(2.6.16) 人類衰亡史序説 日本 その 22 イージス・アショアはなぜ撤回されたか
突然の河野防衛相の発表には驚いた。秋田県と山口県に配備を予定していたイージス・アショアの導入について、配備計画のプロセスを停止すると公表したからだ。事実上の白紙撤回と秋田県や山口県の知事は判断した。
停止理由は迎撃ミサイルを発射した際に切り離されるブースターを基地内に落としたり、あるいは海上に落とすソフトウェアとハードウェアの開発に10年単位の開発期間とそれに伴う費用約2000億円がかかるからだという。
当初イージス・アショアの導入目的は、海上のイージス艦と連携してイージス艦が打ち漏らしたミサイルを地上から打ち落とす二重の防衛システムを構築すると説明されてきたが、導入を検討してきた陸上自衛隊は本気でこのシステムが必要だとは考えていなかった節が見られる。
当初秋田県と山口県の陸上自衛隊の駐屯地が選ばれたのだが、ここが日本で最適な場所だと判断した地形データをグーグルマップで簡単に作成したものの、このグーグルマップの山の高さのデータが国土地理院のデータと齟齬が発生していた。この事実を秋田魁新聞に指摘されてからの防衛省の慌てぶりは目に余った。秋田県に対し再調査をする旨の説明会を開催したが、その説明会で東北防衛局職員が居眠りをしていたため、火に油を注いでしまった。
なぜ秋田と山口の自衛隊駐屯地が最適かのデータを適当にごまかして作り、さらに担当の職員が居眠りをしていたかというと、本来こうしたシステムを導入する目的が陸上自衛隊内で意志確認されていなかったからだと思う。
「仕方ない。政府が決めたのだから適当にどこかに配備しよう。お前、秋田と山口が最適だというデータを適当に作っておけ。やれやれ、こんなデータを作らせられるんじゃやってられないよ・・・」
意味もないデータを作らされた上に弁解までしなければならなくなったので、担当者の一人はばかばかしくなって説明会で居眠りをしてしまった。
実は迎撃システムに関しては基本的な問題があり、敵が迎撃システムのミサイルを上回るミサイルを発射してきたときにはどうにもならない。
アメリカ制服組NO2のセルバァ副議長(当時)が述べていたが、「最初のミサイルを撃ち落とした後、すかさず敵の発射基地を攻撃しなければいつまでたっても迎撃が続き、相手ミサイルの数が上回っていればその時点で防衛網は崩壊する」というのが軍事常識になっている。
簡単に言えば北朝鮮が迎撃ミサイルの数を上回るミサイルを持っている場合は迎撃システムは役に立たない。
ミサイル攻撃された場合、敵の発射基地をたたいてこそ専守防衛になるのだが、日本の現状はタダ迎撃だけを繰り返すことになり、こうした対応が自衛隊の幹部から見たら「子供だましの対応」に見えるのは致し方ない。
「やれやれこれで日本の防衛ができると本気で思っているのかい、気楽なもんだ・・・・・」
今回の問題はブースターを安全な場所に落とすことができないということだが、北朝鮮から核弾頭を搭載したミサイルが飛んできたときに迎撃ミサイルのブースターの落下場所を考えているようでは、日本が二回目の被爆国になるのは確実だ。
イージス・アショアのようなシステムに金をかけるより、敵の第一撃を撃ち落とした後は北朝鮮の発射基地を直ちに無力化する方法を考えるのが現実的でそれでこそ専守防衛の思想にかなう。
軍事戦略上、イージス・アショアのようなシステムをいくら配備しても防衛力に資さないのだから、防衛庁職員が居眠りするのは当然だ。
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