(29.3.14) 原子力発電の時代の終わりと東芝の解体
東芝はますます追い詰められ、アメリカの子会社WH(ウエスティングハウス)の破産申請を検討し始めた。米連邦破産法11条の申請である。日本でいえば民事再生法の申請にあたり、主として借金を棒引きして債務を縮小し、一方事業を継続させることを主眼とした倒産方法である。
倒産させるよりは借金を棒引きしたほうが妥当と判断される場合に適用され、最近の事例ではGMがこの申請を行って再建された。
なぜ破産手続きに及ぶかといえばこのままではいくら借金が増大するかわからないからだ。WHと電力会社との間の契約は固定価格契約になっていて、費用が増大するとその分はWHが負担することになる。
従来原発の建設は相対的に安価でできていたためWHとしても固定価格で契約しても十分ペイすると予測していたが、福島原発事故以来こうした安易な建設は許されなくなり、次々に事故防止策をとることが要請されている。
すでに7000億円余りの赤字になっているが、さらに増大することは確実だ。
東芝としてはWHに約8000億円の債務保証をして支援してきたが、この債務保証枠だけでは不足し始めた。しかもその債務保証の返済はほぼ不可能になりつつある。
「これはだめだ。WHを倒産させて債務を確定し、一定程度棒引きしてもらう以外に対応策はない。さらにWHの株式を売却して原子力事業から手をひこう・・・・・・・・・」
必要な資金は半導体部門の売却益によって賄う計画だが、これにより東芝は事業の二本柱と位置づけてきた半導体部門と原子力部門を売却して、後は何が残るのだろうかという状況に置かれてしまいそうだ。
簡単に言えば東芝の自然消滅のようなものだ。
東芝がこうした状況に追い込まれたのは原子力事業に傾斜したためだが、21世紀に入り原子力産業は斜陽産業になってしまった。流通業界でいえばデパートのようなものであり世の中から電力需要が消え去るときに、災害対策と廃棄処理に天文学的な費用の掛かる原子力発電は誰からも見向きをされなくなりつつある。
フランスと中国がこの原子力産業になお傾斜しているが、傾斜をすればするほど国家の基礎を揺るがす運命が待ち構えている。
すでにシェールガスやシェールオイルによってガス価格も原油価格も低位安定しており、いくらオペックが生産調整をしようが価格決定力はアメリカのシェール産業に奪われている。
誇り高いサウジアラビアのサルマン国王が日本や中国に投資を呼びかける行脚をしなければならないほど中東の石油産出国は追い詰められていて、石油が戦略物質であった時代は終わりどこにでもある単なる商品になっている。
日本も中国ももはや電力をこれ以上必要としなくなっており、安価なシェールガスで発電を行えば十分すぎる状況で原子力などかえって邪魔になってしまった。
「住民運動の反対を押し切って建設するような代物ではありませんな!!」
原子力とは電力需要が右肩上がりに必要だった20世紀の技術だったことが明らかになりつつある。
かつて宮崎駿氏が風の谷のナウシカで描いたような風力だけで動力が十分な時代が迫ってきつつあり、今世紀の終わりには原子力という言葉も忘れ去られるだろう。
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コメント
家庭や工場などで省エネが進めば従来のように電力をたくさん消費することはなくなり余ってきます。現に一斉に原子力発電を停めても日本は停電にはならなかったのですから。日本は中東から割高な原油を大量に購入していますから、国王に「もっと安くしないとアメリカのシェールオイルに替えてしまうぞ!トランプが早く買え買えと言ってきてるんだ!」と一発おどしてやればいいのです。無尽蔵の原油があるから何の努力も無しで遊んでのうのうと豊かな暮らしを享受してきた産油国が今さら何が脱石油ですか。そんなもん金融しかないでしょう。骨の髄まで浸みこんだ怠け癖は永久に治りません。産油国の豊かさは日本などの消費国があってこそなのです。それにしても日本に石油がでないというのはなんという呪われた運命なのでしょう。
投稿: たぬき | 2017年3月14日 (火) 20時37分