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(1.8.22) なぜ国家は自由に通貨を増刷できるのか。信用という名の打ち出の小づち

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 私がまだ経済学を学んでいた50年ほど前、最もわかりにくかったのは通貨とは何かということだった。簡単には交換手段だということだが、それが貝殻であったり、大きな石であったり、金属わけても金や銀であったりした。今では紙幣が普通だがなぜ紙切れが交換手段になるのかわからなかった。
当時といっても1960年代だが、牧野純夫氏が「円・ドル・ポンド」という経済学の書物としてはベストセラーといえるような衝撃的な書物を出し、私も実に熱心にこの本を読んだ。

 牧野氏の主張は通貨は金であらねばならず、不換紙幣は価値が時間とともに喪失するので貨幣としての役割は適切でないというものだった。確かに当時はインフレが高進して通貨価値は毎年のように低下していたので、それに比較して価値が安定している(実際は上昇している)金こそが通貨の本命だという主張は魅力的だった。
私もすっかり金本位主義者になってしまい、不換紙幣の増刷は国家の金融秩序を崩壊させるなどと、友達と口角泡を飛ばして議論していたものだ。

  しかしそれは間違いで、貨幣の本質は信用で信用がありさえすればなんでも貨幣になることがその後の歴史を見ればわかる。ニクソンが1971年に行ったドルの金との交換停止には最初私はずいぶん驚いたものだ。金本位制度こそ通貨制度の基本と思っていたのにドルは単なる紙切れになってしまった。「これでアメリカ経済はおしまいだ」などと友達に吹聴したものだ。しかしその後も現在もドルは世界の基軸通貨のままであり、世界経済が低迷している中で一人アメリカ経済だけが順調に成長している。通貨は金でなくても問題がなかった。

 通貨が単なる信用だと見抜いた最初の日本人は江戸幕府の勘定奉行だった荻原重秀だが、彼は小判の金の含有量を大幅に減らして、当時の通貨価値で約500万両も幕府財政を潤した。

50年前私が学んだ歴史の教科書では荻原重秀はとんでもない悪官僚で、金の含有量をごまかして自分の懐を肥やしたことになっていたが、これは経済を全く理解しない敵対者の新井白石の讒謗で、実際は通貨は単なる交換手段で信用さえあれば何でもいいのだと見抜いた最初の経済人だった。おかげで江戸時代最大の元禄時代の高度成長がもたらされた。

それをまねたのが昭和の高橋是清でありばかばかしい金本位制から離脱した。
さらに荻原重秀の系譜は現在の日銀総裁黒田氏に引き継がれている。

 現在黒田日銀は毎月10兆円規模で金融緩和策を実施しているが、これは簡単に言えば通貨を10兆円規模で印刷していることと変わりがない。実務的には政府の発行した国債の購入という手間暇をかけてはいるが、通貨の増刷だ。
かくして国債発行額は1000兆円に迫っており、新聞紙上ではこの国債残高が返済できるのかと口やかましい議論が続いている。
だが実際は国債は絶対に返済の必要のない資金なのだ。期限が来れば借り換えるだけで、絶対に返済されない。なぜそのようなことが可能かといえば日本国に信用があり、信用がありさえすれば通貨の発行(実際は国債の発行)はいくらでも可能だからだ。

しかも信用は相対的なもので絶対的なものではない。アメリカもEUも中国も金融緩和と称して通貨の印刷を競争で実施している。その中での信用であるから、実際は為替が微妙に変化する程度で、アメリカのトランプ政権が緩和策を強化したので現在はやや円高に揺れている。


 通貨とは実際に信用だけだから世界が円を信頼している限り増刷はいくらでも可能であり、国債発行残高がいくらになっても信用がある限りは問題がない。今後も黒田日銀は円の相対的価値を維持しながら金融緩和を実施し、自民党政権は国家予算の約半分を国債発行と称する円の増刷で賄っていくことになる。通貨は信用さえあれば何でもよく、現在の日本は国債と称する通貨の大発行を行いながら全く問題なく政権を維持できている。野党や口やかましい経済学者が何といおうとも信用が維持さえできている限り日本円の発行は維持できるといえる。

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