(2.6.29) ボランティアで勉強を教えている。 日本語論文の変遷史
私がボランティアで子供に勉強を教え始めたのは今からほぼ10年前のことだ。
当初は無料で教えていたが、そのうち教材費やその他の資材費がかさみ年金生活者の身には負担になったので、今はコストが賄える程度の費用を負担してもらっている。
はじめのころの生徒は中学生で、中学の教科はその子に応じてすべて教えていた。そのうち中学生が高校生になり、今度は高校の教科を教えることになった。
私が趣味で勉強を続けていたのは数学だけだったから「高校生に教えるのは数学だけだぞ」と念を押してみたものの、「先生物理がどうしても理解できません」などと言われるとほっておくわけにいかない。予備校の先生が記載した恐ろしく理解しやすい教材を購入して、ほぼ1か月間程度自身に特訓を課して物理も教えられるようになった。
そのうち化学も生物も地学も同じように1か月程度の特訓で何とか教えられるようになった。
「まあ、やれば何でも教えられるもんだ」自分でも驚いている。
現在教えている生徒はたまたま国語が苦手でテストでは他の教科はトップクラスの成績なのになぜか国語は平均点以下だ。
「国語なんて、日本語なのだからそう難しいわけはないはずだが・・・・・・」
これも予備校の教材を購入して古文と漢文を勉強してみたらなかなかタフだ。古文も漢文も外国語のようなもので相当のトレーニングをしなければ理解できない。
「こりゃ、大変だ。相当まじめに勉強しなければ理解できないのは当然だ」
毎日の日課として古文と漢文の特訓をはじめた。主としてセンター試験の問題を解きまくっていたのだが、どうにか理解できる程度まで到達したのでようやく教えることができるようになった。
しかし国語は現代文のほうがタフで、センター試験でも論文と小説が一題づつ出ていたのだが、日本の論文が恐ろしく難解に記載されている場合が多いことに初めて気が付いた。
かつてといってもインターネットが普及しフェイスブックやツイッターやブログ等でだれでも意見を発信できる前のことだが、論文が掲載されるのは総合雑誌や新聞や週刊誌といった既成メディアに限られ、そこに自らの主張を掲載することができるのは一部の評論家とか大学教授といったインテリの中のインテリだけに限られていた。
インテリはインテリ用語で意見を述べない限りだれも相手にしてくれない。「この文章は稚拙ですな」なんて感じで分かりやすい論文などまず真っ先に没になる。分かりやすさではなくわかりにくさで評価されるのだ。
そのためインターネット以前の論文は雑誌の編集長さえ理解できない難解な用語と構文を使って、何が書いてあるか普通の人は絶対理解不可能な論文が幅を利かせていた。マルクスの資本論のようなものだといえばイメージがわくだろう。
雑誌の編集長も理解できないから、本当は没にすればいいのだが知性を試されたような気になって「これは実にいい論文ですな」などといって自らの知識のなさを隠そうとする。
こうして「あの雑誌の編集長には理解できない難解な文書を書くと掲載してくれる」ということになり、ますます掲載される文章が難解になっていった。
そうした論文がセンター試験等に出されるのだから、生徒が理解不能に陥るのは当然だということに気が付いた。
「なるほどね、試験の論文などは哲学書を読まされるのと同じくらい衒学的なのか・・・・・」生徒に同情してしまった。
しかし同情だけでは教えることができないので、難解に記載されていた内容をできるだけ平易に解説している。
「本当は大したことでないのを大げさに書いてあるだけだよ」と言って生徒を慰めているが、インターネット以前の論文は難解さだけが特色だ。
一方インターネット以後の論文は非常にやさしくなってきた。インターネット以後では論文が自由競争になりだれでもどこでも発信可能になっているため、理解できないような衒学的な論文はだれも読まない。一方インターネット以前は編集長というインテリがインテリ用語で掲載された論文以外をシャットアウトしてきたため、内容に比較して記載方法が衒学的であればあるほど優れた論文とみなされていたということだ。
子供に勉強を教えていると思わぬことに気づかされる。
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