(29.3.15) 軍事と資源だけのロシアはどこまで生き続けられるだろうか。
ロシアは軍事力と資源が突出しているが、通常の経済力は貧困のままであり原油や天然ガス価格の推移でロシア経済は大揺れになる。
2014年ごろまでは原油価格が年平均100ドル程度だったので国家予算は大盤振る舞いで軍事費も民生費も大幅に増額され、プーチン氏の指導力は盤石だった。
しかし15年に入ると原油価格は年平均50ドル程度になり、さらに16年には年平均40ドルまで低下したためロシア経済はジェットコースターのように落ち込み、15年16年とマイナス成長を余儀なくされてしまった。
物価は上昇し生活は日を追って悪化していたので、こうしたときは国民の目を海外に向けさせないと生活苦の不満が一斉にプーチン政権に向かってくる。
15年10月からシリアのIS拠点の空爆を開始したのはそのためだが、特にロシア海軍がカスピ海から巡航ミサイル26発を発射させ、1500kmの距離を飛行して目標に正確に到達したのには世界中が目を見張った。
これはアメリカのトマホークの能力に匹敵しその映像を見たロシア人が狂喜していた。
インタビューを受けたロシア人が「生活は苦しいが我が国の軍事力はアメリカに負けない」と小躍りしていた映像を思い出す。
その後も地中海に展開した空母からの空爆を実施する等ロシア軍の軍事力は世界一流であることを証明している。
プーチン氏にとって国民の生活苦を忘れさせるためには赫々たる戦果が必要でこれは旧日本軍の大本営発表と変わりがない。しかもロシア軍の空爆は大本営発表と違って本物だからすっかりロシア人は舞い上がってしまった。
然し実際は15年16年と続いた原油価格の低迷によりロシア経済はガタガタになっていたのだ。
国家予算は過去の原油価格上昇時に積み上げた基金により何とか維持してきたが、それも限界に達し16年の予算では軍事費は増額したが民生費は一律10%減額している。
さらにクリミアを併合しウクライナ東部を実質支配下の置こうとした行動は特にEU諸国が強く反発してロシア制裁が実施されているため西欧との輸出入に支障をきたしている。
ロシア制裁の中身は軍事技術と原油等掘削技術のロシアへの提供禁止と金融制裁だが、前者はロシアそのものがとびぬけた軍事技術と資源開発技術があるためほとんど制裁になっていない。
制裁の中で最も効果があるのは金融制裁でロシア政府やロシヤの大手企業がヨーロッパやアメリカで資金調達をすることができなくなっている。
自己資金だけで経営を行っている企業のようなもので、市場からの資金調達ができないと企業規模の拡大はできないがちょうどそのような状況に陥っている。
簡単に言えば真綿で首を絞められたまま呼吸しているようなものだ。
ロシアにとって幸いなことに17年に入り原油価格は50ドル前後に回復したため17年度のGDPは3年ぶりにプラスになると予測されているがそれも市場次第だ。
トランプ政権が意図的にシェール石油やシェールガスの増産を奨励するような措置をとれば瞬く間に原油価格は40ドル程度に落ちるから、これではロシアの成長はおぼつかない。
ロシアやサウジアラビアが日本との経済連携を求めて動いているのは、原油価格の決定権をアメリカのシェール産業に奪われて自主的に価格を決定できないからで、「このままでは翻弄される笹船になってしまう」危険性におびえているからだ。
ロシアは軍事と資源だけの経済で今後もこの基本構造が変わるとは思われないので、ロシアの将来は明確でない。資源価格次第だとしか言えないのが実態だ。
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