(28.12.3) 犬の遠吠えに過ぎないOPECの減産 どのように減産しても価格は上昇しない
いくら減産しても原油価格の上昇は限られている。OPECが8年ぶりに合意した120万バーレル(一日当たり)減産のことである。現在世界の原油生産のビック3はサウジ、アメリカ、ロシアでほぼ同程度の生産規模を誇り、かなり後方でカナダ、中国、イラクと続いている。
かつてOPECのシェアは世界の5割を越していたが今では3割程度に落ち込み価格決定力を失なった。
現在の原油価格はアメリカのシェールオイル生産コストで決まっており、だいたい1バーレル当たり50ドル前後が生産コストのため、50ドルを超すとアメリカの生産量が増加し下回ると生産調整に入る構造になっている。
アメリカはOPECやロシアと異なり生産主体が民間会社のため価格だけで生産量を決めており、さらにシェールオイルはほぼ無尽蔵にアメリカ国内に埋蔵されているため人為的な生産調整ができない。
今回のOPECの減産合意はサウジがイランに大幅に譲歩して達成したもので日産120万バーレルの減産の半分はサウジが引き受けるという。ロシアもこれに協調減産すると期待されているが減産した分をアメリカのシェールオイル業者が増産するのは目に見えている。
一方消費についてはさっぱりで中国経済の凋落ですっかり原油はだぶついており、どのように減産しても追いつかない状況だ。
日本の原油輸入量も激減しているからもはや原油そのものの価値がなくなりつつある。
「まあ、化石燃料の時代は終わりですな」なんて雰囲気だ。
OPECの合意を受けて一時的に原油価格は40ドル台から50ドル台に跳ね上がったが、価格上昇はアメリカの生産が増大するにつれて再び40ドル台に戻ることは確実だ。
アメリカではトランプ氏が大統領になり、さっそくアメリカ工場のメキシコへの移転は「まかりならぬ」とストップをかけている。保護主義が蔓延すると世界貿易は縮小するから輸出立国の中国や韓国はさらにGDPを減少させざるを得ない。
日本もすっかりTPPはあきらめムードであり貿易の拡大が見込めないなら観光大国として人の受け入れを図ろうと自民党はカジノ法案成立に躍起となっている。
「これからは観光客の誘致ですよ。カジノで遊ばせるのが最も効果がある」
世界貿易は縮小に次ぐ縮小で、物の生産はあきらめて観光大国として観光客を拡大させるのが日本のGDP拡大に最も役立つと考えを変えたようだ。
かくして世界的規模で物の生産は縮小しているため原油に対する需要も縮小している。20世紀は石油の時代で日本が太平洋戦争に突入した理由の一つにアメリカからの石油の禁輸措置があったが、いまや有り余ってしまった原油をどうしようかと悩む時代に代わってしまった。
だからOPECがどんなに減産しようが需要がそれを上回って減少している以上原油価格の上昇などありえない時代だ。
21世紀に入り突然といっていいほどのスピードで石油離れが進んでおりそのうちにOPECという言葉さえ聞かれなくなるだろう。
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