(28.10.22) フィリピンの反グローバリズム 「うるせい、売春婦の息子のオバマの言うことなど聞かん!!」
また一つグローバリズムが終焉した。フィリピンのドゥテルテ大統領がオバマ大統領に向かって「わしらはもうアメリカの言う人権などに飽き飽きした。こっちはこっちの方法でやるからかまわんといて」と決別宣言をしたからだ。
フィリピンでは麻薬の密売が蔓延し、特に2010年以降犯罪が急増している。
「こりゃもうだめだ。まともな裁判などしていたら百年河清をまつ様なものだ。見つけ次第撃ち殺そう。殺しても罪にならず私は勲章をやる」ドゥテルテ大統領がそう宣言した。
6月に就任して以来ドゥテルテ大統領の意を受けた銃殺隊が麻薬関係者を銃殺しまわっている。わかっているだけで数千人の規模だが実際はそれ以上多いだろう。なんで死んだかわからない死体が路上にごろごろしているからだ。
これを見てアメリカが驚いた。
「あんた、人権は人類普遍の権利で、特に裁判もなしに人を殺すのは人権無視だ。憲法に書いてある通りのルールを守りなさい」とクレームをつけたものだから、ドゥテルテ大統領が切れた。
「うるさい、アメリカ大使はホモ野郎で、オバマは売春婦の子だ。そんな奴にとやかく言われる筋合いはない」
この口の悪さはトランプ候補並みで実に下品だが、ドゥテルテ大統領が言いたいのはアメリカ型人権思想などにとらわれないということだ。
実際は民主主義や人権といった言葉や概念は産業革命以後の西洋資本主義国が流布してきた思想で、この地域特有の思想であり人類共通資産ではない。
簡単に言えばアメリカ、西欧、日本だけに特有の思想であり、先進資本主義国以外はこの思想の埒外にある。
中国や北朝鮮や中東諸国やアフリカや中南米、そしてロシアや東欧諸国では資本主義が発達しておらず、その結果民主主義もまたその中心にある人権思想も存在しない。
19世紀から20世紀にかけて西洋資本主義が世界中に伝搬していた時代は同時に民主主義も広く流布されたが、西欧資本主義の衰退とともに民主主義とその中心にある人権思想も衰微し始めた。
もはやアメリカが何と言おうと中国や北朝鮮やロシアやイスラム諸国などは馬耳東風だ。
「あんた、あんたの言っていた資本主義の時代は終わった。今からはこちらはこっちのスタイルで政権を運営する」
資本主義の中心理念はグローバリズムだが、もはや市場拡大が不可能になり、簡単に言えばGDPが拡大しなくなると、資本主義を支えていた民主主義思想も衰微する。
ドゥテルテ大統領は今急速に中国に接近しているが、これはアメリカからの干渉に対する腹いせでいっているだけで中国組に入るということではない。もし中国組に入ると今度は中国式帝国主義というもう一つのグローバリズムに取り込まれてしまうからで、それでは自由な政権運営ができない。
だから今フィリピンが行っていることはアメリカのグローバリズムを拒否し、ジェスチャーとして中国に接近してバランスをとっているだけで、中国が内政干渉を始めると中国とも疎遠になる。
習近平氏はフィリピンのアメリカ離れに小躍りして1兆円以上の公共投資を約束したが、この約束が守られることはない。今中国経済は奈落の底に落ちつつあり自由にできる資金など実際はないからだ。
フィリピンは麻薬撲滅戦争で西欧型民主主義とその中心にある人権思想から決別した。中国のようにもともと人権思想など存在しない国から見ると友人が増えたようなものだが、べつにフィリピンは中国の手先になろうとしているわけでない。
「外国が干渉するのが嫌なだけだ」ということでローカリズム宣言をしているだけなのだ。
注)ただしその表現は非常に下品でトランプ氏とどっこいどっこいだ。オバマ大統領のようなグローバリズムの旗手の言葉は洗練されているがローカリズムの言葉は常に野卑だ。
日本のローカル政治家にもよくあるタイプといえる。
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コメント
フィリピン事情に詳しい方から聞いた話ですが、麻薬の売人を裁判にかけるときに逮捕した警官が証人として呼ばれるそうで、しかしそこで警官が証言でもしようものなら警官の家族は組織の手で皆殺し。従って、誰も証言に立たず裁判が成立しないのだとか。売人はその場で殺してしまうしかない、と言ってましたね。
その他、税金を払わぬ奴らを名指しで追及したりで、庶民からの大統領への支持は篤く大きいようです。
山崎所長がおっしゃる通りで、やや乱暴な言動ですが今回は米国に反発して見せただけで真意は別にあるのでしょう。
誤解を恐れず、敵を恐れずの大統領ですが、暗殺されなければいいなと思うのです。
投稿: バイオマスおやじ | 2016年10月22日 (土) 07時53分
ドゥテルテ大統領はほんとに剛腕ですね。麻薬問題においては問答無用の成敗で時代劇を見るようです。日本にもあんな人が出てきてほしいかも?そういえば同じロドリゴさんなんですね(笑)
桃ノ木 栗の木 左遷の木 毎回楽しく拝読させていただいています。
よい香りのする久子ですが、私が前に勤めていた会社の事務員の女の子が髪のあたりから何ともいえない上品な香水のような香りをしていました。聞いたら香水は付けていない、ということでしたし他の事務員は気づいていない?ようでした。しかしシャンプーなどとは違い、奥行のあるような良い匂いでした。ああ、もう一度かいでみたい。
投稿: たぬき | 2016年10月23日 (日) 11時44分