(27.7.7) ギリシャ悲劇とヨーロッパ統合の挫折 「EU、ユーロもここまでか!!」
新たなギリシャ悲劇が誕生した。主人公はチプラス大王といい、幻想にかられてオリンポスの神ユーロと戦い、最後に悲劇的死を遂げる物語である。
チプラス大王は群衆に向かって叫ぶ。「我に力を与えよ、ユーロを打ち負かす力を与えよ、、雄たけびを上げよ!!」
群衆は歓喜してチプラス大王を支持したが、実際はチプラス大王にはたたかうべき剣もなく、やむなく竹光を仕込んで巨人ユーロの勇者メルケルと戦うがすぐに竹光と見破られ、その竹光でもって首をのこぎり引きされて息絶えたという話である。
今回の国民投票ではユーロの提案にNO(オーヒ)と投票した人が61%にのぼった。
「これ以上の緊縮財政は耐えられない」ということだが、今まで公務員給与が支払われ年金も支払われていたのは33兆円規模の財政支援をEU等から受けていたことを忘れている。
今回の国民投票を経てチプラス首相は33兆円の棒引きを主張するだろうが、この主張にEUがすんなり応じるわけはない。
実際はギリシャには返済する資金などどこにもなく、ただひたすらユーロ(EU、ECB、IMF)から借り替えていたのに過ぎない。したがってユーロの借り替え資金がなくなれば自動的に返済は不可能になりデフォルトに陥る。
すでにIMFに対する2200億円は踏み倒しており、7月に来るECBに対する返済資金9500億円も当然踏み倒すだろう。
そしてユーロ側が新たな支援をしなければ、ギリシャに残された手はギリシャ国家の借用証書(ギリシャ通貨)を発行するよりほかはなくなる。
「さあ、公務員も年金生活者もドラクマを使用しよう。この通貨は古代ギリシャで用いられていた由緒ある通貨だ!!」とチプラス首相は言うだろうが、現実には誰もこの通貨を見向きもせずすぐにユーロかドルに交換されてしまう。
ギリシャがあくまで強硬策に出ればユーロも妥協するわけにいかないから互いににらみ合いが続き、借金返済はできないから結局は33兆円は踏み倒されることになる。
「もう仕方ない、33兆円は勉強代だ。ギリシャのことはほっておこう」
ギリシャはユーロにとどまってはいるが、ユーロからは村八分にされて実質ユーロから離脱したも同然になる。
国内の物価は高騰し生活はさらに苦しくなるがもうユーロからの支援はなく、ギリシャは昔のギリシャに戻るだけだ。
一方ユーロから見るとこのギリシャ悲劇は同時にユーロの悲劇になる。ここまで拡大を続け19か国が使用しているが、とうとうユーロの拡大に限界が到達した。ヨーロッパは統合から離散に舵を切り始めた。
EUやユーロは簡単に言えばドイツとフランスの連合体だが、イギリスではすでにキャメロン首相がEUに残るかどうかの国民投票を行うと言明している。
ヨーロッパはEUの旗のもとに通貨も経済もそして政治の統合までも目指したが、通貨統合で限界を示し始めた。
「ヨーロッパの復活もここまでだったのか・・・・・・・」再びヨーロッパに深い霧が立ちこみ始めた。
注)古代ローマにおいてもユーロと同様なこれ以上の拡張が不可能な時代に遭遇したのがハドリアヌスの時代である。ハドリアヌスはラキア(今のルーマニア)の土地の放棄を主張したが元老院から拒否された。具体的には以下参照。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/23720nhk-c973.html
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