(25.4.29) MRI インターナショナルの金融詐欺事件 投資家にも責任がある
なぜこんなに簡単に金融詐欺に引っかかるのだろうかと考え込んでしまった。
米国の金融会社MRIインターナショナルによる診療報酬債券投資詐欺事件のことである。
詐欺に引っかかった人は8700名、金額は1365億円だというから、一人当たり約1500万円で半端な金額ではない。
この商品は円建てで元本保証、しかも金利は6.5〜8.5%程度だというからあまりに条件が良すぎる。
最近でこそ円安だがそれまでは円高基調で、円建てで元本を保証などしたらアメリカの会社が莫大な損失を被ってしまう。
さらに6.5〜8.5%というような高利回りがどうして可能なのかもさっぱり分からない。世界的に低金利で預金金利が日本もアメリカも0%近くに張り付いているのに、「そんなバカ高い金利があるはずない」と考えるのが普通だ。
この債券投資のスキームは「病院から病院が持っている保険会社に診療報酬を請求する権利を安く買い取り、その差額が利益だ」ということのようだ。何か資金繰りに困った病院が現金を入手するために診療報酬債権を安く売るというのだが、そもそもそうしたことがあるのだろうか。
絶対にないとは言えないが、証券化して大量に販売できるような代物とはとても思われない。こうした特殊なスポットでしか現れない債権を商品にして一般に売り出すことなど、最初から詐欺まがいと言っていい。
あるいは最大限好意的な評価でもMRIが診療報酬債権を自社で買い取り、保険会社から資金を回収しているなら商取引としてはあり得ても、一般投資家を巻き込むような商品ではない。(あまりに市場がマイナーすぎて一般向きでない)
注)通常の債権管理会社は金融機関等から不良債権を買い取ってそれを競売したりして資金を回収する。私が知っている債権管理会社の買い取り価格は額面の2〜3%だったが、必ずしも高収益を上げていなかった。この世界も厳しいのだ。
こうした事件が発生するたびに私は思うのだが、詐欺を働く会社に問題があるのは当然としても、「おいしすぎる話」に簡単に飛びつく投資家にも問題がある。
投資家は自己責任だという原則をまったく考慮していないのではないか。
自己責任とはリスク管理を自分で行うということで「危ない話には必ず裏がある」と思って近づかないことだ。
円建てで元本保証、しかも高利回りなんて言われたら私だったらすぐに詐欺だと思う。
今回の事件では「リーマン・ショック時にもきめられた配当があったので信頼してきた」とある投資家が述懐していたが、たとえ一時的に約束が守られていたとしても無理なスキームは破綻するか最初から詐欺狙いだ。
こうした会社は債券投資など最初から行わず、新たに入金した金を配当の支払いと役職員の給与にあてる自転車操業を続けるのだが、新規資金の導入に成功している間は倒産しない。マルチ商法と何ら変わりがないがそれでも表面的には、高利回りの配当を続ける優良会社のふりをし続けることができる。
だから騙されてはだめなのだ。
投資を行う人はそれなりの覚悟と、最低限世の中の経済金融情勢は把握しておかなければならない。そして経済情勢からの乖離が大きすぎる話は、たとえ他人から「あたし、この商品で儲かっているの」なんて話を聞いても無視するだけの判断力が必要だ。
だから、今回のようなMRIインターナショナルに騙されるのは、自分にも一旦の責任があると反省すべきだと思う。
なお、同様な詐欺事件のAIJ事件については以下参照。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-76a4.html
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