。
担当者は「濡れ手に粟だ」と言っていた。


 日本の地方銀行の海外支店が次々に閉鎖されたが、それは上記の推移をたどって商売そのものが成り立たなくなったからだ。
しかし今やそのわだちを米欧の金融機関が踏んでいる
バンク・オブ・アメリカシティグループBaa2で上から数えて9番目でまたいつ政府資金の導入が図られるかというような状況だ。

注)日本の金融機関の中で野村だけは別格に悪く、格付はBaa3(上から10番目)で最低の投資適格要件になっている。
なぜ野村HDがこれほど苦悩しているかは以下参照。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat49538693/index.html

 ここに来て日本の金融機関の大攻勢が始まった。特にヨーロッパ系の金融機関がアジアから資金を引き上げて現金の手持ちを始めたため、シンガポールやバンコックやムンバイの市場で日本の金融機関は引っ張りだこだ
どうか、われわれに融資をお願いします。BNPバリバやクレディ・スイスはまったく融資をしてくれません。三菱東京さん三井住友さん、あなた方だけが頼りです」と言う状況だ。

 これは久々に訪れた日本経済再生のチャンスだ。輸出産業が崩壊した後はアメリカでもイギリスでも金融業が次の成長産業になったが、あまりに野放図な融資や投資を行って自分で自分の足にすくわれてしまった(日本は20年前にひっくり返ったが竹中平蔵氏が立て直した)。

 とても不思議な気がする。20年の歳月を経て再び昔の栄光が日本の金融機関に戻ってきた。ここががんばりどころだと思う。

なお、日本の金融機関に関する記事は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat45467292/index.html

| | コメント (0)

その他のカテゴリー

NHK NHK特集 超常現象 | NHK クローズアップ現代 | NHK コズミックフロント | NHK BS世界のドキュメンタリー | NHK ミクロの大冒険 | NHK NHK特集 | NHK NHK特集 ヒューマン | NHK NHK特集 病の起源 | NHK ためしてガッテン | NHK ためしてガッテン 老化予防法関連 | NHK ためしてガッテン 認知症関連 | NHK ハイビジョン特集 | NHK プロジェクトWISDOM | NHK ワールド・ウェーブ | システム facebook | システム Twitter | システム You-Tube | システム ウィニー | システム グリーティングカード | システム サイバー戦争 | システム スマートフォン・タブレット KDP | システム スマートフォン・タブレット・テレビ | システム ネット社会 | システム ブログ ココログ | スポーツ サッカー | スポーツ ロンドンオリンピック | スポーツ 大相撲 | スポーツ 東京オリンピック | スポーツ 野球 | ボランティア おゆみ野の森 | ボランティア おゆみ野の森 活動の交流 | ボランティア おゆみ野クリーンクラブ | ボランティア 地域活動 円卓会議 | ボランティア 教育指導 数学・理科・英語 | マラソン | マラソン ちはら台走友会  | マラソン ちはら台走友会 登山 | マラソン ウルトラマラソン | マラソン ハーフマラソン開催 | マラソン 四季の道駅伝 | リメイク版 夏休みシリーズ 23年 | リメイク版 夏休みシリーズ 24年 | リメイク版 夏休みシリーズ 25年 | リメイク版 夏休みシリーズ 26年 | リメイク版 夏休みシリーズ 27年 | 事件 中学生誘拐事件 | 個人生活 ヨガ | 個人生活 同窓会 | 個人生活 失敗記 | 個人生活 学校 | 個人生活 家族 | 個人生活 山崎書店 | 個人生活 散策 | 個人生活 数学 | 個人生活 文学入門 | 個人生活 日本人論 | 個人生活 映画 | 個人生活 映画鑑賞 | 個人生活 樹木剪定問題 | 個人生活 歩く会 | 個人生活 水泳 | 個人生活 演歌 | 個人生活 登山 | 個人生活 私の人生観 | 個人生活 自転車 | 健康 | 健康 坐骨神経痛 | 健康 眼病 | 健康 精神性胃炎 | 健康 老化対策 | 健康 難聴 | 旅行 サンチャゴ巡礼 | 旅行 ネパール | 旅行 ロドリゴとイェティ | 旅行 勝浦ビッグ雛祭り | 旅行 北アルプス縦断 | 旅行 自転車周遊記 | 旅行 蝦夷地周遊記 | 歴史 ローマ史 | 歴史 世界史 | 歴史 中国史 | 歴史 日本史 | 歴史 郷土史 | 災害 東日本大震災 | 災害 東日本大震災 メガクエイクⅢ | 災害 東日本大震災 地震保険 | 災害 東日本大震災 心に与える影響 | 災害 東日本大震災 政治 | 災害 東日本大震災 東電の経営問題 | 災害 東日本大震災 汚染水問題 | 災害 東日本大震災 経済 | 災害 熊本大地震 | 評論 世界 国連 | 評論 世界 地球温暖化 | 評論 世界 水資源問題 | 評論 世界 科学 | 評論 世界 自然保護 | 評論 世界政治 | 評論 世界経済 | 評論 世界経済 アフリカ経済 | 評論 世界経済 アメリカ経済 | 評論 世界経済 アメリカ経済 アフガン戦争 | 評論 世界経済 アメリカ経済 シェールガス・シェールオイル | 評論 世界経済 アメリカ経済 社会問題 | 評論 世界経済 イギリス経済 | 評論 世界経済 イタリア経済 | 評論 世界経済 インドネシア経済 | 評論 世界経済 インド経済 | 評論 世界経済 ウクライナ経済 | 評論 世界経済 オーストラリア経済 | 評論 世界経済 カナダ経済 | 評論 世界経済 カンボジア経済 | 評論 世界経済 ギリシャ経済 | 評論 世界経済 サウジアラビア経済 | 評論 世界経済 シンガポール経済 | 評論 世界経済 スペイン経済 | 評論 世界経済 タイの政治・経済 | 評論 世界経済 トルコ経済 | 評論 世界経済 ドイツ経済 | 評論 世界経済 ネパール経済 | 評論 世界経済 バングラディシュ経済 | 評論 世界経済 フィリピン経済 | 評論 世界経済 フランス経済 | 評論 世界経済 ブラジル経済 | 評論 世界経済 ベトナム経済 | 評論 世界経済 ポルトガル経済 | 評論 世界経済 ミャンマー経済 | 評論 世界経済 ヨーロッパ経済 | 評論 世界経済 ロシア経済 | 評論 世界経済 ロシア経済 プーチン | 評論 世界経済 中国経済 | 評論 世界経済 中国経済 不動産投資・統計 | 評論 世界経済 中国経済 政治情勢 | 評論 世界経済 中国経済 社会問題 | 評論 世界経済 中国経済 社会問題 尖閣諸島 | 評論 世界経済 北朝鮮経済 | 評論 世界経済 北朝鮮経済 政治情勢 | 評論 世界経済 台湾経済 | 評論 世界経済 外国為替・金 | 評論 世界経済 石油問題 | 評論 世界経済 石油問題 イラン関連 | 評論 世界経済 経済成長 | 評論 世界経済 金融問題 | 評論 世界経済 韓国経済 | 評論 世界経済 韓国経済 社会問題 | 評論 世界経済 韓国経済 竹島・従軍慰安婦 | 評論 世界経済 食糧問題 | 評論 中東・アフリカ アラブの春 | 評論 中東・アフリカ アラブの春 エジプト | 評論 中東・アフリカ アラブの春 シリア | 評論 日本の政治  八ツ場ダム | 評論 日本の政治 ノーベル賞 | 評論 日本の政治 人口問題 | 評論 日本の政治 公共事業 | 評論 日本の政治 内部告発者保護法 | 評論 日本の政治 医療行政 | 評論 日本の政治 危機管理 | 評論 日本の政治 原子力行政 | 評論 日本の政治 地方政治 | 評論 日本の政治 地方政治 大阪 | 評論 日本の政治 地方政治 東京 | 評論 日本の政治 大学入試改革 | 評論 日本の政治 学校問題・子育て | 評論 日本の政治 安倍内閣 | 評論 日本の政治 安倍内閣 TPP交渉 | 評論 日本の政治 安倍内閣 外交政策 | 評論 日本の政治 小沢裁判 | 評論 日本の政治 年金制度 | 評論 日本の政治 教育問題 | 評論 日本の政治 新聞報道 | 評論 日本の政治 普天間基地 | 評論 日本の政治 東京オリンピック | 評論 日本の政治 生活保護政策 | 評論 日本の政治 石原都知事 | 評論 日本の政治 確定申告 | 評論 日本の政治 航空行政 | 評論 日本の政治 菅内閣 | 評論 日本の政治 著作権法 | 評論 日本の政治 観光行政 | 評論 日本の政治 警察機構 | 評論 日本の政治 農業政策 | 評論 日本の政治 選挙制度 | 評論 日本の政治 野田内閣 | 評論 日本の政治 陸山会事件 | 評論 日本の政治 領土問題 | 評論 日本の政治 食糧問題 | 評論 日本の政治 24年度衆議院選挙 | 評論 日本の政治・経済 | 評論 日本の政治・経済 将来像 | 評論 日本の政治・経済 歴史 | 評論 日本の政治・経済 高速鉄道 | 評論 日本の経済 AIJ、MRI詐欺事件 | 評論 日本の経済 JRの経営 | 評論 日本の経済 アクリフーズ | 評論 日本の経済 イオン | 評論 日本の経済 エルピーダメモリ | 評論 日本の経済 オリンパス | 評論 日本の経済 シャープの経営問題 | 評論 日本の経済 ソニー | 評論 日本の経済 ソフトバンク | 評論 日本の経済 トヨタ自動車 | 評論 日本の経済 マクドナルド | 評論 日本の経済 不動産価格 | 評論 日本の経済 医療分野 iPS細胞、STAP細胞 | 評論 日本の経済 外食産業 | 評論 日本の経済 宇宙ビジネス | 評論 日本の経済 安倍内閣 経済政策 | 評論 日本の経済 安倍内閣 金融政策 | 評論 日本の経済 家電業界 | 評論 日本の経済 就職問題 | 評論 日本の経済 日本再生 | 評論 日本の経済 日立製作所 | 評論 日本の経済 旭化成建材 | 評論 日本の経済 東芝の会計処理 | 評論 日本の経済 海運業界・造船業界 | 評論 日本の経済 為替相場 | 評論 日本の経済 経済成長 | 評論 日本の経済 経済成長 医療分野 | 評論 日本の経済 経済成長 観光産業 | 評論 日本の経済 経済成長 GDPの計測 | 評論 日本の経済 総合商社 伊藤忠商事 住友商事 | 評論 日本の経済 自動車産業 | 評論 日本の経済 航空機産業 | 評論 日本の経済 証券市場 | 評論 日本の経済 詐欺 | 評論 日本の経済 財政金融政策 | 評論 日本の経済 野村証券 | 評論 日本の経済 金融機関 | 評論 日本の経済 金融機関のシステム障害