評論 世界経済 ヨーロッパ経済

(27.9.15) 難民受入でEUが崩壊する。 国境検問所の再開

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 そうは問屋がおろさなくなってきた。EUが受入可能なシリア難民の数である。当初は4万人ということになっていたがシリア難民が大挙EUに押し寄せたので、これを16万人に増やした。
しかしこの数字もまた変更になるだろう。
何しろいまEU国内にいるシリア難民はすでに40万人に達し、さらにトルコとヨルダン国境には約400万人のシリア難民が機会さえあればヨーロッパに押し寄せようとチャンスを狙っている。
さらシリア国内にも国内難民が約700万人はいると推定されている。合計では1100万人を越える。

 こうしたシリア難民が大挙してEUに押し寄せ始めたらEUはパニックに落ちる。
何しろ16万人の受け入れについても、前向きなのはドイツとフランスだけで、イギリスはいやいやながらの参加だし、他の諸国特に東欧圏は「絶対に反対だ」といっている。
ドイツは各国別に難民の受け入れ人数を割り当てようとしているが、それが可能だとしても16万人分しかない。
すでにEUに入りこんだ40万人には到底及ばないのだ

 イラクやアフガニスタンからの経済難民は母国に強制送還だが、シリア難民は強制送還するわけにはいかない。ここは戦闘地域でNATO軍も先頭にたって参加している紛争地帯だ。
シリア人はみんな政治難民です」というのが建前になっているので追い返せないのだ。
こうした情報はすぐにトルコやヨルダンの難民キャンプで絶望的な日々を過ごしているシリア難民に伝わる。
彼らがトルコやヨルダンにとどまっているのは密航斡旋業者に支払う金がないからだが、一家の誰かがドイツに入国さえできればそこから密航費用を送ってもらえる。
だからEUが16万人の入国枠を認めれば、あとは怒涛のように難民が押し寄せることは間違いない。

 だが現状で難民受け入れが可能な経済状況の国はドイツしかない。フランスなどは経済が低迷し国内に若者の失業者があふれかえっているのに無理を承知で受け入れるという。EUの盟主の地位を完全にドイツに奪れたくないからだ。
だがその他のスペインやポルトガルやイタリアも経済は超低空飛行だし、まして東欧圏のポーランドやハンガリーやチェコやバルト3国などは経済そのものが崩壊している。
こうした国の人々はドイツやイギリスに出稼ぎをすることによってかろうじて生活しているのだからシリア難民とさして変わらない。
シリア難民は東欧圏の人々にとって競争者だし、フランスやスペインやポルトガルの若者にとっても同じだ。
ドイツの職場はEUのものだ・・・・・」東欧と若者の本音だ。

 テレビ報道などを見ていると受け入れ賛成派のデモが頻繁に取り上げられており、EUはシリア難民に寛大なように見受けられるがこれも今のうちだけだ。
膨大な数の難民がドイツに来ればドイツの経済負担も膨大になる。
大人であれば最低限の生活保障と職業訓練でなんとかドイツの下級労働者にすることができるが子供はそうはいかない。
当然義務教育訓練をしなければならないし、小学校から大学までなら16年前後はかかる。それまでの教育費の負担や生活保護の負担はすべてドイツ政府のものだ
現在ドイツ政府が用意している難民関係予算は1兆3000億円程度だが、これはせいぜい受入れ数を4万人から6万人程度に想定しての予算規模だ。
ドイツ政府の予測では本年度約80万人の難民申請があることになっているが、もし全員を受け入れたら予算規模は26兆円規模になる。
日本の国家予算が年間約100兆円だから、この金額がいかに膨大か分かるだろう。

 今後EUにとって最大の課題はこの難民問題になる。それに比較すればギリシャの債務問題などうでもいいように思えるほどだ。
EUは難民受入賛成派と反対派が鋭く対立して身動きができなくなるだろう。
当然ドイツは世界中で難民を受け入れてほしいと国連等で嘆願するだろうが、もともと愚かにもアサド政権を打倒しようと軍事行動を起こしたのはEUとアメリカだから今の状況は自業自得ともいえる。

 私は前にもかいたが、独裁政権は決して打倒してはならない。独裁政治でも最低限の生活保障はあるので少なくとも難民になるほど困窮してはいない。かえって経済的には安定していることが多い。
もちろんそうした抑圧体制に我慢ならない人々はいるが、その場合は個人的に逃散すればいいので手段はいくらでもある。
独裁政治を嫌って逃げ出した人程度の難民保護ならばどこの国でも簡単にできる。

 しかし反対に独裁政治を倒して内戦が始まるともうどうにもならない。シリアだけでも国外国内に合わせて1100万人程度の難民が発生し、これにイラクやアフガニスタンやリビアの難民を加えると数千万人の単位となる。
これがヨーロッパに押し寄せるのだからかつての西ローマ帝国を打ち倒したゲルマン民族の大移動並みになる

 現在はまだ難民受け入れ派の勢いが強いが、時間が経つにつれて現実に目覚め国境に検問所を設けることになるだろう。
現在ハンガリー、チェコが鉄条網を張り巡らしているが、ドイツもオーストリアとドイツの国境で検問所を設けることにした。
EUから国境がなくなって久しいが、今また国境検問所が復活しつつある。人道主義は過ぎると国家そのものへの崩壊につながる危機感を各国が感じ始めたからだ。
心の優しい人が国家を崩壊させ、冷たい人が国家を守る」それが現実なのだ。

 

 

 

 

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(27.1.24) EUも量的緩和の戦線に参加した!! 「なんでもいいから紙幣を印刷しろ」

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 インフレ
がいいかデフレがいいかは立場によって全く違う。インフレということは商品価格が上昇するのだから生産者にとっては福音だが、一方で消費者にとっては生活苦につながる。デフレはその反対で消費者には天国だが生産者にとっては地獄だ。
したがって経済学では長い間物価上昇ゼロ%がベストでインフレもデフレも好ましくないといわれていた。
日銀も長い間そうした立場で前白川日銀総裁は、インフレターゲット論には断固反対していた。

 現在の黒田日銀総裁2%のインフレ目標を設定しそのためには異次元の金融緩和を行うと何度もアナウンスメントしてきたが、これは「自分は生産者の立場に立って企業業績を引き上げるのを使命とし、消費者の立場など知らない」といっているのと同じだ。
インフレ論者もデフレ論者も実はその時の状況によって評価が分かれ、絶対的にどちらが正しいというような基準はない。
現在の日本は長い間デフレが続きその結果経済活動が縮小してきたので「このままでは日本の経済そのものが崩壊する」という危機感に立っておりその限りではインフレターゲット論は正しい選択といえる。
一方でインフレが高進してハイパーインフレの恐れがあるような時にはインフレ論者は論外になる。

 今回欧州中央銀行ECB)が長い逡巡の後、アメリカと日本が採用した量的緩和に乗り出すことになったが、これは日本の失われた20年のデフレを見て、EU経済もその失われた20年に突入したら大変だと判断したからだ。
日本は失われた20年の間、財政出動と金利引き下げというケインズ政策でしのごうとしたが、このケインズ政策がもはや効果を発揮せずただ赤字国債を積み上げただけだった。
なぜケインズ政策が効果がなかったかというとすでにインフラなどは十分すぎるくらい整備されていてこれ以上の道路建設は熊の遊び場になり、ダムの建設は水鳥のサンクチャアリになり、飛行場はトンボが飛び交う草原になるだけで、かえってその維持費の捻出で経済が逼塞したからだ。加えて金利は十分すぎるほど引き下げてこれ以上の引き下げなど不可能なゼロ金利になってしまった。

 「ケインズ政策がまったく効果がない!! 一体どうすればいいんだ!!」
その回答が金融の量的緩和で簡単に言えばインフレを起こして花見酒の経済を作りだそうということだ。
21世紀に入って先進各国はすっかりケインズ政策を諦めFRBはただドルを印刷して市場にばらまく方策に変えた。この効果は不要なものの価格が上昇するということで株価と不動産と石油や銅や石炭というコモディティ価格を押し上げ、それによって得たあぶく銭で富豪層が豪遊を始めるので経済が回復するというシナリオだった。
ただ紙幣を印刷するだけだからこれほど簡単な政策はないが、問題点もあってやりすぎるとハイパーインフレになって制御できなくなる。

 働き者で生真面目なドイツ人はこうした紙幣印刷経済に反対し「真面目に働いてこそ経済は発展する」とといてきたが今は聞く耳を持つ人はいない。
やだ、なんでもいいから金をばらまいて経済成長をはかれ」世界の先進国の大合唱になっている。
何度も私は言ってきたが先進国経済は十分に発展してきたので実は成長限界に達している。これ以上成長してどうするのという状況下ではGDPは停滞し、新規雇用は生まれないから失業率は上昇する。それを運命と諦めるか、反対に無理やり株と不動産と言うそれ自体何の価値もない金融商品の価格を上げることで成長を演出するしか他に方法はない。

注)不動産も単に値上がり益を狙った売買は金融商品という。

 量的緩和のもう一つの効果は自国通貨の通貨安が発生することでそれによって輸出が伸びる。現在の世界は1930年代の為替切り下げ競争と同じでかつては直接為替レートを引き下げたが今は金融の量的緩和で行っているに過ぎない。
まずアメリカが実施し日本が追随し、今EUがこれに倣った。確かに円安が劇的に発生したから日本の輸出産業は自動車を中心に急回復しており、今度はユーロの価値が劇的に下がりドイツ経済をうるおすだろう。


 量的緩和の先進国アメリカではこれによって金持ち階級がより裕福になり99%は貧困化した。日本もそうなるだろうしEUも同じだ。
繰り返すがもはや成長限界に達した経済では金持ちをより金持ちにさせることでしか経済成長は望めない。

経済成長などもう望まない」といい切れれば話は解決するが、実際はそう言いきれないのが人間のサガでこれを経済成長のパラドックスという。
経済成長をすればするほど貧乏人のウェイトが増える、それが問題だ!!!」ということだ。

 

 

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(27.1.18) スイス国立銀行の変節 もうユーロは買い支えない!!

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  こういうのを晴天の霹靂というのだろう。静かだと思っていた池に突然大石が投げ込まれ池で遊んでいた水鳥が一斉に騒ぎだしたような騒動だ。
スイス国立銀行が突然固定相場を止めるとこの15日に発表し、1ユーロ=1.20スイスフランの相場がいつまでも続くと思っていた投資家がパニックに陥ってしまった。

 スイスという国は特別な存在で、あらゆる資金がスイスに集まってくる。弱気になったヘッジファンドが一時的に資金を避難したり、中国やロシアの富豪が政府に内緒の金を預けたり、アフリカや中南米の独裁者が自身が国から追い出された時の隠し金などを預けたりするので放っておくと預金だらけになってしまう。
集まった資金の使用先があればいいが集まりすぎた資金はどうにもならない。
さらに問題は資金が殺到するとスイスフラン高が留まることなく高進して、国内の時計産業や薬品産業等の製造業を圧迫する。日本の最近までの円高と同じだ。

 スイスはこうしたスイスフラン高にたまりかねて先進国としては異例な固定相場制を採用した。2011年9月1ユーロ=1.20スイスフランに固定しもしスイスフラン高になるようならユーロを無制限に買い支えると発表した。
そして同時に「もうこれ以上預金はいらない。もし預金したければペナルティーを払え」と預金者から手数料を徴収してきた。
おかげで1ユーロ=1.20スイスフランの相場が維持されていたから世界の投資家はスイスフランは固定相場だと思っていた。

 だがこうした措置には最初から限界がある。
ユーロは安くなるばかりでスイス国立銀行が投入する資金は増大し、その結果買い支えたユーロはその都度目減りしていく。
しかもユーロはさらに安くなる要因が目白押しで、ギリシャの総選挙で与党が敗北すればユーロからの借入金は踏み倒されるし、ギリシャがこければスペイン、ポルトガル、イタリアと言ったラテン系諸国の踏み倒しが始まる。

 ヨーロッパ中央銀行ECB)はこうした危機状況下でドイツを説得して日銀並みの金融緩和策に実施する腹固めをしたので、「何かあったらユーロを売ってスイスフランに逃げ込め」とヘッジファンドはユーロ売りの機会を狙っていた。
そこにスイス国立銀行が「もうユーロを支えない」と発表したのでユーロのパニック売りが始まった。
一時ユーロは対スイスフラン対比30%も値下がりしたが、さすがにそこまでは売られすぎで今は10%から20%の値下がりにとどまっている。

 ユーロの値下がりはさっそく円にも反映し、円はユーロ対し円高基調に反転した。当面最も弱い通貨はユーロだから相対的にましな円が買われるという構図だ。
通貨の交換レートはすべて相対的なもので絶対的に強いとか弱いとかいうようなものがないからユーロが弱くなれば円が強くなるだけに過ぎない(通貨は単なるバランスだという感覚が大事)。

 現在は世界中で通貨の切り下げ競争を行っており、最初はFRBが、続いて日銀が、そして最後に残ったECBがこの通貨安競争に参入しようとしている。
資金は世界中でだぶつきその資金がスイスに殺到したのでスイスが根をあげてしまったのが現在の状況だ。

 このショックで特にFX取引で損失が出ている。スイスフランを固定相場と思って投資をしてきたからで大手のFX業者が倒産しそうになっている(日本でもFX取引をしていた人は真っ青だ)。アメリカ政府も乗り出してこうした業者を支えているがリーマンショックの二の舞にならないための措置だ。
しばらくすればスイスショックも吸収されて落ち着くだろうが、ユーロがユーロ安政策に転換するので日本の円安が無限に続くという前提は崩れ始めている。

注1)金融取引とは本質的にゼロサムゲームだから誰かが得をすれば誰かが損をする。今まではスイス国立銀行がユーロを買い支えて1人損失をかかえていたが、それが今度はFX業者が損失を抱えることになったのに過ぎない。

注2)なおスイスショックに先立って長期金利が劇的に下がっていたことは前に記載した。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2015/01/post-ac4d.html

 
 

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(26.10.31) ヨーロッパ経済の暗雲 「このままでは大恐慌時代に逆戻りだ!」

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 ここに来てヨーロッパ経済に暗雲が垂れ込め始めた。地震でいえば余震が発生して大地震の前触れではないかと危惧される状況だ。
余震は二つの波を伴っており、一つはGDPが全く成長しないかあるいは低下していること、もう一つはそれと裏腹だが物価がマイナスに転じ始めたことである。
特にスペイン、ポルトガル、ギリシャと言った南欧諸国の物価低下が著しく、フランスもドイツも1%以下であり、ECBが目標としている2%にはるかに及ばない。

 ヨーロッパの政策担当者からは悲鳴が上がっており、フランスのパルス首相は「ヨーロッパ経済は異常な状態で、それは弱い成長と深刻なデフレだ」と述べているし、ポーランドのシュチュレク財務相は「ヨーロッパはデフレの瀬戸際にある。われわれヨーロッパ人は75年前に不況とデフレが全体主義体制に権力を与え、世界大戦で大陸を破壊したことを忘れてはならない」とナチスを持ち出して警告した。

 実際ヨーロッパでは選挙を行うたびに右翼政党が躍進しており、右翼政党のスローガンは「移民の排斥とEUからの離脱」だから、シュチュレク財務相の警告が現実のものになりつつある。
デフレになると経済活動は停滞し企業はより経済が活発な新興国に出ていってしまうので国内から職場が消えてしまう。その残された職場は賃金の安い移民労働者が埋めてしまうので、ヨーロッパの若者には職場がなくなる。
我々に職場を与えろ」がギリシャの大学生のストのスローガンだ。

 今やフランスやイタリアやスペインと言ったGDPが停滞している諸国は緊縮財政を放棄してECBに紙幣印刷経済の導入をすべきと口をそろえているが、これに断固反対しているのがドイツだ。
ドイツ人はその性格からして質実剛健で労働を好み、南欧諸国の国民のような遊んで金儲けをしようという態度を好まない。
だめです、財務赤字はGDPの3%以内に抑えるべきだし、ECBの印刷経済なんてとんでもない。そんなことをすればリーマン以前に逆戻りです」メルケル首相は一歩も引く気配がない。

 確かに印刷経済に突入するとアメリカがそうであるように株価や不動産価格は上昇してGDPは増加する。日本でも安倍政権がこの印刷経済に入ったとたん株価は急上昇し、また長期低迷していた不動産価格が上昇し始めた。
高度に発展した先進国経済にはそれ以外の投資物件はほとんどないので、市中にばらまかれた資金は株と不動産投資に集中する。
こうした物件も売買されて利益が出ればGDPにカウントされるから、一見すると経済は好調のように見える。

注)アメリカはさすがに印刷経済が行き過ぎたと通貨膨張策をストップさせた。

 だが反対に言えば高度に発達した先進国経済を伸ばすのはこれしかなく、通貨供給という麻薬で一時的なユーフォリアに浸る以外にないのだ。
トインビーがいったように文明は生まれ成長し繁栄した後は衰退する。一方的な繁栄の継続はあり得ないのだが、そのあり得ない継続を行うために印刷経済を半永久的に続けるのがこの資本主義経済の宿命だ。
かくしてヨーロッパもアメリカと日本の轍を踏もうとメルケル首相の尻をせっついている。

注)ドイツの苦悩については先日記事を記載しておいた。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-b2f9.html

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(25.6.3) EU経済の不調と金融緩和策 資本主義はインフレでないと生き残れない

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  資本主義体制
は常にインフレを起こさないと生き延びることが難しいようだ。
ユーロ圏ではドイツをはじめとする緊縮派が、各国の財政赤字をGDPの3%以内に抑えるように経済を運営してきたが、経済は失速し完全に負のスパイラルに入っている。
13年1月〜3月のGDPは▲0.2%だったが、これは6四半期連続でマイナスであり、おかげで失業率は4月に12.2%と過去最高を記録してしまった。

 この失業率は平均だから、若者だけに限ってみると24%でユーロ圏の若者の4人に一人は失業している。
不動産バブルがはじけたままのスペインではさらにひどく、失業率は27%でスペインの若者だけに限れば50%程度だから、これでは若者が暴動を起こすのも無理ない。
緊縮ばかりで仕事を創出しない政治家は無能だ!!!!」

 しばらく前まで緊縮派の一員だった日本も、アベノミクス以降日銀が国債をほぼ無制限に購入しているので、すっかりインフレモードになり景気が上向いてきた。
ほれ、見てみろ。日本が財政規律を放棄して金を擦りまくったら、景気が回復したじゃないか。ヨーロッパもまねるべきだ

 フランススペインイタリアと言ったとても緊縮財政についていけない国々がドイツを突き上げたので、メルケル首相とオランド大統領が手打ちをして、しばらく緊縮財政はやめることにした。
各国にGDP対比3%以内にするのは1〜2年の猶予を与えるといものだが、その間は国債を発行して財政の穴埋めをするのだから、実質的に緊縮財政は棚上げされたようなものだ。

 なぜ緊縮財政だと資本主義が持たないかというと、政府が金を使わないと実際に使うセクターがないからだ。
現実は日本もヨーロッパも公共投資などは昔から十分に行ってきており、これ以上公共投資をしても維持費のほうがかかってしまう状況下におかれている(ヨーロッパなどはローマの昔から公共投資を行ってきた)。

 それでも公共投資をするのは当座の仕事ができるからで、失業対策にはなるし企業は利益を上げられるので、将来のことは二の次にして取り合えず、困った時の公共投資になる。
そしてその資金は国債を発行して賄い、その国債の購入は実質的に日銀が行っているのだから、これは日銀が金を印刷して渡しているのと何ら変わりがない

 当然インフレ基調になり株も不動産も値上がりして、市場にアクセスしている人の懐は豊かになるが、一方預金者や年金生活者や公務員と言った層のインフレ利益が得られない(あるいは非常の遅くに得られる)人々は生活苦にあえぐようになる。

注)消費者物価には株価や不動産の値上がりはカウントされない。だからそれほど物価が上がった感じはしないが、実際は株も不動産も商品だから、それを加味すると金融緩和により急激に物価は上昇している。

 しかしそれでも政府がインフレ政策を推し進めるのは、それがもっとも簡単な景気刺激策だからだ。
公共投資でも福祉予算でもなんでも増額するぞ。金は日銀が印刷してくれる。インフレになれば国の借金がチャラになるから、いくらでも日銀券を印刷しろ

 インフレは資本主義の宿アだと思う。十分に発展した資本主義国はそれ以上発展しても仕方のない段階に達するが、経済が成長しないと新規にこの体制に入ろうとする若者には職場を用意できない(年寄りがなかなか引退しない)。

 そこで無理やりに職場を創設するには政府が無駄な投資をして仕事を創設するしか方法がなくなる。しかしそのためには資金が必要で国債を発行するが、そのファイナンスは日銀が行う。
結局紙幣を印刷するだけだし、経済そのものはいらない仕事で回転しているだけだから、資金の回収はできない。
しかし、幸いなことに紙幣の増刷はインフレを引き起こすから、政府の借金は必然的になくなる。

 私が資本主義体制はインフレなくして生きられないというのはそのことで、実際アメリカも日本も、そして堅物のEUも全くふんどしのひもを緩めてしまい、世界中がインフレの花見酒に酔いしれることになってしまった。

 こうしたインフレ経済は常に行き過ぎてリーマン・ショックのようなクラッシュが発生するが、これも資本主義体制の宿アと言える。
この体制に終止符を打てばまた異なった社会(これを新しい中世という)が見えてくるが、当面は世界中が花見酒に酔いつぶれるより仕方ない状況になってきた。

注)新しき中世については前に以下の記事で述べておいた。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-4a0a.html

またヨーロッパ経済については以下にまとめて記事が入っております。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43160490/index.html






 

 

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(25.3.20) 預金者からは課徴金を取れ キプロス問題が火を噴いた!

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 ヨーロッパ経済
はほとんどモグラたたきだ。ギリシャだ、スペインだ、イタリアだといっていたがその都度ECB欧州中央銀行)が何とか押さえていたが、今度はキプロスが火を吹いた。

 キプロスなんていわれても一般の日本人はこの国をイメージしにくい。人口は100万以下面積はオキナワ程度の小さな国で、地中海の東の端にある国だから、本来ヨーロッパ経済に与える影響など皆無のはずだった。
ところがキプロスは観光業の他に金融業がメイン産業であり、はっきり言えばカリブ海のケイマンのようなタックスヘイブンの国だ。

 ここにロシヤ東欧の金持ちの資金が流れ込み、その資金を高利回りのギリシャ国債に投資をして金融機関は高収益を上げていた。
ユーロの一員のギリシャへの投資ですから絶対安全です」がうたい文句だったが、そのギリシャで不正経理が発覚して、ついにギリシャ国債の約5割の債権放棄が実施され、キプロスの金融機関が倒産の瀬戸際に追い込まれている。

 現在キプロスの全金融機関の預金は700億ユーロ約9兆円)だが、キプロス国民の預金はその半分で、残りはロシアや東欧やイギリスの金持ちの預金だ。

 今回キプロスの金融機関支援にECB100億ユーロ1.3兆円)の資金援助を決めたが、その見返りに銀行預金者に約10%の課徴金を科すことにしたので大騒ぎになってしまった。
銀行預金は利息をもらえると思っていたら、反対に罰則金か!!!」
キプロス国民が一斉にATMに押しかけたのでATMの現金が底をついた(19日から課徴金が科せられることになっていたのでその前に降ろそうとした)。

 キプロス国民も納まらないが、ロシア人も腰を抜かさんばかりに驚いた。
せっかくためた金をキプロスに隠していたのに、これでは金の逃げ場所がないではないか!!」

 プーチン大統領は「不公平で専門的な規範に反していて危険」(専門的な規範という意味がよく分からないが)と牽制したが、メドベージェフ首相はもっと正直に「これでは昔のソビエト時代と同じだ」とコメントしたので笑ってしまった。
独裁国家では何時預金が凍結されるか分からないので、国内に預金をおいておくのはアホのすることで、あらゆる手段で預金を国外に持ち出している(中国の共産党幹部や北朝鮮の幹部はすべて国外に資産を移している)。

 なぜ、ECBがキプロスに対して預金者に課徴金を求めたかというと、預金者の半分が外国人のマネーロンダリング資金だからだ。
ドイツのメルケル首相が「ヨーロッパ人以外のマネロン資金の保護をするためにドイツ国民の税金を使用するわけには行かない」といきまいた。

 メルケル首相の言葉は正論だが、実際は世界中にマネロン資金が徘徊しており、ことはキプロスだけではない。
この論理でスペインやポルトガルやイタリアの預金者にも課徴金が科せられるようになったら大変なので、市場は大パニックになって、世界中の株価が大幅に値下がりし、ユーロは売られた。

 ヨーロッパの不良債権問題はまったく解決されておらず、ECBが資金供給をして何とか支えているのが実態だ(いわゆるリフレの経済学でユーロを印刷しまくっている)。
だがユーロ経済の経済成長は止まり、成長資金で不良債権を吸収することができない。ECBがどんなにユーロを支えても、第2のキプロスが火を噴くのは時間の問題だ。

なお、ヨーロッパ経済については以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43160490/index.html


PR記事

 私は過去に書いてきたブログを纏めて本にする作業を始めました。月に2冊程度の割合で出版いたします。KindleのKDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)を利用していますので、電子書籍の端末を持っている方はアマゾンで購入できます(
iPhoneやiPad・iPodでもソフトを入れれば見れます。またアンドロイド系のスマホやタブレットにもソフト対応していますがパソコンは不可)。
なお、蝦夷地探訪記等の値段が200円になりましたが、ボリュームが多いとキンドルの最低価格が上がるので、私の意図的な値上げではありません。


出版済み

・ぼくが生きたとき(山崎書店 NO5)  定価 99円(いじめにどう立ち向かうかを自分の経験から書いてみました)
・ロドリゴ巡礼日誌(
山崎新書 NO1)  定価 200円(サンチャゴ巡礼フランス道の記事です)
・ロドリゴ 失敗記(
山崎新書 NO2)  定価 99円(若者が人生に失敗しないための指南書)
・ロドリゴ蝦夷地探訪記(山崎新書 NO3) 定価200円(北海道東部の過疎地帯を放浪したときの記録)
・ロドリゴネパール日誌(山崎新書 NO4) 定価200円(ネパールの明治時代を思わす山村での教育実習の記録)


なお出版の経緯については以下に詳述してあります。

http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat53203102/index.html

 

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(24.6.5) 成長限界に達したヨーロッパ 先進国経済は成長しない

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 笑ってしまった。本当に経済が成長すると思っているのだろうか。
フランスのオランド大統領のことである。「緊縮財政より経済成長」といって大統領に当選したが、一体フランスのどこに成長要因があるのだろうか。
オランド氏は何か「成長する」と唱えれば経済は成長すると思っている唯心論者のようだ。

 すでに十分成長した経済がさらに成長するには必ず理由があり、具体的な成長産業がなくては成長などするはずがない。
それは日本の20年に及ぶ努力が一向に効果を挙げないのを見ても分かる。
輸出産業のために円安政策をとることと、ゼネコンのために不要な公共事業を繰り返すことが日本の成長戦略だったが、結果は20年にわたる停滞だった。

注)日本は名目のGDPはここ20年間まったく成長していない。物価が下がった分だけ実質GDPが成長しているだけだ。

 日本には本当の意味での成長産業が20年前から育っていなかったために、仕方なしに既存の産業の延命を繰り返してきた。
その結果がGDPの2倍にまで膨れ上がった公的債務の残高だ。
世界でこれほど気前よく借金をしたのは日本政府だけだが、それだけ努力したのに新たな成長産業がなかったために経済成長はしなかった。

注)日本は世界最速の高齢者社会でここでの唯一の成長産業は医療・介護だが、神奈川県知事が特区制度を使用して医学部の新設と自由診療制度を導入して雇用を拡大しようとしたら、神奈川県医師会会長が大反対をしていた。
日本では既得権益者が成長産業の導入に反対しているため成長が止まった社会になっている。


 フランスも日本と同様に何ら新たな産業が育っていない。アメリカのfacebooktwitterといった企業がフランスのどこにあると言うのだろうか。
国際競争力をなくした自動車産業や、世界の趨勢から完全に取り残された原子力産業や、これ以上の発展の余地がなくなってきた高速列車のTGVぐらいしか頭に浮かばない。
そして金融業はギリシャ政府の国債をたんまり持っているため不良債権の山を築いている。

 さらに自由主義社会にしては珍しいほど役人天国で、コスト削減にはリストラが急務だが、こちらは労働組合が強固すぎて首切りもできないだけでなく、オランド大統領はさらに公務員を増やそうとしている。
そんなフランス社会で経済成長が可能と考えるほうがどうかしている

 オランド氏が大統領になり、ギリシャで急進左派政党が「これ以上の経費削減には応じない」と尻をまくったため、ユーロは再び台風の大波の中に漕ぎ抱いたボートになってしまった。
メルケル首相サルコジ元大統領が薄氷を踏む思いで纏め上げたギリシャ救済策はすでに泥舟だ。

 そして今までは何とか破産を糊塗していたスペインの金融機関がついに倒産を始めた。元々スペインには不動産以外に売るものはなかったのに、リーマンショックまでのバブル期にヨーロッパ中の大金持ちや小金持ちがスペインに別荘を手当てして、スペイン中がバブルに浮かれてしまった。

 そのさまは1980年代後半の日本と同じだと言えばイメージがわくだろう。
当時日本の金融機関は借りてくれる人があれば無条件に融資を繰り返した。担保は不動産で値上がり確実だから取りぱぐれのない健全融資だと胸を張っていたものだ。
誰もが不動産が値下がりするとは思っていなかったが、バブルがはじければ土地は二束三文になってしまう。
当たり前のことだが、その土地を利用して収益を上げる人がいなければ土地など何の値打ちもない

 
 スペイン中が不動産バブルに踊った付けがスペイン第3位の金融機関バンキアの不良債権の山だが、バンキアは氷山の一角に過ぎない。
これからスペイン中の金融機関が不良債権の山で倒産し、政府資金を導入しなければならないが、スペインに金を貸してくれる銀行など存在しない。
もし国債を購入しようものならギリシャと同様に7割程度の棒引きを要請されるのが落ちだ。

注)正確に言うとスペインの国債を購入しているのはスペインの銀行だけになってしまった。購入をストップすればスペイン政府とスペインの銀行は共倒れになる。幸い購入資金はECB(欧州中央銀行)が提供しているジュブジャブの資金を利用しているが、一方でECBのバランスシートは悪化の一途をたどっている。

 繰り返すが、成長するには成長産業がなくてはならない。ヨーロッパも日本も既得権益を擁護することだけで生きている社会だ。
一方アメリカではfacebooktwitterAppleといった元気のいい企業はあるが、一方でサブプライムローンの重石が取れていない。

 なぜ成長しきった社会が停滞するかは古代ローマの歴史を見ても分かる。
ローマ史は実に示唆に富んでいるが、その最大の功績は「古代ローマの成長戦略がなぜ失敗し、中世というまったく停滞した社会が現れたか」と言うことを教えてくれることだ。
経済も成長し停滞し衰退する。新たな成長のためには既得権益者がいなくなり新しい成長産業ができるまで待たなければならない。

今日本とヨーロッパがその中世に入ろうとしており、アメリカが追随するのも時間の問題だ。

 特にローマ帝国の末路を予言していた皇帝ハドリアヌスの生涯を見ると、なぜ経済成長が止まるのかが良く理解できる

注)「NHK ローマ皇帝の歩いた道 帝国の末路を見つめたハドリアヌス」を参照

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(24.3.7) ECBによる金融の超緩和と原油価格等の上昇

Dsc01873

 やっぱりと言おうか当然と言おうか、このところの各国中央銀行による金融緩和策の効果が劇的に現れて国際資源価格、特に原油価格の上昇が激しくなった。
通常原油価格の上昇はアメリカによるイラン制裁の強化とそれに対抗したイランのホルムズ海峡封鎖宣言だと思われているが、本当の原因はヨーロッパ中央銀行(ECB)による超金融緩和策実施の結果である。

 EU各国はユーロの維持のために各国に財政規律の強化を訴えたが、財政規律を強化すればするほどギリシャに見るように景気は後退し社会問題が表面化している。
財政規律は維持したい、一方で景気後退は避けたい
このジレンマを解決する手段として各国はECBに圧力をかけ続けた。
俺たちがどうにも動けないのだからECBが何とかしろ~~~

注)政治家は常に財政政策が発動できなくなると金融当局に圧力をかける。

 この動きに押されてECBは昨年12月4890億ユーロ、そして12年2月に5300億ユーロ合計で109兆円)の金融緩和策を実施した。
同時期に日銀も国債等の購入枠を10兆円拡大したが、このECBが行った109兆円とは桁が違う。べらぼうな超緩和だ。

 この措置でユーロ圏の金融機関に対する疑念は一斉に収まってしまった。
やれやれヨーロッパの金融機関には金がジャブジャブにある。これなら銀行がイタリアやスペインの国債を叩き売りをして資金調達に励むことはないだろう。国債は安定し危機はひとまず沈静化だ

 イタリアの国債もスペインの国債も危機ラインの7%から5%台に低下した。
ユーロを持っていても心配なくなったのでこのところのユーロの値上がりはすさまじい。ひところ1ユーロ100円を切っていたのに、今では107円前後で推移している。

 しかし何事も物事には両面がある。確かにヨーロッパの金融機関は資金を潤沢に持ったのだが、ただ持っているだけでは何にもならない。
これを域内の融資にまわせばヨーロッパの経済は上向くのだが、融資はどうしても資金を長期間寝かせることになるし、第一融資対象先などは倒産間際の中小企業ぐらいしかない。

注)政治家が金融機関の貸し渋りを非難することがあるが、実際は金融機関が貸し渋ることはない。ただ倒産間際の中小企業に貸出しできないだけで、それが事実であることは石原都知事が新銀行東京で証明してくれた。

これはやはり安全確実で流動性も確保されているものへの投資が一番だ
現在ドイツの不動産価格が他のユーロ圏諸国の不動産価格の低下を尻目に上昇している。ユーロ圏でただひとつ安全な経済はドイツ経済だけだからだ。
またこのところの原油価格の上昇もすさまじい。1バーレル108ドル前後まで上昇しているがひところ80ドルを割っていたのが嘘のようだ。
鉱物資源価格も頭を持ち上げてきた。

 こうした動きはリーマンショック前の(日本の)金融緩和期とまったく同じで、ヘッジファンドが世界経済は安定したと読んで、リスクをとりに行っているからだ。
ヨーロッパの銀行は金がジャブジャブにある。なら俺たちが稼いであげようヘッジファンドが再び動き出した。

 これはつぶれたバブルを再びバブルで修復する方法だが、過去何回も行われ、結果的により巨大化したバブルになって崩壊した方法だ(グリーンスパン議長はいITバブルの崩壊をサブプライムローンバブルで乗り切ろうとした)。
日本やヨーロッパ(そしてアメリカ)のような成長しきった経済がさらに成長するなんてことは、二十歳を過ぎた成人にさらに身長を伸ばせといっているに等しい。

 経済にも成長の限界がある。ヨーロッパも日本もアメリカもほぼ成長の限界に到達している。それをバブルで修復しさらに成長させようとする方法は麻薬患者にさらにモルヒネをうっているに過ぎない。
私はこうした超金融緩和策が発動されるたびに、「なんと無駄な努力をするものだ」といつもため息が出る。

なおヨーロッパ経済についての記事は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43160490/index.html

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(24.1.19) プーチンになれないハンガリーのオルバン首相 EUの鼻つまみ者

Dsc01377

 苦境にあえぐEUにとってまた頭の痛い問題が発生している。
EU の一員ハンガリーのオルバン首相強権政治が限度を越え、ついにEUバローゾ委員長の堪忍袋の緒が切れたからだ。
中央銀行や裁判官の独立を侵害する法律はEUの基本条約(リスボン条約)に違反しており、報道の自由についても問題がある」と警告した。

 現在のオルバン政権は10年4月の選挙で3分の2を超える大勝利を収めたのだが、その主張は「ハンガリーはEUの言うことを聞かない」と言うものだった。
ハンガリーはEUの中でも極度に弱い経済力だったが、08年まではEUの一員として海外からの投資で順調な経済発展をしていた。それが08年のリーマンショックですべてが暗転してしまい、GDPは減少し通貨フォリントの価値はピーク時からほぼ半減している。

 それまでハンガリー人はユーロで借金をしまくっては住宅投資にいそしんできたが、フォリントがほぼ半減してしまったため、返済金額がほぼ倍増してしまった。
アメリカのサブプライムローン問題と同様に、多くの国民が返済不能に陥って家を手放し7人に1人の割合で破産者になった。

注)ユーロの貸出しレートがフォリントのレートよりはるかに低かったため、国民はユーロ建てで借金をしていた。

 オルバン首相はこうした苦境を独裁権力の強化で乗り切ろうとし、言うことを聞かない中央銀行の幹部や裁判官を次々に首にして、自分の息のかかった官僚で経済運営をすることにした。
もちろんメディアへの規制も強化して、政府のプロパガンダ組織に変えようとしたわけだ(そうした法案を次々に通している)。

 オルバン首相は自分がプーチン首相になればこの経済苦境を乗り切れると判断したようだが、残念ながらそうは問屋がおろさなかった。
プーチン率いるロシアは世界最大の資源大国で石油と天然ガスを抑えれば国政の運営ができる。
しかしハンガリーは自身で生き残るすべは何もない

注)ハンガリーはギリシャと同程度の経済規模で人口もほとんど同じ(1000万人)。本来ならEUに対する影響力は微々たるものだが、ドイツやオーストリア等からの借金経営だったのでハンガリーが倒産するとドイツ等の金融機関に多大の損失を与える。

 外国資本に対する特別税を制定したり(国民には増税しないと約束していた)、民営化した年金基金を再国有化してその資金の流用を図ったりしたが(日本の埋蔵金と同じ)、経済はますます苦境に陥るばかりだ。
国債の発行をしようとしても、国債の評価は投機的だから市場から足元を見られて10年もの国債の利回りは9%を越えてしまい、ギリシャの次ぐらいの位置づけだ。

注)なおハンガリーはIMFからの融資を受けているのでIMFの指示を聞かなければならない立場だが、それも聞かない。

 仕方なしに再びIMFEUに支援を要請してもIMFもEUもオルバン政権のプーチン体質を怒っているのでおいそれと支援に乗り出すはずがない。
ユーロ圏ではギリシャ問題が火を吹いているが、EU圏まで目を広げればこのハンガリー問題がもっとも焦眉の急を要する。

 EUはEU の基本である財政赤字をGDPの3%以内にすることをハンガリーに求めているが、公務員給与の引き下げや増税をしなければならなくなり「国民に痛みを伴う改革はしない」と約束したオルバン政権のマニフェストが宙に浮いてしまう。

注)現在の財政赤字の規模は5%前後と見られているが、数字が粉飾されているので正確なことはわからない。

 ハンガリーは通貨フォリントの価格引下げで経済運営をしようとしているものの、引き下げをすればするほど国内物価が上昇して国民生活が苦境に陥っている。
EUはギリシャとともにハンガリーと言うどうにも対応ができない問題児を域内に抱え更なる苦境に陥った。

なおオルバン政権の無能さについては以下参照
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/2269-c2cb.html

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(24.1.7)  NHKワールド・ウェーブ・トゥナイト 欧州信用不安の行方  浜 矩子氏の見解

 


  NHKワールド・ウェーブ・トゥナイトで放送している「世界はどう動く」の二回目は、同志社大学大学院教授の浜 矩子氏がコメンテーターだった。
浜 矩子氏は私の大好きな経済学者だが、テレビに出ているときはいつも口をへの字に結び鬼瓦のような顔つきをして辛口のコメントをする。
しかし今回は正月だからだろうか、髪を整えすばらしく高価な洋服を着ていたのでいつもの鬼瓦のイメージはなかった。

 現在の世界経済を揺るがしている最大の課題はヨーロッパの信用不安だが、この問題は一向に解決する兆しが見えない。
通貨ユーロは今年に入って一気にユーロ安傾向を強めついに98円台にまで落ち込んできた。ピーク時には170円台まで行っていたのだから4割も減価している。
ユーロ圏が4割縮小すれば世界経済に及ぼす影響は大きい

 ドイツフランスはこの危機を乗り越えようとヨーロッパ金融安定化基金約44兆円規模から約100兆円規模まで拡大する案を決めたが、この資金の出し手が誰もいなくなってしまった。
ひところ中国ブラジルが資金提供を申し出ていたが、中国もブラジルも足元が怪しくなってきてとてもそれどころではない。
それにEU(ユーロ)の現状から見ても貸した金の回収はほぼ絶望的で、ギリシャの例でもわかるように半額切捨てが行われそうだからどぶに金を捨てるようなものだ。

 結局ユーロの問題はユーロで解決するほかに手はなく、今まではフランスとドイツが互いに協力してこの危機を乗り越えようとしていたものの、当のフランス経済が火を吹き始めた。
フランスの銀行はギリシャ・イタリア・スペインといった国の国債をたっぷり持っているので、国債価格の値下がりに悲鳴を上げている。
また実体経済も不況局面に入って自動車メーカーのプジョー・シトロエン1900人規模の首切りを発表していた。

 失業率は9.8%で高止まりしているが、フランス政府は市場の攻撃から身を守るためには緊縮財政政策を採らざる得ず、ますます失業率は悪化しそうだ。
フランスも救われる側に回ったため、ユーロを救えるのはドイツだけになってしまったが、その選択肢は3つしかない。

① ドイツが安定化基金増額(56兆円)のほとんどを引き受けて、ユーロ圏崩壊を救う。
② ユーロ圏を第一ユーロと第二ユーロに分けて、第二ユーロ圏に自由な金融政策を認める。
③ ユーロ圏を崩壊して昔の各国別通貨制度に戻す。


 浜 矩子氏の提言は、上記のを採用することであり、現状ではギリシャのような弱い経済でドイツが主導するECBヨーロッパ中央銀行)の厳しい通貨政策に付き合うことはほとんど不可能という認識だ。

注)ECBの役割は通貨ユーロの安定で、アメリカのFRBが持っている景気対策の視点はない。なお中央銀行の役割については歴史的論争があり、①通貨の安定のみ、② 通貨の安定と景気対策の二つの流れがあり、ECBは①、FRBは②、そして日銀はその中間といった位置づけにある。

 提言はギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガルはこの第二ユーロになって、より柔軟な金融政策をとらせること。
具体的には金融を大幅に緩和し、場合によっては第二ECBに国債の購入まで行なわせてインフレ政策を採ることを認めたらよいという提言である。
メジャーリーグとマイナーリーグの違いよ!!」そう言っていた。

注)浜 矩子氏はそこまで明確に言っていないが、第二ユーロという発想はそういうことである

 今回の番組を見ていたらアイルランドの現状の取材報告があり、意外とアイルランドは緊縮財政が功をそうして、ひところGDPの30%までに膨れ上がっていた財政赤字が10%程度になってきたという。
日本の財政赤字の規模も10%前後だから日本並だ。

 しかも11年度は4年ぶりにGDPは上昇に転じたという。
この理由は国民が政府の財政緊縮策を支持して耐えていることと、一方で安い法人税(ドイツやフランスの半分)と地価低下およびユーロ圏で唯一の英語圏のメリットを生かして海外からの企業誘致に再び成功し始めたからだという(11年度は過去最高の海外投資の規模になった)。

浜さん、アイルランドの例は他のユーロ圏諸国の復活のモデルになるのでしょうか
そうはなりませんね。アイルランドの例は特殊な歴史的性格によるものです。アイルランドはヨーロッパでもきわめてまずしい国でしたから昔から困難にはなれています。
デモもせず国民は耐えるというメンタリティーを共有しているともいえます。
この危機を政府と国民が協力し合って乗り越えようとしている特殊な例ですので他の国の例にはなりません

 
 思わず笑ってしまったが、実際ギリシャやイタリアを見ると「俺たちは悪くない、悪いのは政府の役人や銀行家でこうしたやつらが責任を負うべきだ」と騒いでは投石している。
確かにそうした面はあったとしても、今までの豊かな生活はそのろくでもない役人と銀行家の賜物でもある。
ギリシャでは「借りた金は返すな」が合言葉になっているが、そうしたところに誰も融資はしたくなくなるだろう(だから誰も助けてくれない)。

 ユーロはどうなるだろうか。ドイツが腹をくくって東ドイツの救済合併のときのように他国の負債を引き受けるだろうか。
楽観的な展望は描きがたく一番ありそうなシナリオはぐずぐずと決定的な方策を採ることができず、そのときだけの対処方法を繰り返しながら実質的にユーロが崩壊していくということだろう(だからユーロ安はこの先も進)。

 浜 矩子氏はそこまで言わなかったが、結局EU(ユーロ)はその理念は優れていたとしても経済政策で失敗し昔の静かなヨーロッパに戻っていくというのが私の推定だ。

なおヨーロッパ経済については以下にまとめてあります。http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43160490/index.html

またアイルランドに関する記事は以下を参照してください。
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/cat41860064/index.html

 

 

 

 

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