(2.10.31) 共通試験のレベルが高くなり、毎日化学計算が頭を去来する。
やれやれ今日も一日終わったという感じだ。私は現在高校生3名の勉強の指導をしているのだが、時間は7時から9時半まででこれが終わらないと一日の務めは終了しない。私自身は完全隠居の身だし平日も休日も同じなのでほぼ毎日誰かしらがやってくるので、毎日塾をひらいている。
教える内容はすべて相手に合わせており、特に生徒の苦手な教科を中心に教えることが多いが、最近はいった高校一年生には化学を教えている。
高校一年生の化学は化学基礎というのだが、基礎とは言ってもなかなかタフだ。とくに酸と塩基、酸化剤と還元剤の単元になるとほとんどの生徒が頭を抱える。
この酸と塩基、酸化剤と還元剤のハイライトは中和滴定と酸化還元滴定とかいう数的処理で、この処理を理解するのが本当に困難だ。化学を学ぶときの関門は最初にモルという物質量が出てきて多くの生徒がこのモルの理解に失敗する。化学嫌いはほとんどがモルを正確に理解できないことに原因がある。
このモルの関門を突破してその次の関門が酸と塩基で、その中和の方法と中和した時の物質量の計算をさせられるが頭がもうろうとなるような問題が多い。
そして最後は酸化剤と還元剤なのだが、ここには酸化数とか半反応式とかイオン反応式とかがでてきて、モルで挫折した生徒は全く理解不能の領域に入る。
「俺はどうも理科系に向いてないな。仕方がないから文科系の経済でもやるか・・・・」というような気持ちになるのはこのころだ。
私も大学で学んだのは経済だから挫折組の一人で大きなことは言えないのだが、生徒から「化学が理解できないので教えてください」など言われると断るわけにいかないので、特訓をしてさび付いていた知識をよみがえらせることになる。
ここ1か月余り毎日毎日頭に去来するのは中和滴定と酸化還元滴定の計算で、主として大学の共通試験レベルの問題を解きまくっている。
共通試験は従来はセンター試験と呼ばれていたが、過去はかなりやさしい内容の試験だったのが毎年毎年レベルはUPし、しかも良問ばかりになってきて、大学独自に行う試験よりレベルが高くなってきた。
最近ではほとんどの大学が独自に行いう試験を止めるか、あるいは科目を限定するようになり共通試験の結果で採用を決めるようになってきた。理由はいくつもあるが、大学の教師が独自に入試問題を作るのが大変だからだ。まず高校で教えられている内容の理解が必須でさらに教科書にあるオーソドックスな回答を求めなくてはならず、自己の独創的な研究の成果などを問題に出すわけにいかない。しかも問題の出し方に失敗しどのような解答でも正解というような問題を作ってしまうと、世間や大学当局からひどい叱責を受ける。
「あんたこれじゃ受験生が素直に答えられないじゃないか。しかも高校教育の範囲を越えているし、何やってるの」などいわれ、さらに「あのひと大学教授なんて言っているけで何も知らないんだな」などと馬鹿にされ知性を疑われてしまう。
いまやどこの大学でもこの問題作成担当は逃げ回って引き受ける人がいなくなりつつある。しかも共通試験の作成者は予備校の熟練教師のような人ばかりだから、作られた問題は人をうならせるような良問が多い。もはや大学教授の出る幕はないのだ。
近い将来エリート校といわれる大学でも、共通試験だけで入学を決めるようになるだろうし、例えば横浜国大などは全面的に共通試験一本に絞ってしまったし、東京都立大もコロナのせいもあったが独自の試験の実施を今年は取りやめた。
そのようなわけで私の化学のトレーニングも共通試験レベルを目指せば生徒に教えられるレベルになるので、毎日毎日そのレベルを目指して化学づけだ。
74歳の老人のすることではないかもしれないが、神様のお迎えが来るまではこうした生活が続きそうだ。
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