(29.2.4) トランプ氏がまた吠えた。中国とドイツと日本は為替操作国だ!!
トランプ氏が再び吠えた。
「中国とドイツと日本は金融を緩和して為替を操作し、通貨安にして輸出拡大をしている。このためアメリカの製造業は莫大な損失を被っている」
この指摘は20世紀の経済であれば妥当な指摘だが、21世紀には当たらない。
21世紀に入り2008年のリーマンショック以降、世界の主要国はアメリカを含め金融の量的緩和に走ったが、これは為替操作を目指したものではなく落ち込んだ経済の立て直しのためだ。
最初でかつ最も積極的な金融緩和策を実施したのがアメリカで、時のFRB議長だったバーナンキ氏は「景気は金をすってヘリコプターでばらまけばよくなる」とまで言っていたのでヘリコプターベンとあだ名されたほどだ。
実際2008年以降2014年までにアメリカが市場にばらまいたドルは約4兆ドル(450兆円)で年間に直すと約80兆円になる。
この資金緩和をアメリカは2014年にやめたが、現在日銀、ECB、中国人民銀行がそれぞれ年間80兆円から100兆円規模で資金を市場にばらまいている。
トランプ氏の言う為替操作とはこの資金供給を言っているが、 しかしいわれたほうはびっくりだ。
「これはアメリカが手本を示してくれた景気回復策で、決して為替操作を目指したものではありません。あくまで景気回復策で消費者物価が目標に達し、経済が回復すれば停止いたします」
そう言いってもトランプ氏は聞いてくれない。
「アメリカの製造業がここまで衰退したのはすべて外国の為替操作によるものだ。為替操作をやめない限り高関税で対抗する。絶対に許さない」雄たけびを上げている。
資本主義経済の先進国が21世紀に入り一斉に金融緩和に走ったのは、これ以外に経済成長をさせる方策がないからだ。
通常のモノやサービスは先進国では満杯状況であり、これ以上の生産をしても仕方がないほどの状況になっている。
特に老人比率が高い日本でいえば家は有り余って空き家だらけだし、食事も老人が増えてファミレスなど人も来なくなってしまった。衣類は箪笥に溢れかえっており、靴も靴箱が満杯だ。
旅行も体力勝負だから海外に行くのももはや限界だし、映画などは目が痛むから見るのも嫌だ。
これは日本の状況だが、ヨーロッパも似たり寄ったりだし、老人が増えればどこでもそうなる。
モノやサービスは21世紀に入り限界に達したため、それでも経済成長を図るとすれば不必要なものの売買で金を動かすしか方法はない。
これを投機経済といって紙幣を印刷してばらまき、株式や不要な不動産や、延べ棒でおいておくだけの金や希少性のあるものなら何でも投資対象にして売買を繰り返させる方法だ。
これでも経済は活性化してウォール街やシティは活況を呈して億万長者が続出する。
GDPは当然上向くが、この方法の欠点は投機経済に従事している人だけが所得が増え、残りの人は全く所得が伸びないかアメリカの場合でいえば所得が低下する。
「1%が99%を搾取している」という状況になり、「こんな社会にだれがした」と金持ちと貧乏人の対立が激化する。
トランプ氏のアメリカはまさにこの状態で、トランプ酋長を先頭にプア・ホワイトが雄たけびを上げている。
「ここ、アメリカの土地、メキシコ人やイスラム教徒は出ていけ。外国人みな悪い人!!」
21世紀に入り資本主義文明の活力は限界に達し、モノやサービスの成長限界に達した。
残された道は投機経済だけだが、これは国内では富の偏在をもたらす。
トランプ酋長はこの状態を他国を踏み台にして、工場の国内回帰を図ることで解決しようとしている。
アメリカのプア・ホワイトはそれで救われるがメキシコや中国からは工場が次々に移転していくので、世界全体としてモノやサービスが増えるわけでない。
ゼロサムゲームなのだ。
一方資本主義文明を延命させるための投機経済も限界に達しつつある。特にトランプ氏がこの投機経済を為替操作と誤認しているため先進各国はこの方法を採用しずらくなった。
すでにECBは市場への資金供給額を絞り始めたし、日銀も追随するだろう。
不動産価格を上げることでかろうじて経済を維持している中国も金融緩和策の手足を縛られる。
トランプ氏の誤認で資本主義経済最後のアンカーだった投機経済にも黄昏が訪れた。
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