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(2.2.7) 人類衰亡史序説 イギリス その1

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 イギリスが2016年の国民投票でEUからの離脱を決めてから、およそ4年間の月日をかけてようやく最終的離脱が決まった。その間キャメロン、メイといった首相がどのように努力しても国会で離脱案が否決され続け、ようやくジョンソン首相が総選挙で議会の過半数を得て帰趨が決まった。
最も今年の12月までは経過措置としてEUにとどまるから、足掛け5年の歳月が過ぎ無駄に時間を過ごしたことになる。

 イギリス国内の世論は完全に二分されているが、イングランドとウェールズが離脱賛成、スコットランドと北アイルランドが離脱反対者が多い。
最も人口構成はイギリス全体で6300万人、うちイングランドが5300万人で、スコットランドが530万人だから、イギリスとは実質的にイングランドと言っていい。

経済もイングランドが握っていて、ロンドンには世界最大規模で自由で開かれた金融市場があり、これがイギリス経済の屋台骨である


 そもそもイギリスがEU(当時はEC)に加盟したのは今から約50年前(1973年)だが、当時のイギリス経済は斜陽そのものでヨーロッパと一体になることが唯一の救済策と思われていた。

しかしその後サッチャーが首相になると果敢に金融改革に乗り出し、シティを世界で最も開かれた自由で使い勝手の良い市場に作り替えたため、みるみる資金がロンドンに集まり、世界の資金はニューヨークとロンドンで運用されるようになった。

 サッチャーが首相だったのは1979年から1990年までだったが、すっかりイギリスは自信を取り戻し、ドイツとフランス主導のEUに背を向けだした。特にEU加盟国にとって守るのが厳しい条件は財政規律という規則で、財政赤字はGDPの3%以内に抑えるというものである。

この条件をらくらく順守できるのはドイツだけで、フランスはかろうじて、そしてイタリアやスペインやギリシャ等は全く順守できない。イギリスは最近でこそ財政赤字は3%未満だが、リーマンショック後の数年間は10%近くになっていた。


 通常財政赤字がある場合はアメリカや日本では赤字国債を発行して穴埋めをするのだが、EU加盟国はそれができず赤字削減に取り組まなくてはならない。いわゆる緊縮財政だがどこの国でも緊縮財政ほど評判の悪いものはなくそれに取り組んだ政党は必ず総選挙で敗北する。
イギリスがなぜEUから離脱しようとしたかの最大の理由はこの金融政策の自由、簡単に言えば好きな時に赤字国債を発行できる自由を得たかったからだ。

 金融政策に疎い人は赤字国債を発行するのはけしからんと思うようだが、それは違う。その国の通貨が交換性を有している場合と有していない場合では全く影響が異なる。例えば南アメリカのアルゼンチンやベネズエラといった自国だけでしか通用しない通貨は、赤字国債を発行するとたちまちのうちに国内物価が高騰する。それは通貨が国内にのみとどまり簡単に言えば通貨量が二倍になれば物価も二倍になるからだ。
一方交換性のある通貨、ドルや円やそしてイギリスのポンドといった通貨は、世界に広くばらまかれ例えばイギリスポンドであれば、自国にとどまる通貨がGDPに比例すると仮定すれば、たった4%である(この仮定はわかりやすく説明するためのもの)。だから物価上昇もその範囲にとどまりあとは世界の物価を薄く上昇させるだけになる。
アメリカや日本が心置きなく赤字国債を発行するのはそのせいで、間違っても通貨量の増大がハイパーインフレにならない自信があるからだ。

 さてそこでEUから離脱するイギリスの未来はどうなるだろうか。一つにはスコットランドや北アイルランドがイギリス(グレイトブリテン)から離脱する可能性が高い。スコットランドはスコッチウィスキーと北海原油以外には何もないところで、EUに加盟したままでおんぶにだっこのままが利益にかなう。また北アイルランドはIRAの昔からイギリスから離脱を目指していた。自身がEUから離脱して一方で大英帝国からの離脱は認めないということは論理矛盾になる。

こうした国(地域)がグレイトブリテンから離れ、イギリスは基本イングランドになる可能性が高いが、そこでの産業は金融保険業以外存在しないといっていい。

EUから離れれば金融政策の自由が得られ、世界通貨のポンドとシティだけの国だから、ちょうどシンガポールをかなり大きくしたような国家になりそうだ。
それがイギリスのとって吉と出るか凶と出るかは今現在即断はできないが、かつての大英帝国が都市国家のように縮小していく様は、大英帝国の栄光を知る人にとって寂しいだろう。
しかしこじんまりと金融業だけでいきる方針は21世紀型国家のありようとしては決して悪いものではない。



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